アルトゥーラに試乗してマクラーレンがPHVでやりたいことを考察

最新PHVスーパースポーツカー「アルトゥーラ」で加速してマクラーレンが何を実現したかったのか考察する

エンジン単体でも凄まじい性能を発揮するが、やはりモーターによる225Nmのアシストは、マクラーレンが単に電動化のための電動化をしたわけではないと思わせてくれる。
アルトゥーラはエンジン単体でも凄まじい性能を発揮するが、やはりモーターによる225Nmのアシストは、マクラーレンが単に電動化のための電動化をしたわけではないと思わせてくれる。
マクラーレンから登場した本格ハイブリッドスーパースポーツカー「アルトゥーラ」がついに日本に上陸した。3.0リッターV6ツインターボにモーターを組み合わせたPHVというパワーユニットで、マクラーレンの走りはどう変わったのか、それとも変わっていないのか試乗で確かめた。

McLaren Artura

エンジンとモーターの総力を結集

今後のマクラーレンモデルの核となる土台になるであろう新開発マクラーレン・カーボン・ライトウエイト・アーキテクチャーに搭載されるPHVパワートレインは、新開発3.0リッターV6ツインターボに高出力モーターを組み合わせ、システム最高出力680PS、システム最大トルク720Nmという途轍もないスペックを誇る。

昨年10周年という節目を迎えたマクラーレン・オートモーティブが、その次の10年を担う重要な基幹モデルとして開発したプラグインハイブリッド(PHV)スーパースポーツのアルトゥーラがついに日本に上陸し、試乗会が開催された。当面、スーパーシリーズの720S、あるいはGTと共にマクラーレンの主力となるモデルである。

マクラーレン製PHVは、これが初めてではない。P1(2013年)やスピードテール(18年)など、10年近く前から積極的に電動化を進めてきた。だから、試乗前のブリーフィングでは、もっとも重要な「ドライバーエンゲージメント」というコアは電動化でぶれないことを強調していた。今後のマクラーレンモデルの核となる土台になるであろう新開発マクラーレン・カーボン・ライトウエイト・アーキテクチャーに搭載されるPHVパワートレインは、従来のV8ツインターボベースではなく、これも新開発3.0リッターV6ツインターボに高出力モーターを組み合わせ、システム最高出力680PS、システム最大トルク720Nmという途轍もないスペックを誇る。

車載ネットワークにイーサネットを用いたこともトピックだ。近年増加する電子デバイスを緻密に作動させるべく、高速、大容量、マルチタスクのデータ処理が可能で軽量化にも貢献したという。画期的な電動式空調にも注目したい。機械式よりも素早い温度調整が可能だという。そういった、ほぼすべての自動車的要素を刷新した結果、アルトゥーラは車検証重量に近いDIN値1498kgという車重となった。これは同じ3.0リッターエンジンを搭載するポルシェ・カレラGTSとほぼ同等と言えば、マクラーレンの技術と努力が理解できるだろう。

大幅に向上した快適性と操作性

初試乗故に会場となったホテルの地下駐車場でスタッフが簡単なコクピットドリルをしてくれた。アンビエントライトを備えることに軽く驚きつつ乗り込み、ブレーキペダルを踏み込んでスタートボタンを押す……がエンジンは始動しない。デフォルトは常にEV状態のE(エレクトリック)モードなのだ。ちなみにリチウムイオンバッテリーの最大電力量は7.4kWhでEV走行可能距離は30kmを謳う。

軽量な新開発スポーツシートは高いホールド性と、なによりポジション調整スイッチが改良されたことが嬉しい。細かいが重要なことだ。センターの8インチHDディスプレイはアルティメットシリーズのエルバと同形状となった。オーディオ、ナビ、エアコンの操作ができ、ついにスマートフォンにも対応した。これまでスポーツシリーズではセンタートンネル上の低い位置に配置されていたドライブモード切り替えダイヤルは、ロッカースイッチとなってメーターナセル左右に移動した。これもエルバと同じだ。右でパワートレイン、左でハンドリングの調整が可能だ。ビナクルと呼ばれるこのスイッチはクリック感もあって直感的に操作できる。

