特設オフロードコースでジープ ラングラー グラディエーターに試乗

ジープ ラングラーのピックアップ版、グラディエーターに試乗! 泥だらけのオフロードコースを上ったり下ったり

ジープ ラングラー グラディエーターの走行シーン
ジープ ラングラーのピックアップ版グラディエーター。恐るべきロングホイールベースが特徴。
一部のマニアックな層に人気だったジープのピックアップトラックがついに国内導入された。ジープ譲りの悪路走破性とラギッドなデザインを両立させている傑作だ。特設のオフロードコースでグラディエーターの実力を確かめた。

Jeep Gladiator

強烈なインパクト

ジープ ラングラー グラディエーターは3490mmのホイールベースを採用。実にノーマルの4ドア仕様より480mmも延長されている。

知る人ぞ知る存在だったグラディエーターがついに正規上陸を果たした。ご覧のように、それはジープ ラングラーのピックアップ版であり、世界的には2018年11月のLAショーでデビューした。本誌でも19年11月号で、並行輸入された1台を取材させていただいた記憶があるが、当時は日本に正規輸入されるなんて夢にも思わなかった。そのあまりに特殊な存在感から、フィアットクライスラージャパン(当時)もさすがに日本に入れる決断はできないだろう・・・と予想したからだ。

なにせ5.6mという全長は、あのキャデラック エスカレードよりさらに20cmも長い。ホイールベースにいたっては3.49mもあり、エスカレードのそれより40cm以上長く、さらに小回りがきかないのだ。約3年前の取材時は都内での試乗となったこともあって、せまい住宅地に迷い込まないように気を遣った。それでいて、全幅はほかのラングラーと大きく変わりない1.93m。「ショート&ワイドこそ、かっこいいクルマの基本」という価値観からは、奇妙なほど細長いディメンションだ。

しかし、新たにステランティスジャパン(以下、SJ)となった日本法人は、こうしてグラディエーターの導入を決めた。その背景には日本におけるジープの好調ぶりと、それを牽引するラングラーの絶大な人気がある。ジープの2021年における国内販売台数は1万4294台。これは9年連続で右肩上がりとなる数字であり、1.4万台超は史上初。そんなジープ国内販売においてトップのシェアを誇るのがラングラーで、昨年はジープ全体の実に48%を占めた。ここまでの人気となれば「ラングラー最強の変わりダネ?」でもあるグラディエーターの注目度が高まるのも必然というわけだ。

グラディエーター、その人気の秘密

ジープ・ラングラーのピックアップ版グラディエーター。恐るべきロングホイールベースが特徴。
タイヤが半分以上埋まるような泥濘路でもローレンジに入れるだけで、軽々と走り抜ける走破性能を見せた。

グラディエーターの国内受注が開始されたのは2021年11月だったが、さすがのSJも「日本の道路環境には明らかに大きいし、特殊なクルマなので年間100台いけば御の字」と考えていたようだ。しかし、フタを開けてみれば大人気。受注台数は今年5月時点ですでに400台を超えており、受注開始以降2度の値上げがあった(現在の本体価格は840万円、受注開始当初は770万円)にもかかわらず、今も月間30台前後のペースで売れ続けているとか。

グラディエーターに惹かれる気持ちは痛いほど理解できる。日本の輸入車市場は台数こそ微々たるものだが、スーパーカーやスポーツカーに限れば常に世界トップ5に入る市場であり、マニア心をくすぐる特別で特殊なモデルほど日本では売れる。そもそもラングラーがジープの半分を占めること自体、日本がいかにマニアな市場かの証左であり、そんな日本なのだから、グラディエーターだって売れるに決まっている。

というわけで、グラディエーターの正規日本仕様はひとまず、シリーズ最強の悪路性能を誇る「ルビコン」グレード一択となる。ラングラーのそれと同様に、足もとはマッドテレーンタイヤとFOX製ダンパー、床下はスキッドプレートで固められる。さらに、ここぞというときにサスストロークを極限まで引き出すスタビライザー(米国流にいうとスウェイバー)解除システムまで備わるのがルビコンならでの特徴だ。

いよいよオフロードコースへ

エンジンは3.6リッターV6ガソリンのみ。海外には3.0リッターディーゼルはあるが、2.0リッター4気筒ターボのグラディエーターはそもそも存在しない。そこにはおなじみの「アンリミテッド」より車重が200kg以上重くなるという理由もあると思われる。

今回は専用にあつらえられたオフロードコースのみの試乗に限られた。前日の雨の影響もあって、ときにタイヤが半分以上埋まるような泥濘路だったが、ローレンジに入れるだけで、前後デフやスタビライザーをどうこうせずとも軽々と走り抜ける走破性能にはあらためて驚く。

しかも、こういう場面ではグラディエーターのロングホイールベースの安定感が光る。ラングラーとしては“ミッドホイールベース”となるアンリミテッドだと、テールを振り出してカウンターステアを余儀なくされるコーナーでも、グラディエーターは操舵するだけで安定しきっている。以前の舗装路での試乗経験を思い返してみても、その乗り心地にトラック然としたドシバタ感は皆無で、広い幹線道路ではロングホイールベースならではの穏やかな乗り心地がなにより印象的だった。

アンリミテッドと比べると・・・

グラディエーターは見た目こそピックアップだが、四輪コイルスプリングによるサスペンションは、リーフスプリングが一般的なワークホース的なトラックとは一線を画す。しかも、独立ラダーフレームにオープンボディを乗せて、そこに樹脂製ハードトップをかぶせる・・・という基本構造は、グラディエーターを含めたラングラーすべてに共通する。よって、グラディエーターがピックアップスタイルだからといって、剛性的に特別に不利なわけではない。実際、今回は過酷なモーグルセクションも用意されていたが、そこをアンリミテッドととっかえひっかえ乗り比べても、ボディやフレームが大きくねじれているような感覚がほぼ皆無。そこは素直に感心した。

グラディエーターの姿を眺めてみると、その長さがあらためて印象的だ。アンリミテッドと共通のリヤサイドドアには本来のリヤタイヤを回避するための切り欠きがあるのだが、グラディエーターの後輪はさらにはるか後方に位置している。こうしたアンバランスなディテールもまた、グラディエーターのえもいわれぬ地上最強感を引き立てている。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2022年 8月号

SPECIFICATIONS

ジープ グラディエーター ルビコン

ボディサイズ:全長5600 全幅1930 全高1850mm
ホイールベース:3490mm
車両重量:2280kg
エンジン:V型6気筒DOHC
総排気量:3604cc
最高出力:209kW(284ps)/6400rpm
最大トルク:347Nm(35.4kgm)/4100rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後コイルリジット
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後LT255/75R17
車両本体価格(税込):840万円

【問い合わせ】
ジープ・フリーコール
TEL 0120-712-812

【関連リンク】
・ジープ 公式サイト

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