時計とクルマを乗りこなすWatch Driving!【Chrono24編:Part.3】

世界が舞台の時計アプリ、日本支社を設立! CEOに直撃インタビュー 【時計とクルマを乗りこなすWatch Driving!:Chrono24編】

時計とクルマを乗りこなすWatch Driving!第3回
「Chrono24」日本支社の設立発表会でスピーチを行うティム・シュトラッケCEOと、日本支社を率いるアジア太平洋地区代表の真木可奈氏。
これまで2回にわたって時計専門のマーケットプレイス「Chrono24」を紹介してきたが、ついにChrono24が日本支社を設立し新たなサービスを展開する。日本支社設立にあたり来日したChrono24のティム・シュトラッケCEOと、Chrono24のアジア太平洋地区を担当する真木可奈・代表にインタビューを行った。

高級腕時計のマーケットが個人のスマホに

世界最大の時計専門オンラインプラットフォームである「Chrono24」が、このたび日本支社を設立。東京は表参道で行われたそのプレゼンテーション会場ではCEOであるティム・シュトラッケCEOを初め、日本支社をサポートする主要スタッフにインタビューをすることができた。

ちなみにGENROQ Webでも2度にわたりその魅力を紹介してきた「Chrono24」が日本語版サイトをオープンしたのは、今から13年前の2010年。その思いのほか長い歴史が紡いだ販売事業者の数は現在170店舗を超えるまでになり、一般ユーザーのアクセス数も、月によっては約60万件に及ぶという(2020年7月現在)。

ここで少し、シュトラッケCEOとChrono24の歴史について話そう。起業家の家系に育ったシュトラッケCEOは、自身もこれまで2度の起業を展開。それまでのいきさつを彼はプレゼンテーションのスピーチでこう語った。

「最初はギフトのマーケットプレイス。これはとにかく早く、お金持ちになろう!と若い頃に始めたビジネスでしたが失敗しました。そしてふたつめのビジネスは、いいクルマに乗れる程度の成功はしました」

「しかし三回目のビジネスは、『財務的な成功ではなく、とにかく楽しい企業にしよう。好きな仕事をして、素晴らしい人たちと働きたい』。そう思って始まったのがChrono24でした。だから最初は、15人以上人を増やさないようにすると従業員に約束しました(笑)」

そんなChrono24も、いまや社員の数は世界で600人を超え、扱う時計の本数は50万本以上。販売業者数は3000社、個人販売者の登録者数は3万人を超えた。

まさに破竹の勢いであるChrono24が日本支社を設立した理由は、日本という巨大な市場をより活性化させるためだという。そう、なんと日本はChrono24の生まれた国であるドイツ、そして北米に次ぐ、世界第3位の市場なのである。

ということでここからは、Chrono24のCEOであるティム・シュトラッケCEOのインタビューをお届けすることとしよう。

日本支社設立はアジア進出当初から想定

GENROQ Web:この度は日本支社の設立、おめでとうございます。

ティム・シュトラッケCEO(以下・シュトラッケCEO):どうもありがとう。

GENROQ Web:プレゼンテーションのスピーチでは「日本で大切なのは関係を築くことだと教わった」とのことでしたが、具体的にはどのようなことを行ってきたのですか?

シュトラッケCEO:アジアにおいてはまず香港オフィスを2015年に立ち上げたのが最初なのですが、(そのとき既に日本は大きな市場だったこともあり)日本人社員も雇いました。ですから、電話であったり日本への出張であったりを通じ、そこから徐々に日本との関係を強めていったんですよ。

GENROQ Web:日本のECサイトについて研究や、マーケットリサーチはしていたのですか?

シュトラッケCEO:というよりもChrono24は創業当初から日本のバイヤーや販売業者の方々にプラットフォーム作りから加わって頂いており、日本語のサポートも初期から提供していたんです。そういう意味で言うと日本は、最初から我々のプラットフォームに組み込まれていたと言えますね。

GENROQ Web:「日本は重要な市場」とのことですが、どういったところが重要なのでしょうか?

シュトラッケCEO:まずバイヤーの観点としては世界第3位の市場という点ですね。そして販売という観点で見ても非常に大きなマーケットであり、ここをさらに伸ばして、日本の販売業者の方々が世界にもっと沢山の時計を販売できるようにサポートしたいと考えました。

伝統とテクノロジーが融合した日本は時計文化も成熟

GENROQ Web:日本は大きな市場ということですが、時計文化は根付いていると思いますか?

シュトラッケCEO:はい。日本は伝統と歴史のある国で、同時にテクノロジーとイノベーションの国でもあります。かつこの両方を持ちながら未来志向でもあることが、時計に対してとてもマッチしているのだと思います。

GENROQ Web:日本の時計メーカーがヨーロッパの機械式時計のカルチャーを壊してしまった歴史もありますが、それについてはひとりの時計愛好家として、どう思っていますか?

シュトラッケCEO:1980年代のクォーツクライシスですね? 確かにそれはスイスにおいて、6~7万人の失業をもたらしました。しかし興味深いことに現在そのヨーロッパにおける時計市場は非常に力強く復活を果たしており、過去にないほどの状況(好景気)になっています。

GENROQ Web:こんな状況が来ると予想してChrono24を創設したのですか?

シュトラッケCEO:いえ、最初は15人しか社員がいない会社で始まったわけですから。そして今では600人の会社になりました。今でも「15人以上社員を増やさないって言ってたじゃないか」と言われることはありますよ(笑)。

GENROQ Web:日本支社設立に当たっての具体的な目標を教えてください。

シュトラッケCEO:日本の時計愛好家のふたりにひとりがChrono24を使う、という状況にしたいと思っています。これは他の市場では、既に実現していることです。

GENROQ Web:そこにはどれくらいのギャップがあるのですか?

