2022年のモントレー・カーウイークの注目モデルを厳選!

モントレー・カーウイーク2022に集った驚愕のニューモデルとコンセプトカーとそのほか色々を解説

エンスージアストならずとも見逃せないイベントが、北米モントレー半島を舞台に複数同時開催される。「モントレー・カーウイーク」と呼ばれるイベント群に、今年も世界初披露の新車から歴史的名車まで多数が集った。

Monterey Car Week 2022

驚愕のニューモデルラッシュ

ベントレーは独自のシグネチャー・パーティーで新型2ドアクーペの「マリナー・バトゥール」を発表した。

毎年8月半ばの1週間、アメリカ・カリフォルニア州のモントレー半島は、多くのカーマニアで溢れかえる。それは世界に名だたるビッグ・イベントやオークションが、この1週間に集中して開催されるためで、いつしかそれは、「モントレー・カーウイーク」という愛称で呼ばれるようにもなった。

筆者はかれこれ20年近く、この魅惑の1週間をモントレーで過ごしているが、その中でも見逃せない存在といえるのは、モントレーの隣町、カーメルのリゾート・ホテル、クエイル・ロッジのゴルフコースを舞台に開催される「モータースポーツ・ギャザリング」、シーサイドのブラックホース・ゴルフクラブで行われる「コンコルソ・イタリアーノ」、ラグナセカのウェザーテック・ラグナセカ・レースウェイが舞台となる「ロレックス・モントレー・ヒストリックカー・リユニオン」、そして初回の開催が1950年、今年で71回目を迎えた世界屈指のコンクール・イベントと評される「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」の4つ。午後から夜にかけてはメジャーなオークショネアによるオークションも開催され、億単位でコレクターが入札を繰り返したモデルが落札されていくことも珍しくはない。

これらのイベントでは、オーナーによって持ち込まれたクラシックカーのほかに、メーカーによるニューモデルやコンセプトカーの世界初披露が行われるケースも多い。それらの興味深いニューモデル達をチョイスして、解説していくことにしようと思う。

McLaren Solus GT

バーチャルからリアルへ

あたかもビデオゲームの世界から飛び出してきたようなモデルを披露したのは、あのマクラーレンだ。ゲームの世界から飛び出したというのはまさに事実で、これは「プレイステーション」のゲーム『グランツーリスモSPORT』に登場したコンセプトモデルをそのまま現実のものとしたモデル。

マクラーレンの発表によれば25台が限定生産されるというが、すでにそのすべては完売しているという。ひとり乗りのこのソーラスGTが搭載するエンジンは、同じイギリスのジャッドと共同開発された5.2リッター仕様のV型10気筒自然吸気。最高出力は840ps、最大トルクは650Nmに達する。サーキット専用車となるソーラスGTには、一切のレギュレーションによる制約がないため、そのデザインもかなりダイナミックで先進的だ。あるいは未来のF1はこのような姿カタチになるのではないかとさえ考えさせられる実に興味深い造形である。

ボディ素材はもちろんカーボン。リヤには固定式のウイングが装着されているが、最大値で1200kgにも達するというダウンフォースのほとんどは、ボディ下面のヴェンチュリー・トンネルで発生することは確かなところだろう。サスペンションはフロントにプッシュロッド、リヤにはプルロッドを使用。18インチ径ホイールの内側には、モノブロックの6ピストン・アルミニウム・キャリパーとカーボンディスクの組み合わせによる、強靭なブレーキシステムの姿も見える。納車は2023年からスタートする予定だ。

Bentley Mulliner Batur

史上最強のベントレー

ベントレーは、新型2ドアクーペの「マリナー・バトゥール」をペブルビーチで開催された独自のシグネチャー・パーティーで発表。その生産は同社のビスポーク部門であるマリナーが担うこと、また生産台数は18台に限定され、すでにその全数は完売していることを発表した。

同様の例は、2020年にベントレー社の創立100周年を記念したEXP 100 GTをモチーフとした12台の限定車「バカラル」にもみられるが、今回のバトゥールも同様に発表段階でそのすべてにオーナーが決定している。参考までにバトゥールの価格は165万ポンド(発表当日のレートで約2億6600万円)。もちろんこの数字を納得させるだけの対価はきちんと説明されている。

