後世に名を残す傑作、ランボルギーニ ウラカンシリーズを一気試乗

Lamborghini Now! ウラカン、8年目の境地をストリートで味わう

ランボルギーニ ウラカンシリーズを比較試乗
自然吸気の5.2リッターV型10気筒エンジンをリヤミッドに搭載し、スーパースポーツモデルの一角として名を馳せてきたランボルギーニ ウラカンシリーズ。まもなく生産を終えるウラカンの現行モデルを改めてストリートで評価する。
登場から8年となるウラカンだが、その内容は常に進化を続けている。NAのV10をミッドに搭載するというスタイルこそ共通だが、その個性は実に様々だ。2WDとAWD、クーペとスパイダー、そしてサーキット直系モデルまで、最新のラインナップ3台を改めて長距離で乗り比べ、8年間でウラカンが到達した境地を確認してみよう。

Lamborghini Huracan
STO × EVO Fluo Capsule × EVO RWD Spyder

ランボルギーニで最も成功した2ドアスポーツ、ウラカン

ガヤルドの後継モデルとしてデビューしたウラカンは、V型10気筒エンジンをミッドに搭載するスーパースポーツとして8年に渡るモデルライフを刻んだ。間もなく終焉を迎えるウラカンをワインディングで再評価した。

カテゴリーの隔たりなく進む電動化の波の中、ランボルギーニもその舵を明確にそちらに向ける。

21世紀以降の隆盛を牽引し、20年にブガッティから再び同社へと返り咲いたMr.ランボルギーニ、ステファン・ヴィンケルマンCEOは、24年までにウルス、そして次期アヴェンタドール、ウラカンに相当するモデルのPHVパワートレインの存在を明言。そして20年代後半には第4のラインナップとして実用性とスポーティネスを両立するBEVの投入を企画していることも明かしている。

既に本社のあるサンタアガタ周辺で、次期アヴェンタドールと目される試作車が走り込んでいる様子がスクープされており、そのシルエットやCEOの発言から推するにV12+モーターの搭載は確定的だ。そしてウルスに関してはグループのソリューションを基礎としたPHV化が前提となることが想像できる。

では、次期ウラカンは果たしてどうなるのか。時にはアウディ R8の去就や、ポルシェ 911との関連も囁かれながらも、そのパワートレインについては謎に包まれている。一方で、クルマの位置づけや車格的にみると、現在のV10ユニットが継承される可能性は低い。

電動化が進む中、純粋なV10ユニットは最終章を迎える

世界的にも貴重なV10の自然吸気エンジン。EVOのAWDは640ps/600Nm、EVOのRWDは610ps/560Nm、STOは640ps/565Nmと、グレードによって出力には違いがある。

現在、日本で買えるウラカンはAWDとRWDのEVO及びそのスパイダー、スーパートロフェオのロードゴーイングバージョンともいえるSTOとなる。さらに直近では、STOに準拠したパフォーマンスをオリジナルのエアロダイナミクス・エクステリアに内包したテクニカが追加された。テクニカはガヤルド世代にも最後のリミテッドモデルに用いられたコードであることから、ウラカン世代の終焉を意味するモデルではないかという憶測も絶えない。

ウラカンの総販売台数は2019年時点で、既にガヤルドの1万4000台余を超え、現在は1万8000台前後に達していると目される。ランボルギーニにおいては最も成功した2ドアスポーツとなることは間違いない。そんなウラカンの魅力を改めて紐解くべく、STO、EVO、EVO RWDスパイダーの3台を駆り出した。

日常と非日常を行き来できる適応力の高さがエボの持ち味

600ps超のハイパワーユニットを搭載しながらも際立つ乗りやすさがウラカンの人気を支えた。ワインディングでの所作は大排気量モデルとは思えないほど軽快かつ俊敏だ。

ウラカンの基礎ともいえるLP610-4が登場したのは2014年のこと。その5年後、ビッグマイナーチェンジモデルとして登場したEVOは、その直前に投入されたスーパースポーツモデルとなるLP640-4ペルフォルマンテと同じ640psのエンジンを搭載したほか、随所にその開発知見が反映されたモデルとなった。