シュトラッケCEO:今正確な数字はわからないですが、まだまだ相当大きなギャップがアルト“思います。ただその数はまだ少なくても、日本のユーザーは世界の平均よりも75%ほど高価な商品を購入しているんです。純利益ではないですがその売り上げは、年間で3000億円に近い数字になっています。

日本でもバイヤーとコレクターを結ぶイベントを開催したい

GENROQ Web:日本人は時計を買うにしても、慎重派だと思います。

シュトラッケCEO:そうですね。でも高額な時計を買うこと、しかも中古で、それも海外から購入することを考えれば、それも理解できます。だからこそ我々と日本の購入者や販売業者の方々との間に、信頼が必要なのです。

GENROQ Web:こうした信頼を築く上でも「イベントやミーティングを開催したい」とおっしゃられていましたが、どのような内容を考えているのですか?

シュトラッケCEO:我々はお客様同士のネットワーク構築を重視しているので、たとえばこのようなイベントで、バイヤーの方々とコレクターの方々を結びつけることができたらと思っています。

GENROQ Web:それでは最後に個人的なことを教えてください。ひとつは、今日の時計は何をしてらっしゃいますか? ご自身の一番好きな時計は何ですか?

シュトラッケCEO:今日している時計は、これですね(オーデマ・ピゲ ロイヤルオーク)。ただ一番好きな時計に関しては、どれかひとつには決められません。「自分の子供で、誰が一番好き?」と言われているようなものですね(笑)。

時計のステイタスシンボルはさらに成長している

GENROQ Web:では、クルマは好きですか?

シュトラッケCEO:うーん・・・。クルマは好きなのですが、いまは3人の子供を乗せることが最優先ですので、一番好きなクルマに乗れているというわけではないですね。

GENROQ Web:我々日本人にとってドイツを初めとしたヨーロッパ車は憧れの対象ですが、ドイツでもそうですか? 時計とどちらがステイタスシンボルになっていますか?

シュトラッケCEO:ドイツでも、クルマと時計はステイタスシンボルですよ。でもちょっと偏見かもしれませんが、今日だと時計の方が好まれるかもしれないですね(笑)。クルマには環境問題がありますし、ときにその音もうるさいですから。対して時計は静かですし、サステナブルですから、最近だと時計の方を好む方が増えているような気がします。

GENROQ Web:ありがとうございました。

ひとりの起業家の時計への情熱によって、最初はたった15人の会社から始まった「Chrono24」。それがこの19年間で世界最大規模のオンラインマーケットプレイスへと成長したのは、高級時計の市場が爆発的にシェアを拡大したのと同時に、彼らがいち早く“ボーダー・トゥ・ボーダー”なネットワークを構築したからだとティム・シュトラッケCEOは語った。

今後はこの日本においても、海外との取引をよりスムーズ化するインフラを充実させて行くという。もちろんGENROQ Webとしても、その動向には注目していくつもりだ。

海外から時計を購入することへの抵抗を減らしたい

そして今回、ティム・シュトラッケCEOへのインタビューと同時に、アジア太平洋地区の代表を務める真木可奈さんにもお話を伺うことができた。

GENROQ Web:日本は世界でも三番目に大きな市場だというのをお聞きして驚いたのですが、中国よりもシェアが大きいのでしょうか?

真木可奈アジア太平洋地区代表(以下・真木氏):はい。香港は英語圏としてすでにカウントしていることもありますが、中国はまだこれからの市場です。日本やヨーロッパと同じサービスを提供する上でも、まだ少し課題があります。

GENROQ Web:日本がドイツやアメリカと比べて違う部分、独自な部分というのはどんなところですか?

真木氏:まず海外から商品を購入することへの抵抗があると思います。ただそれも、「一度やってみると意外に簡単!」という意見は沢山頂いているので、その最初のハードルを越えて頂くことが一番のキーポイントになると思います。

日本の方々は「どのように購入すればよいかを、事前に調べておきたい」という傾向です。対して英語圏の方々は「実際に購入してみて、問題にぶつかったときに対処しよう」というマインドが強いですね。そこでChrono24としては、日本の方々のためにアドバイザーを用意するつもりです。

日本支社として新たな取り組みをスタート

GENROQ Web:どのようなことをしてくださるんですか?

真木氏:時計に関する詳しい知識を持った人材を用意して、オンライン上ですがお店にいて相談しているときのようなサービスを提供したいと思っています。

GENROQ Web:チャットやメールで相談する形ですか?

真木氏:いえ、電話で直接アドバイスできるようにします。これはドイツやアメリカでは既に始まっているサービスです。

GENROQ Web:電話対応だと大変ではないですか?

真木氏:それがなかなかシャイな方々が多いのか、沢山電話が掛かってきて大変というほどではないんですよ。ただドイツですとこうした需要は多いので、既に数十人単位でアドバイザーが対応しています。弊社は時計愛好家の方々に喜んで頂けるサービスを提供していくことが本望なので。

GENROQ Web:これは有料サービスになりますか? また、日本ではいつごろ始まりそうですか?

真木氏:もちろん無料です! スタートは特に何月からとはまだ言えませんが、年内にスタートしたいと考えています。

GENROQ Web:期待しています。ありがとうございました。

【関連リンク】
・Chrono24
https://www.chrono24.jp

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著者プロフィール

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山田弘樹

モータージャーナリスト。自動車雑誌『Tipo』の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した…