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Mercedes-Benz VISION EQXX
フォーミュラEパイロットがテストドライブ
メルセデス・ベンツ ヴィジョン EQXXは、ドイツのシュトゥットガルトをスタートし、ストラスブール付近でフランス国境を越え、北フランスを高速道路を使って走破。ドーバー海峡に面するカレーに到着し、英仏を結ぶ海底トンネル・ユーロトンネルを通り、ロンドンを経由してメルセデスAMG F1チームの本拠地ブラックリーへ向かった。
ブラックリーではF1やフォーミュラEマシンを開発するエンジニアたちと知見を深め、その後最終目的地のシルバーストン・サーキットに到着。ここではフォーミュラEのワークスドライバー、ニック・デ・フリースがチームを出迎えている。
電動モデルのエキスパートでもあるデ・フリースは、ヴィジョン EQXXのステアリングを握ると、F1英国GPの舞台でもあるシルバーストンで、140km/hの高速走行を披露。ピットレーンで急速充電を行いながら11周を走破した。
「ヴィジョン EQXXのドライブは本当に楽しかったです。チームの実力はよく知っていますし、このような歴史あるサーキットで素晴らしいマシンをドライブできたことを光栄に思います。そして、ヴィジョン EQXXのインテリアは、フォーミュラEのコクピットよりもずっとラグジュアリーだったと断言できます(笑)」と、デ・フリースは笑顔で感想を語った。
一般的な走行環境下で1200km以上を走破
今回のロードトリップにおいて、ヴィジョン EQXXは革新的な熱管理システムを活用し、激しい交通渋滞と夏の気温の中で平均8.3kWh/100kmという高い効率性を達成。ヴィジョン EQXXによる長距離走行試験は、メルセデス・ベンツの電動効率化技術の有効性を現実の交通システム内で実証しただけでなく、研究開発部門に貴重なデータも提供している。
メルセデス・ベンツ・グループのチーフ・テクノロジー・オフィサーを務める マーカス・シェーファーは、今回のロードトリップ成功を受けて次のようにコメントした。
「私たちの旅はさらに遠くへ、さらに効率的に続きます。1回の充電で1000km以上を楽々と走行できることを今回も異なる状況下で証明しました。メルセデス・ベンツは2030年までに市場の条件が許す限り、すべての車両を電気自動車にすることを目指しています。最先端技術、チームワーク、そして揺るがぬ決意を組み合わせることによって、実際に何が達成できるかを世界に示すことが重要なのです」
エアコンの使用も可能な熱管理システム
今回設定されたルートは、バッテリーに負荷をかける低気温でもなく、厳しいエネルギー使用を強いられるアルプス山脈越えのようなドラマチックな関門も用意されなかった。課題として掲げられたのは最高気温摂氏30度を超える暑さと、シュトゥットガルト周辺やイギリス南東部における密な交通環境。ヴィジョン EQXXは、高気温のなかでも革新的な熱管理システムにより、すべての行程を大きな問題もなく走り切った。
電動パワートレインの高効率化の鍵は廃熱を最小限に抑えることにある。ヴィジョン EQXXに搭載される熱管理システムは極めて小型・軽量化が図られている。緻密に設計されたエアロシャッターや冷却水バルブ、ポンプにより、電動パワートレインは最小限のエネルギーコストで最も効率的な温度バランスを維持できるようになった。
革新的なエアロダイナミクスとエアフロー、さらにフロアに設置された冷却プレートを組み合わせたことで、アンダーボディを流れる空気を効率的に活用。通常の走行条件下でも効率的な電動パワートレインの冷却が可能になり、航続距離を2%も延ばすことにつながった。
今回のように高い外気温とストップ&ゴーの多い交通環境では、電動パワートレインの冷却に加えて室内の冷房にも電力を使うことになる。航続距離に大きな影響を与えることなく、ヴィジョン EQXXのオンデマンド冷却システムはすべてを完璧にコントロール。マルチソース・ヒートポンプが、夏の暑い気候の中で車内温度を涼しく保つことができると証明した。14時間30分の走行中、エアコンは8時間強作動したが、全体のエネルギー消費に与える悪影響はごくわずかだったという。
メルセデスは、ヴィジョン EQXXをグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにおいて展示。さらに、カシス、シルバーストンに続き、3ヵ所目となるロードトリップ挑戦を予告している。