マクラーレンがカスタマー向け最新レーシングカー「アルトゥーラ GT4」を公開

マクラーレン アルトゥーラ GT4、ワールドプレミア! レギュレーション上ハイブリッドは使用せず、そのスペースを有効活用したその方法とは?

マクラーレン アルトゥーラ GT4のフロントスタイル
ベストセラーとなったカスタマー向けレーシングカー「570 GT4」の後継モデル、「マクラーレン アルトゥーラ GT4」が公開された。
マクラーレン・モータースポーツは新型カスタマー向けレーシングカー、アルトゥーラ GT4を発表した。アルトゥーラ GT4は6月23〜26日に英国・サセックス州で開催される「グッドウッド・フェスティバル・オ ブ・スピード」において初披露され、その後、今年いっぱいは厳しいテストと開発プログラムを継続し、2023年シーズンから各国レースシリーズに投入される予定だ。

McLaren Artura GT4

ロブ・ベルのドライブでデモランを披露

グッドウッドで初の一般公開を予定しているアルトゥーラ GT4。ドライバーはファクトリードライバーのロブ・ベルが担当する。
グッドウッドで初の一般公開を予定しているアルトゥーラ GT4。デモランはファクトリードライバーのロブ・ベルが担当する。

マクラーレン アルトゥーラ GT4は、マクラーレン初のハイブリッドスーパースーパースポーツ「アルトゥーラ」をベースに、世界中のGTレースで大成功を収めてきた「570 GT4」と「720S GT3」によって得られた経験や技術を活かした、カスタマー向けレーシングカーとして開発された。

アルトゥーラ GT4は市販仕様のアルトゥーラと、多くのテクノロジーを共有。アルトゥーラから投入された「マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー(MCLA)」は、レーシングカーとしても理想的なプラットフォームとなった。高い剛性を誇るこのストラクチャーは、レースにおけるセットアップの幅をさらに拡げるだけでなく、高い強度と極限レベルにおける安全なドライビング環境を提供する。

アルトゥーラの鍵を握る車重の最小化は、GT4レーシングカーにも引き継がれた。コンパクトなV型6気筒エンジンやエキゾーストシステム、あらゆる補機類まで、すべての重量物を最適化した結果、アルトゥーラ GT4 は先代の570S GT4から、100kg以上もの軽量化を実現している。

マクラーレン・オートモーティブのモータースポーツ・ディレクター、イアン・モーガンは、アルトゥーラ GT4について、次のようにコメントした。

「アルトゥーラ GT4 はマクラーレン・オートモーティブのモータースポーツ部門がゼロから作り上げた2台目のレーシングカーです。革新的なアルトゥーラをベースに先代の570S GT4から大幅な進化を達成しました。アルトゥーラ GT4は、さらなる軽量化と極めて精密なハンドリング特性を備え、耐久性も向上しています。新型V6パワートレインのパッケージングと効率性の高さにより、メカニックにとって優れたメンテナンス性も実現しました。このクラスに新たなスタンダードを打ち立てることは、幅広いテストと開発プログラムの中ですでに確認されています」

アルトゥーラ GT4は6月23~26日のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、世界初公開される。レースデビューに先駆けて、その姿を来場者に披露する予定だ。ステアリングを握るのは、マクラーレンのファクトリードライバーを務めるロブ・ベル。昨年のグッドウッドでは720S GT3Xでタイムド・シュートアウト・ファイナルに出走し、優勝を手にしている。

ハイブリッドを取り外した新開発3.0リッターV6を搭載

パワーユニットは、570S GT4の3.8リッターV型8気筒から、新開発の3.0リッターV型6気筒に変更。GT4規程により、ハイブリッドシステムは取り外されている。
パワーユニットは、570S GT4の3.8リッターV型8気筒から、新開発の3.0リッターV型6気筒に変更。GT4規程により、ハイブリッドシステムは取り外されている。

市販仕様のアルトゥーラに搭載されるハイブリッドパワートレインは、バンク角120度の新開発3.0リッターV型6気筒ツインターボガソリンエンジンと 1基のアキシャル・フラックスEモーターで構成。このV6エンジン単独でも、厳しく規制されたGT4カテゴリーの出力要件を満たすパフォーマンスが確保されている。

GT4レギュレーションでは、ハイブリッドパワートレインの使用が認められていないため、ハイブリッドコンポーネントは取り外され、軽量な車重がさらに130kgも削減された。また、カーボンモノコックのバッテリースペースには、燃料タンクと駆動系補助システムを搭載し、さらなる低重心化が図られている。

新開発V6ユニットは、570S GT4に搭載されていた従来のM838型3.8リッターV型8気筒ツインターボよりも、スロットルレスポンスと燃費が向上。電力による補助なしで、高い効率性を実現した。従来のユニットからの大幅な軽量化と小型化により、新型V6エンジンのパワーウェイトレシオはさらに向上している。

