【ランボルギーニ ヒストリー】新世紀のフラッグシップ、ムルシエラゴ誕生

フラッグシップ ランボルギーニ「ムルシエラゴ」がもたらしたスーパーカーの民主化(2001-2004)【ランボルギーニ ヒストリー】

【ランボルギーニ ヒストリー】新世紀のフラッグシップ、ムルシエラゴ誕生
ランボルギーニのフラックシップモデルとしてデビューしたムルシエラゴ。進化を遂げた21世紀のスーパースポーツを解説する。
カウンタックからディアブロへと受け継がれたランボルギーニのフラッグシップモデルは、21世紀に入ってすぐに「ムルシエラゴ」へとバトンを渡す。エクステリアを大進化させたムルシエラゴを解説する。

Lamborghini Murciélago

伝統と革新を併せ持つ21世紀版V12ミッドシップ

ルーク・ドンカーヴォルケの手によってデザインされたムルシエラゴ。カウンタックやディアブロの面影を残しつつも、最新のエアロダイナミクス性能を求めた結果、21世紀に相応しい洗練されたテイストに仕上がった。

1990年から2001年まで生産が続けられたディアブロ。その後継車となったのが、2001年のフランクフルト・ショーで正式に発表されたムルシエラゴだ。ムルシエラゴとはイタリア語で蝙蝠(コウモリ)を意味する言葉だが、同時にそれはスペインの闘牛史に残る、勇気と精神力をもった史上最強の闘牛の名でもあった。

ムルシエラゴが、すでにランボルギーニによって進められていた、カントやアコスタといったデザイン・プロトタイプをもとにした次世代モデルのプランをキャンセルし、親会社であるアウディの主導で改めて開発されたモデルであることは前回ディアブロの項でも触れたとおり。その事実が最も直接的に表れているのは、やはりエクステリア・デザインだろう。

エアロダイナミクス性能を強化

ムルシエラゴの可変エアインテーク。これが開いた状態こそ、カウンタックを彷彿とさせる。

後にランボルギーニへと移籍し、ランボルギーニ・チェントロスティーレ(デザインセンター)のチーフに抜擢される、ルーク・ドンカーヴォルケによって生み出されたボディは、最新世代のスーパースポーツに必要不可欠なエアロダイナミクスを実現すると同時に、ランボルギーニの伝統的なモチーフを効果的に採り込んだ、現代的で魅力的なものに仕上がった。

かつてのカウンタックを連想させるリヤセクションのフィニッシュや、ディアブロの面影を残すダイナミックなシルエット、リヤピラーにはバリアブル・エアフロー・クーリング・システムと呼ばれる可変エアインテークが採用されており、これもまたオープン時にはカウンタックを彷彿させる。リヤウイングは速度可変式となり、220km/h以上の速度域では最大値の70度までライズアップする仕組みとなっている。

カーボン製のハニカム材を使用して強化されたシャシー

基本骨格はディアブロ同様鋼管スペースフレームを用い、カーボン製ハニカム材やフロアパネルを採用して軽量・高剛性化を図っている。

このボディがマウントされる基本構造体は、これも鋼管スペースフレームとディアブロ時代から変わらないが、走行中の応力を負担するためにカーボンファイバー製のハニカム材が補助構造材として使用されるほか、フロアパネルもカーボンファイバー製に。前後のサスペンションはダブルウイッシュボーン形式で、ダンパーには電子制御の減衰力可変機構が備わる。

これはオートマチックモードのほかに、マニュアルオペレーションもキャビンのスイッチにより操作することも可能だ。ブレーキを含めたシャシー一式は、まさに万全の備えといった印象。タイヤはピレリ製のPゼロ・ロッソが唯一の純正装着タイヤで、フロントは245/35ZR18、リヤが335/30ZR18というサイズ設定となっている。

580PSを発揮する自然吸気仕様のV12エンジン

ミッドに搭載される6.2リッターV型12気筒エンジン。ディアブロの最終モデルから排気量アップし、最高出力は580PSを発揮。ドライサンプ式に改められたことも話題となった。

一気に現代的な雰囲気となったキャビンは、とてもラグジュアリーな空間だ。ワイドなセンタートンネルがキャビンを明確に二分しているのは、このムルシエラゴもカウンタックから継承する独特なパワーユニットの搭載方法を採用しているからだ。

ミッドに搭載されるエンジンは、ディアブロの最終型、6.0のそれからさらにストロークアップすることで6192ccの排気量を得たV型12気筒DOHC48バルブ。吸気システムが前後2系統に分割されたことやバリアブル・ジオメトリー・インテーク・システムを新採用したこと、そして潤滑方式がドライサンプに改められたことなどで、より高性能なエンジンへと進化を果たしている。

2003年にはセミATを追加し、2004年にはロードスターも

2004年にデビューしたムルシエラゴ ロードスター。その前年にはセミATのeギアが加わった。

最高出力で580PSを発揮するこのエンジンに組み合わされるトランスミッションは、ついに6速化されたものの、当初はMTのみの設定。ランボルギーニが「eギア」と呼ぶセミATの追加は2003年まで待たなければならないが、このeギア仕様はムルシエラゴのセールスに、さらに大きな加速度を生み出した。

ちなみにeギアは10気筒モデルのガヤルドが先行して採用したメカニズム。オートマチックモードを持つガヤルドに対して、ムルシエラゴのeギアには同モードが存在しない。また駆動方式は4WDのみで、2004年のジュネーブ・ショーでは、オープン仕様の「ロードスター」もラインナップに加わった。

SPECIFICATIONS

ランボルギーニ ムルシエラゴ

発表:2001年
エンジン:60度V型12気筒DOHC(4バルブ)
総排気量:6192cc
圧縮比:10.7
最高出力:426kW(580PS)/7500rpm
トランスミッション:6速MT(6速セミAT)
駆動方式:AWD
車両重量:1650kg
最高速度:330km/h

ランボルギーニ ムルシエラゴ ロードスター

発表:2004年
エンジン:60度V型12気筒DOHC(4バルブ)
総排気量:6192cc
圧縮比:10.7
最高出力:426kW(580PS)/7500rpm
トランスミッション:6速MT(6速セミAT)
駆動方式:AWD
車両重量:1650kg
最高速度:320km/h

解説/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…