レンジローバースポーツとジャガー Fペイス。SVRがプロデュースする英国製大排気量・高出力SUV2台を比較

新型レンジローバースポーツ登場を機に旧型のSVRと同門ジャガー Fペイス SVRを比較してみたら5.0リッターV8スーパーチャージャーへのリスペクトが高まった

ジャガーF ペイス SVR(左)とランドローバー レンジローバースポーツ SVR
ジャガーF ペイス SVR(左)とランドローバー レンジローバースポーツ SVR。ともに5.0リッターV8スーパーチャージドを搭載するハイパワーSUVだ。
SUVがクルマの中心となって久しいが、大排気量のSUVは徐々にしかし確実に減っている。過給機付き5.0リッターV8で時にスポーティに、時に粛々とクルーズするというのは、もはや贅沢な望みなのかもしれない。そこで今回はGENROQ Webが推奨する英国製SUV2台を比較して、どちらを買おうかという妄想の旅に出てみることにした。モデル末期だが、まだ(ぎりぎり)買えるレンジローバースポーツのハイエンドグレード・SVRと、同じグループのジャガー製クロスオーバーSUVのFペイス SVRの比較評価である。

RANGE ROVER SPORT SVR × JAGUAR F-Type SVR

SVOの傑作2台を徹底比較する

ジャガーFペイスSVRとランドローバー レンジローバースポーツSVRに搭載される5.0リッターV8スーパーチャージド。
ジャガー Fペイス SVRとランドローバー レンジローバースポーツ SVRに搭載される5.0リッターV8スーパーチャージド。

新型レンジローバースポーツが発表された。そのあまりのカッコ良さに衝撃を受けたのはランドローバーファンだけではあるまい。プラットフォームはMLA-Flexを採用。これは新型レンジローバーと共用することからもわかるように、様々なサイズの内燃機関だけではなく電動化も視野に入れたモデルであることを意味する。

唯一残念なのは、長年ジャガーランドローバーのトップグレードに搭載されてきた5.0リッターV8スーパーチャージドが、ラインナップからその姿を消してしまったことだ。厳しい環境性能が求められる世の中では高出力エンジンであるほど辛い。ちなみに新型に搭載されるエンジンの最大排気量は4.4リッター、V8ツインターボ形式である。4.4リッターと5.0リッターではクルマに興味のない人にとっては誤差だが、クルマ好きにとっては雲泥の差と言っていいのは事実。最新技術が盛り込まれ、当然性能的にも優位であるが、1990年代後半のジャガー XJ8に搭載された4.0リッターに端を発する5.0リッターV8スーパーチャージドエンジンの逞しさは大きな魅力だった。

そこで今回はレンジローバースポーツを軸に、同じ5.0リッターV8ツインターボを搭載するジャガー Fペイス SVRという2台のSUVを俎上に載せて比較してみた。ジャガーは今さら述べることもないが、ランドローバーとグループ会社であり、エンジンを共用している。開発を担ったのはジャガーとランドローバーの高性能仕様開発部門として、様々な特別仕様車を製作してきたスペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)チームである。

まったく異なるボディサイズと車重

まずは見た目から比較してみよう。ボディサイズ、車両重量は下記のとおりだ。

■ボディディメンション■
レンジローバースポーツ SVR=全長4880×全幅1985×全高1800mm、ホイールベース2920mm、車両重量2420kg
ジャガー Fペイス SVR=全長4755×全幅1960×全高1670mm、ホイールベース2875mm、車両重量2110kg

オフロードもこなせるレンジローバースポーツに対して、背が低く線の細い印象のFペイスだが、それは目指す目的地が異なるということの表れであろう。レンジローバースポーツ SVRはあくまでカジュアルに乗れるレンジローバーでありつつも、オフロード性能や悪路での走破性も視野に入れている。一方のFペイス SVRはあくまでクロスオーバーSUVということで、ジャガーらしいオンロードでの俊敏さを兼ね備えたSUVなのである。

拮抗するパフォーマンスを比較する

同じ5.0リッターV8スーパーチャージドエンジンにZF製の8速ATを組み合わせる。同じパワートレインとはいえ、その出自の違いから、スペックは意外と違う。

■パワースペック■
レンジローバースポーツ SVR=最高出力575ps/6500rpm、最大トルク700Nm/3500-5000rpm、最高速度283km/h、0-100km/h加速4.3秒
ジャガー Fペイス SVR=最高出力550ps/6250-6500rpm、最大トルク700Nm/3500-5000rpm、最高速度286km/h、0-100km/h加速4.0秒

レンジローバースポーツ SVRが最高出力575ps/最大トルク700Nmなのに対して、Fペイス SVRは550ps/700Nmに留まる。これはエンジンルームの取り回しの問題なのか、あるいは車格にあわせたものかは判然としないが、0-100km/h加速の数値ではむしろ0.3秒も逆転しているのが興味深い。これは後述する車両重量が大きく影響していると思われる。さらに最高速度でもレンジローバースポーツ SVRの283km/hに対して、Fペイス SVRは286km/hとアドバンテージを持っている。

結論を導くならば

最後に価格を確認して、結論を考えてみよう。ともにモデル末期ということもあって、限定車が登場しているのでそれを選択肢とする。

■車体本体価格(税別)■
レンジローバースポーツ SVR=2165万円 ※限定25台
ジャガー Fペイス SVR エディション 1988=1760万円 ※限定20台

レンジローバースポーツ SVRとFペイス SVRはもともと価格差はかなり大きい。つまり5.0リッターV8スーパーチャージドを搭載する高性能SUVとして、Fペイスはかなりリーズナブルと言えるかもしれない。もちろんレンジローバースポーツ SVRがオフロード性能も追求したモデルであるのに対して、Fペイスはあくまでオンロード志向のSUVといえるからそのあたりの価格差は納得感がある。しかし以前、Fペイスが本邦デビュー(2016年)した際の雪上試乗会で、非常に豊かなAWD性能を体験していたことを思うと、どこまで悪路に踏み込むのかによって、使い切れる性能と支払う金額を天秤にかけた時、どちらが正しい判断か考えさせられてしまう。

もちろんSUVとはいえ、AWD性能だけが価格差につながっているわけではないが、価格面、性能面でFペイス SVRはかなりお買い得という印象だ。しかも街中ですれ違う頻度も低そうだ。ともあれレンジローバースポーツはすでに旧型となっており、5.0リッターV8スーパーチャージドを購入するチャンスは限られている。

SPECIFICATIONS

ランドローバー レンジローバースポーツ SVR ジャパンSVエディション

ボディサイズ:全長4880 全幅1985 全高1800mm
ホイールベース:2920mm
車両重量:2420kg
エンジン:V型8気筒DOHCスーパーチャージド
ボア×ストローク:92.5×93mm
総排気量:4999cc
最高出力:423kW(575ps)/6500rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/3500〜5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
タイヤ&ホイール:前後275/40R22
0-100km/h加速:4.5秒
最高速度:283km/h
車両本体価格(税込):2165万円

ジャガー Fペイス SVR エディション 1988

ボディサイズ:全長4755 全幅1960 全高1670mm
ホイールベース:2875mm
車両重量:2110kg
エンジン:V型8気筒DOHCスーパーチャージド
ボア×ストローク:92.5×93mm
総排気量:4999cc
最高出力:405kW(550ps)/6250〜6500rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/3500〜5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
タイヤ&ホイール:前265/40ZR22 後295/35ZR22
0-100km/h加速:4.0秒
最高速度:286km/h
車両本体価格(税込):1760万円

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