V6エンジンを制御するのは、ボッシュモータースポーツ製ECU。このECUにより、GT4カテゴリーへの出走に不可欠なバランス・オブ・パフォーマンス(BoP:性能調整)の細かい管理が可能となっている。またアルトゥーラ GT4はモジュール式モータースポーツ用ワイヤーハーネスを採用。メンテナンス性を高め、修理にかかる時間とコストを削減した。

グラフィックが強化されたコクピット

GT4マシンとしては屈指の視界の良さを誇るアルトゥーラ GT4。コクピットにはグラフィックを強化した「DDU インストゥルメント・ディスプレイ」を装備し、誤操作を防ぐための光るスイッチも採用された。
GT4マシンとしては屈指の視界の良さを誇るアルトゥーラ GT4。コクピットにはグラフィックを強化した「DDU インストゥルメント・ディスプレイ」を装備し、誤操作を防ぐための点灯式スイッチも採用された。

アルトゥーラの市販仕様に搭載されている8速シームレスシフト・ギヤボックスとは異なる、7速ギヤボックスを採用。ギヤ比はパフォーマンスを最適化するよう改善されており、トランスミッションシステムには「オンボード・ダイアグノーシス・ソフトウェア」も搭載された。

アルトゥーラ GT4は、市販仕様の優れた空力思想をさらに推し進め、570S GT4より大きなダウンフォースを発生するエアロダイナミクスパッケージを採用。特に強化されたのがフロントセクションで、専用スプリッター、ダイブプレーン、専用ボンネットダクトが採用された。リヤウイングは効率性が高く、幅広いタイプのサーキットをカバー可能な7段階調整機能が導入された。

マクラーレン・オートモーティブのロードカーとレーシングカーでは抜群の視界が常に確保されており、これがホイール・トゥ・ホイールの緊迫した場面でもドライバーの安全な操作をサポートする。視界に関してもアルトゥーラ GT4は570S GT4から大幅な進化を遂げたという。

レース中のスムーズなドライバー交代において重要となるのが乗り降りのしやすさ。こちらも大きく進化を果たした。安全性は720S GT3に匹敵し、ドライバーシートは「FIA 8862」規程に準拠した固定式を採用している。このシートに合わせてペダル位置も前後に調整可能だ。

ステアリングホイールもGT3マシンを参考に点灯式スイッチを装備。日中でも夜間でも、あらゆる状況での確実な操作を実現している。またコクピットにはグラフィックが強化されたボッシュ製「DDU インストゥルメント・ディスプレイ」を装備する。

豊富に用意されたオプションリスト

世界中で開催されている様々なGTシリーズに対応するため、夜間レース用装備など、様々なオプションを追加導入することができる。
世界中で開催されている様々なGTシリーズに対応するため、夜間レース用装備など、様々なオプションを追加導入することができる。

ハンドリングも570S GT4から大幅に強化された。グリップを高め、タイヤの性能劣化を抑制するため、タイヤパートナーのピレリと共同で開発した、従来よりも太いフロントタイヤが採用。リヤに搭載された機械式リミテッド・スリップ・ディファレンシャル(LSD)は、グリップレベルの増加とパフォーマンスの向上に貢献する。570S GT4に搭載されていた電子制御式スタビリティ・プログラムシステムよりリヤブレーキの摩耗を低減し、燃料消費量も大幅に削減されている。

ドライバーサポートとしては、モータースポーツ専用ABNSとトラクションコントロールを備えており、サーキットのグリップ状況に合わせて調整も可能となっている。メンテナンス性向上のため、ボンネットを脱着式に変更し、内部コンポーネントへのアクセスを改善。110リットルの燃料タンクには、モータースポーツ用リフトポンプ2基とメインポンプ1基を備えることで、信頼性とパフォーマンスを両立している。

リヤウイングは、シャシーマウントに新しい「Gパイロン」型を採用。ウイングを分解せずにリヤボディワークを取り外すことが可能になった。また接触時の頑強さを考慮し、低温ラジエーターの位置を内側へ移動。上方に配置されたエキゾーストシステムは、パワートレインから1本出しとなり、音量は停止状態での計測で105dBとなっている。

購入を希望するカスタマーは、幅広いオプションリストから好みの仕様に合わせてオーダーすることで、様々なタイプのレースやサーキットをカバーすることが可能。このオプションリストには、パッセンジャー用シートとハーネスも用意されている。

オプションで追加可能なドライバーサポートは、タイヤ空気圧モニタリングシステム、「V-Box」テレメトリー、衝突回避システム用レーダーなどもラインナップ。また、レーザー式ライドハイトセンサー、ダンパーポテンションメーター、ブレーキ赤外線センサーを含む「データパック」もチョイス可能だ。耐久レース用オプションとして、夜間レース用追加ライトとドリンクシステムの他、様々なサーキットのピットレーンに対応するため、左側に装着する燃料フィラーとエアジャッキランスも用意されている。

マクラーレン アルトゥーラのフロントスタイル

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