試乗したのはそのEVOがベースとなる「フルオ・カプセル」。サテンフィニッシュの蛍光色が外装だけでなく内装の差し色にも反映される、大胆なトリムラインだ。

LP610-4の衝撃は今でも頭にしっかり刻まれている。盤石のスタビリティとオン・ザ・レールのハンドリング、正確無比のシフトワークにブレーキングに・・・と、こんなにフールプルーフなランボルギーニはかつて経験したことがない。そのぶん、がっちりフィジカルでクルマと対峙できる感覚こそランボルギーニと考える向きに、ここまでの乗りやすさは認めてもらえるのだろうかと心配になったほどだ。

洗練極まったEVOはスポーツカーの域を超えた

しかし、ウラカンは世の趨勢を確実に捉えていた。ライバルはおしなべて進化の過程で、パワーやパフォーマンスの向上ばかりでなく、快適性や扱いやすさを高め、より多くのカスタマーへと間口を広げてきた。ウラカンはその激しいキャッチアップを、EVO世代で再び突き放しにかかったわけだ。

今回、3台で500km余の距離を一気に走りきったが、総合力という点で厳密にみれば、EVOは他の2モデルとやはり一線を画していた。もはや乗り心地はスポーツカーの域を超え、ラグジュアリー側のニーズをもカバーしようかというほどに洗練されていて、一般道でも高速でも不快な揺すりや突き上げなどの類はほとんど感じることがない。この手のクルマではそもそも期待もされないノイズレベルも、パーシャルで巡航している限りは適切でパッセンジャーとの会話も普通に成立する。

前部のトランクは機内持ち込み用のスーツケースならなんとか収まり、クーペであればシートバックにも手提げかばん等を置くスペースが確保されるから、ツーリングでも不自由することはないだろう。そういう用途を想定すれば、30対70の駆動配分を基本とするウラカンの四駆システムは、悪天候下での安定性もしっかり担保してくれることは以前の試乗で体験済みだ。ランニングコストを考えなければ、1台で日常と非日常の間を限りなくシームレスに行き来できる、そんな適応力の高さがEVOの持ち味といえるだろう。

ファン・トゥ・ドライブを呼び起こすRWD

昨今のハイパフォーマンスモデルはこぞってAWD化により安定性と安全性を担保しているが、よりプリミティブなスポーツドライブを望むなら後輪駆動がベストであるのは間違いない。操る楽しさを第一にしたRWDは貴重な存在だ。

その完璧ぶりにスパイスを加える役割となっているのがEVO RWDだ。四駆がデフォルトかと思われたウラカンに隠し玉として610-2なるRWDが登場したのは16年のこと。本来四駆前提のクルマを二駆化することで懸念されるバランス的な崩壊はまるで感じられず、軽さも相まって際立つ回頭性を武器にファン・トゥ・ドライブをウラカンのラインナップにおいて際立てている。

今回試乗したRWDスパイダーは、17秒で開閉するルーフシステム等の搭載もあって、RWDクーペに比べると120kgほど重くなっている。それゆえの差は無視できないが、運動性能の劣化、特に気になる前輪側の接地性や重心変化による挙動変化などはワインディングを気持ちよく走る程度では気になることはない。電子デバイスによってオン・ザ・レール感を高めた4WDのEVOよりも、やはりRWDの方がノーズの入りや旋回の動きに小気味よさや自然さが感じられる。そしてやっぱり、背後から響き渡るサウンドのライブ感はスパイダーの特権といえる。

