ポルシェの燃料戦略について語るオリバー・ブルーメ

電動化だけがすべてではない ポルシェ会長のオリバー・ブルーメ、電動化の推進と同時にeフューエルによる内燃機関モデルの存続も約束

ポルシェの取締役会会長を務めるオリバー・ブルーメは、電動化を進めつつ、内燃機関モデルを残していくと言明した。
ポルシェの取締役会会長を務めるオリバー・ブルーメは、電動化を進めつつ、内燃機関モデルを残していくと言明した。
欧州自動車メーカーが拙速な電動化を推し進めることを表明する中、ポルシェはどういった方向性を目指しているのか注目を集めていた。取締役会会長を務めるオリバー・ブルーメは、積極的な電動化を進めつつ、eフューエルを活用し、内燃機関モデルも残していくと言明した。

電動化と同時に内燃機関を残していく意義

ポルシェはフル電動モデルの充実化を進めながらも、チリに大規模な生成プラント「Haru Oni」を建設するなど、環境に配慮したeフューエルの技術を進めている。
ポルシェはフル電動モデルの充実化を進めながらも、チリに大規模な生成プラント「Haru Oni」を建設するなど、環境に配慮したeフューエルの技術を進めている。

現在、ラインアップの電動化を強力に進めるポルシェは、同時に内燃機関をどのように使い続けるかを模索し続けている。例えば、エクソン・モービルと共同で、水素と二酸化炭素から生成される合成燃料eフューエルの研究・開発も行なっている。このeフューエルは、現在使用されている乗用車の燃料基準に合わせて混合することで、温室効果ガスの排出量を最大85%も削減することが期待される、次世代燃料となる。

さらに、シーメンス・エナジーをはじめ、多くの国際企業と協力してカーボンニュートラルに近いeフューエルを生産する工業プラント「Haru Oni」を、チリのプンタ・アレーナスに建設中だ。

ポルシェの取締役会会長のオリバー・ブルーメは、電動化を進めるなかでも、内燃機関モデルがポルシェにとって、いかに重要かを説明する。

 「eモビリティは、ポルシェにとって最重要課題です。同時に、私たちは内燃機関のモデルも作り続けています。最新型の911は、これまで以上にお客様から支持されているのです。今後数年間、WECなどのモータースポーツでお馴染みとなっている、極めてスポーティなハイブリッドモデルを911に追加する予定です」

「気候変動への取り組みは、とても重要です。私はドイツ政府の新たなテクノロジーに対する開かれたアプローチと、解決策の一部としてeフューエルを取り入れるという妥協案を支持します。ある技術(内燃機関)を禁止してしまうことは、技術革新のブレーキとなってしまいます。ポルシェは、eモビリティとeフューエルという、ふたつの『e』を推し進めていくことを約束します」

2030年までに80%の販売車両がEVに

2021年は4万台以上がデリバリーされたタイカン。ポルシェの電動化は順調に進められている。
2021年は4万台以上がデリバリーされたタイカン。ポルシェの電動化は順調に進められている。

2030年、ポルシェがデリバリーする自動車の80%以上がフル電動モデルになると言われている。

「伝統的な自動車メーカーの中で、私たちは非常に先進的な電動化戦略を掲げています。私たちの目標は、2030年にお客様に納車する車両の80%以上をフル電動モデルにすること。初のフル電動スポーツカー、タイカンはすでに大きな成功を収めています。昨年は、好調だった2020年の2倍にあたる4万1000台以上がデリバリーされています。ある意味、タイカンはポルシェを象徴する911と同列に立ったのです。私たちは、ポルシェが持続可能なモビリティのパイオニアだと考えています」

10億台以上の内燃機関モデルを走らせるために

世界には貴重なヒストリックカーを含めて、10億台以上の内燃機関が存在しており、そのクルマを使用し続けるためにもeフューエルが重要な鍵となる。
世界には貴重なヒストリックカーを含めて、10億台以上の内燃機関が存在しており、そのクルマを使用し続けるためにもeフューエルが重要な鍵となる。

より環境に即したモデルが求められるなか、eフューエルを導入することで、これまで活躍してきた旧いモデルもクリーンな自動車として使用することができるという。

「気候変動への取り組みは、広い視点を持つ必要があります。だからこそ、技術の面でもオープンに受け入れる姿勢が求められているのです。電動化はその戦略で重要なピースとなるでしょう。ただ、同時に世界には10億台以上の内燃機関モデルが存在しています。今後、これらのクルマたちが何十年にもわたって道路を走り続けることになるのです」

「eフューエルはこの点で、効果的かつ補完的な解決策となります。eフューエルは、パワートレインの種類に関係なく、すべての車両がCO₂ 削減の役割を果たすことを可能にします。そのために特別な改造を施す必要もありません。eフューエルはすべてのガソリンスタンドで混合燃料として、またはeフューエル単独で提供することができます。私たちは既存の内燃機関車両の所有者にも、選択肢を提供しなければならないのです」

eフューエルは、先進国だけでなく、発展途上国での普及が鍵になる。その上で、価格が重要な指標となる。

「それは今後の生産量次第でしょう。大規模な施設で大量生産されれば、1リットルあたり2ドル以下の価格も可能なはずです。 重要なのは、合成燃料は持続可能な方法で、再生可能エネルギーが豊富にある場所で生産されること。水と空気中の二酸化炭素から生成されるeフューエルは、自動車・飛行機・船舶での使用を考えると、水素よりも輸送が容易であるという利点もあります」

気候変動に向けた取り組みは、従来のまま内燃機関を造り、使い続けてはダメだし、やみくもな電動化だけでも解決にはならない。地域の特色にあわせた様々なやり方を模索していくのが、混沌とした2020年代の在り方なのかもしれない。

eフューエルを使用し、ツェル・アム・ゼーで欧州デビューを果たした「ポルシェ 718 ケイマン GT4 RS」。

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