室内はどちらかというとコンサバだが、今でも競技車の多くがそういう方向性を向いていることを考えると、マクラーレンが何を目指しているのかおぼろげに見えてくる。なお右のロッカースイッチ中央のボタンを押すと変速機のマニュアル/オート切り替え、左のロッカースイッチ中央のボタンはESCオン/オフができる。ステアリングにスイッチ類を備えないのがマクラーレンの流儀だが、これならステアリングから手を離さずとも操作できる。

スムーズで力強い加速

パワートレインとハンドリングは先代同様「コンフォート」「スポーツ」「トラック」で、パワートレインに「Eモード」が追加される。まずはEモードのまま走り始める。パワートレインがコンフォートモードでは20km/h以下で積極的にエンジンを止め、130km/hまでEV走行が可能。スポーツモードでは常時エンジンがかかり、適宜モーターによるアシストを行う。さらにスーパーシリーズでも採用されたイグニッションカットによる変速を中速域で行うという。トラックモードではモーターをフル活用し、イグニッションカットを高速域まで行い、さらに24‌kWまでの回生エネルギーを回収する。

Eモードは30kmしか走れないので、早々にスポーツモードに切り替えてエンジンを始動する。ステアリング裏のパドルを操作すると小気味よく変速する様にマクラーレンを感じる。変速機は先代の7速から新開発の8速DCTに進化した。100km/h走行時は8速1800rpmと巡航ギヤを高めに設定するだけでなく、ギヤ比をクロスさせている。ちなみに最高回転数は8500rpmだ。

前走車や信号のある市街地は豊かなトルクで1000〜2000rpmをうろうろしているが、エンジンは相変わらずボーボーとこもった音を発している。試みに高速道路でオートシフトにしてアクセルを踏み込むと、野太い吸気音を発しながら1速7800rpm時に73km/hでシフト、100km/hまでは3秒もかからないような印象だった。

エンジン単体でも凄まじい性能を発揮するが、やはりモーターによる225Nmのアシストは、マクラーレンが単に電動化のための電動化をしたわけではないと思わせてくれる。超高性能スポーツカーの苦手な低速域のぎこちなさを払拭しつつ、スムーズで力強い加速を実現している。いわゆるアクセルの“つき”がいい。

次代の刺激

タイトコーナーからの立ち上がりでエンジンとモーターの総力を結集して、激しい加速を見せてくれる。マクラーレンにとってPHVは環境のためではない、というのが正直な気持ちではなかろうか。EV走行できるとか正直どうでもよくて、重要なのは電動化でドライバーエンゲージメントをいかに高められるかだ。

今回一般道、高速道路での試乗のため、ハンドリングの限界性能を試すことはできなかったが、電動油圧アシストステアリングは、饒舌にマシンのポテンシャルを語りかけてくるに違いない。P1やスピードテールはいずれも億超えの超高級スポーツカーであり、予算はあっても台数限定で気軽に買えなかった。アルトゥーラはその点、一気に大衆化……否、仮にも3000万円超のスーパースポーツカーだ。気軽には買えないが、ともあれ、これまで億超えが必要だった体験を3分の1以下の金額で味わえるようになったことをまずは祝いたい。

REPORT/吉岡卓郎(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

SPECIFICATIONS

マクラーレン・アルトゥーラ

ボディサイズ:全長4539 全幅1976 全高1193mm
ホイールベース:2640mm
車両乾燥重量:1410kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
排気量:2993cc
トータル最高出力:500kW(680PS)/7500rpm[モーター最高出力:95PS]
トータル最大トルク:720Nm(73.4kgm)/2250rpm[モーター最大トルク:225Nm]
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前235/35R19(8.5J) 後295/35R20(10.5J)
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:3.0秒
車両本体価格:3070万円

【問い合わせ】
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TEL 092-611-8899

来場者はアルトゥーラのアグレッシブな走りとともにMIYAVI独自のスラップ奏法という、極上のコラボレーションを楽しんだ。

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