バトゥールに搭載されるエンジンは、長年ベントレーのフラッグシップモデルを支えてきた、6.0リッターのW型12気筒ツインターボ。ベントレーはすでにその中期計画、「ビヨンド100」の中で、今後発表されるモデルにはW12エンジンの搭載を行わないと宣言。

ベントレーもいよいよ本格的な電動化への道を進むことになったわけだが、バトゥールに搭載されるエンジンは、吸気システムやターボチャージャーにさらにチューニングを加えた、これまでで最もパワフルな740ps以上の最高出力を誇るもの。シャシーにもそれに対応したチューニングが施されているという。そして何よりの魅力は内外装のデザインと、マリナーならではの仕上がり。まさに究極のベントレーといえる。

Bugatti W16 Mistral

完全無欠のロードスター

「ミストラル」。久々に聞くネーミングである。もちろんそれはマセラティの作でも、日産の作でもない。事情はやや複雑だったようだが、それはブガッティが今年のモータースポーツ・ギャザリングで世界初公開したニューモデルの名前である。ベースとなっているのは、すでに完売している「シロン」、正確には「シロン・スーパースポーツ300+」で、それをベースにこれまでのいかなるロードスターをも超越するパフォーマンスを発揮すること。それを唯一無二の開発コンセプトに掲げたモデルだ。

ブガッティからのニューモデルといえば、まず報告しなければならないのは、その価格と生産台数だが、それはこのミストラルに関しても同様。価格は500万ユーロ(発表当日のレートで約6億8500万円)で、生産は99台に限定されている。新たにデザインされたミストラルのエクステリアデザインは、シロンが大きな特徴としていたBピラー部のCラインがコンパクト化され、さらにボディ全体にわたって徹底的なエアロダイナミクスの見直しが図られたため、さらにスポーティなシルエットを持つことになった。

コクピット背後のツインエアスクープは、現在のブガッティ社が最初に生み出し、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスで初披露したオープンモデル、「ヴェイロン16.4グランスポーツ」などを彷彿させるデザインだ。ミッドシップされるW型16気筒+4ターボエンジンの最高出力は1600ps。最高速は500km/hに迫るものとなるだろう。

Lamborghini Urus Performante

ヴィンケルマンCEOが直々にお披露目

ランボルギーニ史上、最大のヒット作ともいえるスーパースポーツSUVの「ウルス」。そのウルスにマイナーチェンジが行われ、新たに「ウルス・ペルフォルマンテ」のネーミングで再デビューを飾ることになった。ワールドプレミアの場はモータースポーツ・ギャザリング。

近年スーパーカーや、その域を超えたハイパーカー、あるいはやはり新型の超プレミアムカーやEVがデビューする場としても有名になったこのイベントだが、アンヴェールに現れたランボルギーニ社のステファン・ヴィンケルマンCEOによれば「ここは直接我々のニューモデルに触れることもできる、セールス上も非常に重要な場所」だと言う。続けて「ウルスはランボルギーニに新しいカスタマーを呼び込みました。この成功をさらに押し進めるため今回フェイスリフトを行いましたが、数値以上にウルス・ペルフォルマンテの商品価値は高まったと信じています。また、ウルスの成功はランボルギーニにとって第4のモデルを開発する後押しになりました。ウルス・ペルフォルマンテはその流れを引き継いでいくことでしょう」と語った。

その第4のモデルがどのようなプロダクトになるかは明言されなかったが、ランボルギーニの動向を見るにおそらく4シーターのサルーンで間違いないだろう。近年人気のスーパースポーツSUVはライバルが続々と台頭してきているカテゴリーだが、ウルス・ペルフォルマンテはエアロダイナミクスの向上と666psへのパワーアップなどで迎え撃っていくカタチだ。

Koenigsegg CC850

パワーウエイトレシオは驚異の1ps/kg

1994年に、当時23歳という若さでスーパースポーツメーカーのケーニグセグ社を創立した、クリスチャン・フォン・ケーニグセグ。今年のモータースポーツ・ギャザリングで彼がファンの前で披露したのは、そのファーストモデルである「CC8S」にインスピレーションを得た70台の限定車、「CC850」と呼ばれるモデルだった。

CC8Sは水中生物からモチーフを得たという独特なスタイリングや、回転式のドア、シンクロへリックスなどで話題を集めたが、それらはもちろんこのCC850にも継承されている。搭載エンジンは最高出力で1385psを発揮する5.0リッターのV型8気筒ツインターボ。CC8Sではこれに6速MTのみの設定だったが、CC850では9速ATの選択もできる。