ウラカン史上、最もスパルタンなSTO

そのRWDをベースに、ミッドシップスポーツを操る歓びを最大化したのがSTOだ。名前が示す通り、ウラカンで行われるワンメイクレース、スーパートロフェオ参戦車両のノウハウが最大限に反映されたモデルという存在になる。ウラカンの歴史において、最もスパルタンなストラダーレといっても過言ではない。

最大の特徴は、エクステリアをがらりと違えてまで手に入れた強烈な空力性能だ。そのパフォーマンスは昨年、富士スピードウェイで確かめることができたが、第一コーナーでのブレーキングや300Rでの猛烈なダウンフォースによる安定感とは裏腹に、ストレートで250km/hを超えても淀みなくスルスルとスピードを高めるなど、二律背反を感じさせない不思議なフィーリングだったことを思い出す。

このエフェクトのために積載力などの実用性などは犠牲になる一方、明確にクローズドコースに軸足を置いたコンセプトの割に、STOはストリートの快適性やハンドリングについては望外の柔軟さを備えている。高速巡航でも常に体を揺すられるようなせわしなさはなく、ワインディングレベルの入力でも車体の挙動が操縦実感とシンクロして伝わってくる辺りは、サスチューニングとタイヤの特性がピタリと噛み合っていることを感じさせる。

この魅力を決定的なものとするのがリヤミッドのV10ユニットだ

ウラカンシリーズには、純粋な多気筒・自然吸気の内燃機だからこそ味わえるパッションがある。ミウラやカウンタックのように後世に名を残し続けるであろう名車は、まもなくその役割を終える。

とはいえ、このモデルの味わいを公道のみで出し尽くすのは難しい。すこぶるコントローラブルでありながらカミソリのような切れ味も引き出せる、その刺激的なダイナミクスはクローズドコースで思い切り踏み切るがためにある。

そういう乗り方をしているとつくづく実感するのは、ウラカンの魅力を決定的なものとしているのがリヤミッドに搭載するV10ユニットにあるということだ。スポーツカーにとって重要な商品価値であるパワーが得やすく、分厚いトルクでイージードライブを可能にしてくれるターボユニットが主流の中、マルチシリンダー+自然吸気が放つ官能を味わう機会は本当に貴重なものになりつつある。ウラカンシリーズは内燃機が抱く魔性を余すことなくみせてくれる最後のランボルギーニとして、後世に語り継がれることになるだろう。

REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)

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【SPECIFICATIONS】
ランボルギーニ ウラカン STO
ボディサイズ:全長4547 全幅1945 全高1220mm
ホイールベース:2620mm
乾燥重量:1339kg
エンジンタイプ:V型10気筒DOHC
排気量:5204cc
最高出力:470kW(640ps)/8000rpm
最大トルク:565Nm(57.6kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤ&ホイール:前245/30R20 後305/30R20
0-100km/h加速:3.0秒
最高速度:310km/h
車両本体価格:4125万円

ランボルギーニ ウラカン EVO フルオ・カプセル
ボディサイズ:全長4520 全幅1933 全高1165mm
ホイールベース:2620mm
乾燥重量:1422kg
エンジンタイプ:V型10気筒DOHC
排気量:5204cc
最高出力:470kW(640ps)/8000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤ&ホイール:前245/30R20 後305/30R20
0-100km/h加速:2.9秒
最高速度:325km/h
車両本体価格:3282万7601円

ランボルギーニ ウラカン EVO RWDスパイダー
ボディサイズ:全長4520 全幅1933 全高1180mm
ホイールベース:2620mm
乾燥重量:1509kg
エンジンタイプ:V型10気筒DOHC
排気量:5204cc
最高出力:449kW(610ps)/8000rpm
最大トルク:560Nm(45.9kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前245/35ZR19 後305/35ZR19
0-100km/h加速:3.5秒
最高速度:324km/h
車両本体価格:2919万3598円

【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889

【関連リンク】
・ランボルギーニ 公式サイト
https://www.lamborghini.com/jp

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