メルセデスEQの最新BEV「EQB」は3列シートのコンパクトなSUV!

メルセデスEQ EQBは単に「コンパクトSUV」「3列シート」「BEV」というだけではない価値を持っている

66.5kWhのバッテリーを積む、EQBの航続距離は250(FWD)で520km(WLTCモード、以下同)、350 4マティックで468kmを謳う。
66.5kWhのバッテリーを積む、EQBの航続距離は250(FWD)で520km(WLTCモード、以下同)、350 4マティックで468kmを謳う。
GLBをベースとした7人乗りの電気自動車が今回登場したEQBシリーズだ。多彩なシートアレンジや取り回しの良い日本の道路環境に適したボディサイズ、そして最大520kmと足の長い航続距離はヒットの資質に満ちている。

Mercedes-EQ EQB

4.7m級唯一の3列シートBEV

コンパクト3列SUVのGLBがベースのメルセデスEQ EQB。トピックは3列シートであること。
コンパクト3列SUVのGLBがベースのメルセデスEQ EQB。注目は3列シートであること。

メルセデスの新しいEQBは、見てのとおり、同社のコンパクト3列SUVのGLBをベースとした電気自動車(BEV)である。共通プラットフォームのEQAもすでに発売済みなので、今回もなかば自然な流れ・・・ではあるのだが、シートが3列あることがトピックだ。本国では2列仕様も用意されるが、日本仕様は全車3列7人乗りである。

ベースのGLBがコンパクトな3列シーターであることが最大の売りだから、そこを外してはEQBの存在価値も半減なのだが、BEVで3列シートを実現すること自体が簡単でない。実際、日本で手に入る3列BEVは、ほかにテスラ・モデルXくらいしかない。まして全長4.7m級の3列BEVはほかに例はない。好き嫌いや要不要を横に置いても、この事実だけでEQBの存在価値があるというものだ。

どうしても重く背が高くなるEQBで気になるのが航続距離だ。EQBのそれは66.5kWhの電池を積んで、FWDで520km(WLTCモード、以下同じ)、AWDで468kmを謳う。それは絶対的にもまずまずの水準といえるし、驚くのは同じ電池を積むEQA(FWDで422km)より距離がさらに延びていることである。

着々と進むEQ化

聞けば、そのために徹底的に追求した空力性能(Cd値は0.28)に加えて、モーターをはじめとした駆動系の効率を引き上げている。EQAでは高出力をねらってあえて誘導モーターを使っていたが、EQBで主駆動モーターは効率の高い同期式に変更したことが大きいようだ。

GLBからEQBへの化粧直しはもはやEQブランドのお約束の手法といっていい。内外装の基本デザインはGLBのままだが、外観ではEQらしいフロントグリルとヘッドランプ、リヤのナンバープレートを移設して横一文字のテールランプを配している。内装では助手席前の間接照明パネルが目につく。

気になる居住性、実用性への影響は最小限だ。ひとつ気になったは、フロントシート調整がこの価格に似合わない手動式だったことだが、これは半導体や部品不足の影響かもしれない。あとは2列目足もとのフロアが少しだけ高くなり、3列目収納時にわずかな段差ができてしまうが、それ以外はGLBと選ぶところはない。3列目ははっきりいって緊急用だが、それでも成人男性7人が、なんとか身体のどこも当たらずに座れる空間はEQBでも健在だ。

BEVに必要なコンポーネンツに、エンジンのようなカタマリこそないが、実質的に床に敷くしかないリチウムイオン電池のほか、充電システムや高電圧ケーブルなどが分散する傾向にあり、EQBのようなクルマは意外なほどハードルが高い。だらかこそ、このパッケージレイアウトだけでもEQBは価値がある。

感心すべき緻密な制御

今回は都心での短時間試乗にとどまったが、印象的なのはFWDでもAWDでも、すこぶるパワフルなことだ。フル加速では背中を蹴っ飛ばされたような加速を見せて、FWDの「EQB250」は操舵したままアクセルを踏み込むと、タイヤが容易に空転しかけるし、AWDの「EQB350 4マティック」では一瞬クルマが浮いたと錯覚する(笑)ほどである。アクセル操作に対する加速にもラグはほとんど感じさせないのに、不快なショックも回避するパワートレイン制御もうまい。このあたり、たとえばBMWはショックが強く出がちだし、レクサスだとショックはないがラグが大きい。

もうひとつ面白いのはAWDではメインの駆動が後輪となることだ。FWDではフロントに使う同期モーターをAWDではリヤに搭載して、フロントに引きずり抵抗の少ない誘導モーターを置く。実際に駆動状況をモニターしながら走ると、舗装路で普通に流すかぎり基本的にRWDで、アクセルを踏み込んだりコーナーになると、フロントにも駆動力がかかってトラクションや安定感を高める。そして減速時は前後モーター総出で回生するのだ。またシャシーのデキにも感心した。あくまで都心で乗るかぎり、乗り心地や操縦性も非常にバランスよく、剛性感も高い。

興味がないと、ただ「GLBのBEVでしょ?」と見過ごしがちなEQBだが、そこにはメルセデス最新のBEV技術と知見が詰まっている。そしてそれはモデルを追うごとに、みるみる高度化している。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/神村 聖(Satoshi KAMIMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2022年10月号

【SPECIFICATIONS】

メルセデスEQ EQB 350 4マティック〈EQB 250〉

ボディサイズ:全長4685 全幅1835 全高1705mm
ホイールベース:2830mm
車両重量:2160〈2100〉kg
モーター最高出力:215kW(292ps)〈140kW(190ps)〉
モーター最大トルク:520Nm(53.0kgm)〈385Nm(39.3kgm)〉
駆動方式:AWD〈FWD〉
EV航続距離(WLTC):468〈520〉km
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後235/55R18
0-100km/h加速:6.2〈9.2〉秒
車両本体価格:870〈788〉万円

【問い合わせ】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

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