Hennessey Venom F5 Roadster

1800ps超のハイパーロードスター

テキサス州に本社を置くヘネシー・パフォーマンス社は、量産車ベースのチューニングのほかに、自社ブランドのハイパーカー製作、さらにはメカニックを育成する学校を経営するなど、幅広い活動を行っているメーカーだ。

彼らが今回モータースポーツ・ギャザリングで発表したのは、最高出力で1842psという驚異的なパワーを発揮する6.6リッターのV型8気筒ツインターボエンジン、通称「フューリー」を搭載する「ヴェノムF5」のロードスター仕様。カーボンモノコックを主要構造体とし、剛性面ではクーペモデルとほとんど変わらない性能を実現するだろうとされるヴェノムF5ロードスター。30台に限定される生産は、2022年後半から開始される見込みとなっている。

DeLorean Alpha5

EVで復活するデロリアン

あのデロリアン・ブランドが、ついに復活を果たした。かつてGM社で副社長を務め、その見識を持ってDMC(デロリアン・モーター・カンパニー社)を設立したジョン・デロリアン。彼の夢は、一時はあのステンレス製ボディにガルウイングドアを採用したDMC-12として実現するが、1982年にわずか9000台ほどを生産したのみでDMC社は倒産した。

そのDMC社がテキサス州に復活するというニュースが流れた時から、我々は一日も早くその作品を見たいと思っていたのだが、今回のモントレー・カーウイークでそれは実現。アルファ5と呼ばれる2+2の2ドアEVのスタイルを採用していた。走行可能距離は最大で約480km。最高速は約240km/hと発表された。

Acura Precision EV Concept

アキュラの次世代デザイン

ホンダのアメリカ向け高級車ブランドのアキュラ。一時は日本への導入計画があったものの結局それは実現することがなく、アキュラからのインフォメーションはなかなか我々には伝わらない状況が続いていた。しかし今年のモントレー・カーウイークで、アキュラは今後のデザイン性を広く世界にアピールするコンセプトカーとして、「Acura Precision EV Concept(アキュラ・プレシジョンEVコンセプト)とネーミングされたモデルを世界初公開している。

実際のボディラインはパワーボートのそれにインスパイアされたものとのこと。スペックに関しての発表はなかったが、アキュラ初のEVモデルの車名は「ZDX」となることも同時に明らかにされている。

RUF Bergmeister

名門RUFのスピードスター

RUFは、今年のモントレー・カーウイークで、かつてのヒルクライム・カー、ポルシェ906や909ベルクスパイダー、718 RS 60スパイダー等々にインスパイアされたニューモデルを発表した。その名はシンプルに「RUF ベルクマイスター」と呼ばれる。ベルクマイスターの第一の特徴は、やはりその軽量さにある。

ボディはすべてカーボン製で、もちろんルーフはなく、フロントウインドウもコンパクトなデザイン。ヘッドライトは718 RS 60スパイダーにインスパイアされたもので、ホワイトのカラーとグリーンのストライプは909ベルクスパイダーのそれを想起させる。車重は1100kgと発表された。ターボ付き3.6リッター水平対向6気筒エンジンは450psを発揮する。

Rimac Nevera

400km/h超のEVハイパーカー

2009年、クロアチアに設立されたリマックは、EVスーパーカーを生み出す自動車メーカーとして、一気にその注目度を高めた。それはカスタマーだけではなく自動車メーカーにとっても同様のこと。ポルシェはリマックの株式を取得し、さらに現在ではブガッティもリマックとともに新しい会社を設立する状況にある。電動化の推進に彼らの持つ技術力は必要不可欠なのだ。

ネヴェーラは2018年に公開されたコンセプトカー「C_Two」の進化型。空力性能をさらに高め、4モーター方式でトータル1914psのパワーを生み出し、412km/hとされる最高速まで加速を続ける。生産は世界限定で150台。そのセールスの状況には、世界中が注目しているところだ。

