1974 Porsche 911 Carrera 【ポルシェ図鑑:25】

「ポルシェ 911(Gシリーズ)」 ビッグバンパーの時代 《ポルシェ図鑑》

ポルシェ 911 Gシリーズのフロントスタイル
1963年に誕生したポルシェ 911シリーズは、74年に初のモデルチェンジを敢行。衝突安全基準をクリアするため採用した特徴的なバンパーにより、「ビッグバンパー」の愛称で知られるGシリーズへと進化する。
911シリーズは1963年の誕生から10年の節目を迎え、初のフルモデルチェンジを1974年に実施。後に、それまでの「ナロー」と対比して「ビッグバンパー」と呼ばれるようになった「Gシリーズ」へと移行する。特徴的なフロッグアイデザインと緩やかなリヤシェイプデザインを踏襲しながら、より現代的に内外をブラッシュアップしたGシリーズは、以後1989年までの長きにわたってポルシェのロードモデルを支えることになる。

1974 Porsche 911 Carrera

911初の大幅な刷新を行ったGシリーズ

ポルシェ・ミュージアムに展示されている1977式の911 S 2.7。本国では1976年に911 Sが消滅しており、1977年に日本市場でのみ911 Sの名称で販売されたが出力は他と同じ165hpであった。

北米で改訂された衝突安全基準に対応するため、衝撃吸収を目的とした5マイルバンパーを装着しリデザインされたのが、通称ビッグバンパーと呼ばれる1974年以降の911シリーズである。

誕生以来、ホイールベースの延長、燃料噴射装置の採用(1969年)、2.2リッター・エンジンの搭載(1970年)、2.4リッター・エンジンの搭載(1972年)と改良が加えられ続けてきた911シリーズだが、1974年になって初めてそのボディスタイルに大きな変更が施されることになった。それがビッグバンパーと呼ばれる911(Gシリーズ)だ。

厳しい基準の5マイルバンパーをスタイリングに昇華

1974年に撮影された911 S 2.7。ビッグバンパーに変わった最初のモデルだ。エンジンは当初、カレラ RS 2.7と同じニカシルシリンダーを使用していたが、程なくアルシルシリンダーに換えられている。

最大の特徴はアメリカ連邦自動車安全基準(Federal Motor Vehicle Safety Standard, FMVSS)の新しい衝突安全基準に対応して前後につけられた大型の5マイルバンパーで、欧州仕様は収縮式鋼管、北米仕様は油圧ダンパーを内蔵し、衝撃を吸収する仕組みとなっていた。

それにあわせて前後フェンダーもリデザインされた結果、911のスタイルを損なうことなくモダナイズできたのは、無骨な5マイルバンパーのスタイリングに苦労したライバルに対しても大きなアドバンテージとなった。

2.7リッター水平対向6気筒は欧州と北米でスペックが異なる

180hpを発生する3.0リッター空冷フラット6 SOHC 930型ユニットに統一されることとなった、1978年の911 SC。ギヤボックスは5速MTの915型が標準となった。

空冷フラット6 SOHCは排気量を2687ccに拡大。スタンダードの911、911 S、カレラの3種類が用意されたが、より厳しくなった排ガス規制に対応するため北米仕様はボッシュKジェトロニックを装着した専用エンジンを搭載。欧州仕様の911 Sの最大出力が175hpであるのに対し、北米仕様は160hpとなるなどパフォーマンスに差がつくようになってしまった。

その後、1975年の北米仕様のカレラにターボのようなホエールテールを標準装備。1976年から欧州仕様のカレラに3.0リッター・エンジンを投入したほか、全モデルに亜鉛皮膜鋼板が採用されるなど、地道な改良が加えられていく。

ターボ用の930型ユニットを採用しタイプ名は「930」に

第3のボディバリエーションとして1983年から販売された911 SC カブリオレ。タルガのボディシェルをベースとしながらも、ルーフすべてをソフトトップにすることで14kg軽量化されている。

ポルシェは1978年イヤー・モデルで911のモデルラインナップを再編。ターボ用に開発されたエンジンをベースとする2994cc空冷フラット6 SOHC 930型ユニットを搭載した911 SCに統一されることとなったが、最高出力は180hpと従来の911 カレラに比べ20hpほど低くなっている。またエンジンの変更に合わせて社内のタイプ名がそれまでの901型から930型に変更されたのも特徴である(よって1974年から78年までのビッグバンパー車を“930”と呼ぶのは正しくない)。

ボディはそれまでの911 カレラと同じリヤ・ワイドフェンダーのついたタイプとなり、MTが915型5速に統一されたほか、ブレーキもハイドロリック・サーボ付きになるなど、更なる充実が図られていた。

そのほかのトピックとしては、1981年のフランクフルト・ショーで発表され大きな反響を呼んだ911ターボ カブリオ スタディで提案されたカブリオレ・バージョンが、1983年10月から911 SC カブリオレとしてレギュラー・モデルに追加されたことが挙げられる。これにより低迷に苦しんでいた北米市場での販売が好転し、生産中止が噂されるようになっていた911のモデルライフが、さらに伸びることに繋がった。

僅か20台のみホモロゲ用に生産された幻の「911SC/RS」

911 SC/RSはラリー参戦を目的に911SCをベースに開発されたホモロゲモデル。20台のみ生産されたが、ごく一部がロードバージョンとして一般顧客にも市販されている。

もうひとつ、911SC時代の変わり種として忘れられないのが、1983年にラリー用のホモロゲモデルとして20台のみが生産された911 SC/RSだ。これはSCをベースに軽量化したターボ用のボディとターボ用のサスペンション、ブレーキを組み込んだスペシャルで、3.0リッター・エンジンは鍛造ピストン、専用カムシャフト、ボッシュ・クーゲルフィッシャー製プランジャーポンプなどの装着によりロードバージョンでも255hpにまでチューンされていた。

 1984年のヨーロッパ・ラリー選手権では、ロスマンズのサポートを受けたヘンリ・トイヴォネンが惜しくもチャンピオンを逃したものの、5連勝を飾るなど圧倒的とも言える強さを発揮。この活躍が再び911をレースフィールドの最前線へと呼び戻すきっかけにもなった。

発展を遂げるGシリーズ

TEXT&PHOTO/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
COOPERATION/ポルシェ ジャパン(Porsche Japan KK)

【SPECIFICATIONS】
ポルシェ 911 S 2.7
年式:1974年
エンジン形式:空冷水平対向6気筒SOHC
排気量:2687cc
最高出力:175hp
最高速度:225km/h

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