ベントレーで行く非日常ツーリングはまさに冒険のよう

「禅」とか「書」とか「香」とか「茶」とか普段しないことをベントレーで旅しながら体験すると人はどう変わる?

ドライバーズカーかつグランドツアラーだけを造り続けてきた自動車メーカーこそベントレーである。
ドライバーズカーかつグランドツアラーだけを造り続けてきた自動車メーカーこそベントレーである。
ベントレーモーターズがアジアで初となるツーリングイベントを開催した。エクストラオーディナリージャーニー2022という名称どおり非日常を凝縮した2日間は、ウェルビーイングをテーマにした様々なアクティビティが多数用意されていた。めくるめく移動祝祭日のようなイベントをレポートする。

EXTRAORDINARY JOURNEY JAPAN 2022

ウェルビーイングをテーマとして

天候にも恵まれたこのイベント。スタート地点の新神戸はまさに抜けるような青空で、十数台のベントレーの出発を祝福していた。
天候にも恵まれたこのイベント。スタート地点の新神戸はまさに抜けるような青空で、十数台のベントレーの出発を祝福していた。

日本が大正時代の1920年代に、設立から10年も経たないベントレーモーターズは、ドーバー海峡を越えてル・マン24時間レースで5連覇を成し遂げた。しかも、イギリスから自走で行って、レースを戦って、自走で帰ったという逸話を聞けば、いかなる偉大な挑戦もちっぽけに感じてしまう。これがベントレーに対していつも敬意を抱かざるを得ない理由のひとつだ。

すでにポストコロナにシフトした世界の趨勢を受けて、ベントレーはカスタマー向けのツーリングやイベントなどをグローバルで再開した。その日本における嚆矢が今回開催された「エクストラオーディナリージャーニー2022」である。関西地方を2日間で350kmあまり駆け抜けるツーリングイベントだ。

アジアでは初開催となるツーリングイベントのテーマは「ウェルビーイング」だ。近年ベントレーの全モデルにラインナップされた「アズール」という快適性を向上した上級グレードは、実際そのウェルビーイングを重視している。心身共に健やかな日常を目指すという言葉で表現されるこのキーワードが、どのようにこの旅に融合したか報告しよう。

なお、この350kmのロードトリップにはベントレーのメカニックも帯同しており、万一車両に不具合が発生しても即座に対応する体制が整えられている。だがそんな懸念は杞憂に終わるだろう。ベントレーと言えばドライバーズカー、かつグランドツアラーだけを造り続けてきた自動車メーカーなのだから。

英国王室御用達の威光は神社庁にも有効?

今回参加した十数名のベントレーオーナー達に混じって、われわれメディアにもコンチネンタルGTによる参加枠が用意された。心地よい潮風に吹かれながらスタート地点の新神戸を出発すると、まずは淡路島の伊弉諾神宮を目指す。日本最古の神社でこれから始まる旅の交通安全祈願をするのだ。

こういったイベントではどうしてもマスツーリングのような車群での走行になってしまいがちだが、今回は数台単位にすることで、周囲への影響を抑える工夫をしていた。ロストする車両も無く無事に神社に辿り着くと、荘厳な雰囲気の中、通常ではあり得ない神社側の厚待遇に驚いた。祈祷中の車両の保管から、特別に設えた御朱印帳など、英国王室御用達の威光は神社庁にも有効なのか-と、恐れおののいたが、これは純粋にイベント主催者の尽力の賜物なのだろう。

2日間にわたるツアーを通して、禅道場や鳴門の渦潮、紅葉の名所として知られる嵐山高雄パークウェイなどを体験・見学したが、随所に驚きの仕掛けが用意されていた。純粋に観光めいた目的地もあるが、途中PM競技、PC競技というクラシックカーラリーで行われるタイム計測区間が用意され、飽きの来ないコンテンツでテンポが良い。各コンテンツの後は1時間ほど移動するので、そこで体験したことを反芻し、これから体験することへの期待に胸を膨らませるにはちょうどいい。非日常の中でベントレーを満喫する実に緻密なスケジュールだ。

1日目の終わりはグランドニッコー淡路でのディナーだ。少人数のツーリングでコミュニケーションが密だったためか、参加者はすでに「旅の仲間」といえる雰囲気が醸成されていた。お酒の力も多分にあったように思う。中でもベントレーとパートナーシップを結ぶマッカランが用意したレシピによる、スペシャルカクテルで大いに盛り上がった。

グランドツアラーとは何か

今回のツーリングでもっとも印象的だったのは2日目の禅道場だ。自然と調和し、森の中に包まれるように建てられた「禅坊 靖寧」は森の稜線を超えないように設計されている。風の音、鳥のさえずり、虫のざわめきがより鮮明に感じられるのだ。ここで「禅」「書」「香」「茶」など、まさにウェルビーイングな体験をした。これらは日々様々なストレスにさらされる現代人にとって大きな癒やしになったに違いない。ベントレーはウェルビーイング以外にも「音楽」「アート」「不動産」といった様々な方向性を重視しているが、この空中禅道場は建築物として圧倒的な存在感で、ここにもベントレーの目指す様々な志向性のヒントが隠されているような気がした。

今回のツーリング第1弾はたまたま関西地方が選ばれたというが、となると当然京都を訪れねばなるまい。2日目のフィナーレとなる世界遺産「仁和寺」に向けて、自然豊かな関西を代表するワインディングロード、嵐山高雄パークウェイをひた走る。紅葉の名所としても知られる名道である。最終目的地の仁和寺は888年に創建され、『徒然草』にも登場するという現存する伝説だ。この伝説の場所でのディナーは最後まで手を抜かない主催者の意地を感じた。

ベントレーがグランドツアラーだけを造り続けてきた希有な自動車メーカーであることを知っていれば、旅こそがその本懐であるということは言うまでもない。もともとグランドツアラーという言葉は、かつて17~18世紀にかけて、英国貴族の子弟が見聞を広めるためにヨーロッパ大陸に出かけた冒険の旅「グランドツアー」に由来するという。現代においては快適なロングドライブを提供するラグジュアリーカーを意味するようになったが、創業者のW・O・ベントレーが志向したグランドツアラーとはパフォーマンスとラグジュアリーを併せ持つクルマなのだ。

さらなる冒険心をかきたてる

ベントレー100周年を期に策定された「Beyond100」。それを加速させる戦略の中核となるのが「ファイブ・イン・ファイブ」計画だ。2025年から5年間、毎年1車種ずつ完全電気自動車(BEV)のニューモデルを発表するという野心的なプランだ。このロングツーリングも2025年にはBEVが参加しているのだろう。

飛行機と新幹線でどこへでも行ける現代に、自らステアリングを握ってクルマで駆け巡る旅というのは、当時と同様に非日常の刺激をもたらしてくれた。今回の「エクストラオーディナリージャーニー2022」を終えて、前述した挑戦と較べれば、端緒にも至らないものかもしれないが、それに比肩する冒険に飛び出したい、そんな勇気を得たのは筆者のウェルビーイングが高められたおかげだろうか?

2023年の開催はまだ決定していないが、第1回の充実ぶりからリピーター続出だろうことは間違いない。

REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/ベントレーモーターズジャパン
MAGAZINE/GENROQ 2023年1月号

【問い合わせ】
ベントレーコール
TEL 0120-97-7797
https://www.bentleymotors.jp/

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著者プロフィール

吉岡卓朗 近影

吉岡卓朗

ゲンロクWeb編集長。趣味はクルマを用いたラリーやレースなどモータースポーツ活動だったが、現在はもっぱ…