Rolls-Royce Ghost Pebble Beach Collection

ロールスが描く鮮やかなビスポーク

ロールス・ロイスは、毎年このモントレー・カーウイークのために、さまざまなビスポークモデルを製作してくるが、今年はゴーストとカリナンの2台を用意。ゲストの目を楽しませてくれた。「フォービドゥン・ピンク」と呼ばれるピンクのペイントが施されたカリナンも目を惹いたが、大胆なグリーン「サガノ・グリーン」を纏った「ゴースト・ペブルビーチ・コレクション2022」もひと際高い存在感を誇示していた。

6層の塗装面を形成するサガノ・グリーンは京都・嵯峨の竹林をイメージしたカラーとされる。常時4万色以上のボディカラーを用意するロールス・ロイスだが、それでもまだカスタマーのために新色を提供できることを証明したのだという。

Ken Okuyama kode57 Enji Berlinetta

独自の世界観を放つベルリネッタ

2016年に、モータースポーツ・ギャザリング、そしてペブルビーチ・コンクール・デレガンスのコンセプト・ローンチで、その美しいボディラインを特徴とする「Kode57」を発表したケン奥山氏。この時のKode57はイタリアのクラシカルなバルケッタ(オープンモデル)を想像させるかのようなスタイルでゲストの見る目を楽しませてくれたが、今回モントレー・カーウイークに持ち込まれた「Kode57 ベルリネッタ」は、その車名が物語るとおり新設計によるクーペ仕様。

特徴的なリヤヒンジのドアはそのまま残されているが、シャシーはまったく新しいもので、ルーフは着脱可能なものとなる。搭載エンジンは6.0リッターのV型12気筒。最高出力は620psを発揮する。

Gunther Werks Project Tornado

究極の993ターボ

993世代のポルシェ911をベースに、独自の軽量スポーツカーを製作してみせたのは、カリフォルニアのガンザーワークス社。彼らのチューニングの基本的な哲学はRUFのそれにも似ており、重量配分をフロント寄りにセッティングすることで、よりリニアなハンドリング特性を得ること。そして可能なかぎりの軽量化を図ることにある。

そこにレストモッドの概念を加えたものが、彼らのプロダクトの基本的なコンセプトといえるだろう。このプロジェクト・トルネードも、オリジナルの993型911から227kgをダイエット。エンジンは4.0リッターに拡大された水冷式の水平対向6気筒ツインターボで、最高出力は通常で600ps、トラックモードでは700psを発揮する。

GMA T.33 Supercar

鬼才ゴードン・マレーの最新作

ゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA)は、T.50シリーズに続いて今年1月に発表した「T.33」を、T.50とともにモータースポーツ・ギャザリングで披露した。T.33のボディはT.50のそれよりもひとまわり小さいが、それが逆に人気の原動力となる可能性も高い。

ミッドに搭載されるエンジンは、コスワース製の3.9リッターV型12気筒で、最高出力は615ps。レブリミットは1万1100rpmというから、かなりの高回転型エンジンだ。このエンジンが負担する車重は1090kgであることを考えると、その運動性能には相当に大きな期待が持てそうだ。生産は100台の限定で行われ、カスタマーへのデリバリーは2024年からスタートする予定となっている。

Singer Turbo Study

930ターボをレストモッド

モータースポーツ・ギャザリングで、毎年新作を公開してくれるのが、最近流行のレストモッドのパイオニアともいえる、カリフォルニアのシンガーだ。今年は同社の社長であるロブ・ディッキンソン氏が長年夢に描いていた、964型911をベースに930ターボへのレストモッドを行った新作を披露。

ウルフブルーにペイントされたボディは、もちろん当時の930ターボのシルエットを持つが、そのディテールには現在の性能に見合う、さまざまな改良が施されている。ボディワークはカーボン素材によるもの。リヤには3.8リッターの水平対向6気筒ツインターボエンジンが搭載され、注目の最高出力は450ps、もしくは500psの選択ができる。トランスミッションは6速MTだ。

REPORT/山崎元裕(Motohiro YAMAZAKI)
PHOTO/佐藤靖彦(Yasuhiko SATO)
MAGAZINE/GENROQ 2022年11月号

ロールス・ロイスの「ペブルビーチ コレクション2022」。カリナンとゴースト

百花繚乱のペブルビーチでも「映え」がすごかった! ロールス・ロイスが用意したカリナンはまさかのピンク

年に一度の高級車の祭典、モントレー カーウイークが今年も開催された。価格的にも稀少性でもまさ…

キーワードで検索する

著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…