ベントレーのボンネットに輝く最新世代マスコット「フライングB」

「神は細部に宿る」6代目マスコット「フライングB」に対するベントレーの異常なまでのこだわり

展開すると、翼が美しい輝きを放つベントレー フライングスパーの「フライングB」。
展開すると、翼が美しい輝きを放つベントレー フライングスパーの「フライングB」。
フライングスパー マリナーに歩み寄ると、グリル上にあるベントレーのネームバッジが滑らかに視界から消え、同時に美しく磨き上げられた「フライングB」のボンネットマスコット(6代目デザイン)が現れる。そして、ヘッドランプとマスコットの繊細な翼が完璧なシンクロを見せながら、オーナーを歓迎する光を放つ。フライングスパー マリナーに標準装備されている「フライング B」は、すべてのフライングスパーにオプションとして設定されており、97%のカスタマーが装着している。

史上初電子制御で展開する「フライングB」

複雑な工程を踏み、完成までに11週間もの時間を要する、6代目「フライングB」。
複雑な工程を踏み、完成までに11週間もの時間を要する、6代目「フライングB」。フライングスパー マリナーに標準搭載される「フライングB」は、史上初めて自動展開する仕様が導入された。

ベントレーのボンネットマスコット「フライングB」は、1920年代半ばから様々なバージョンが提供されてきた。現在のデザインはその6代目にあたる。現行フライングスパーでは、ベントレーのデザイナーとエンジニアが、「フライングB」を、次のレベルへと引き上げるという重大な課題に取り組んだ。

フライングスパー マリナーのラジエーターを飾るエンブレムは、ベントレー史上初めて電子制御で展開。収納時にはカバープレートに置き換わり、透明なアクリル製の羽を備え、内部が照らされるようになっている。新型フライングスパーの開発中、クルーの社内チームによる複数のデザインがプロトタイプとして作成。取締役会で選考が行われ他後、ホー・ヤン・ファンによるデザインが満場一致で選ばれている。

インベストメント鋳造法で製造

複雑な工程を踏み、完成までに11週間もの時間を要する、6代目「フライングB」。
フライングBは、通常ガスタービンのブレードなどの精密部品に用いられるインベストメント鋳造で製造。工程において、時間はかかるものの、より滑らかな表面を作ることができる。

「フライングB」は、オーステナイト結晶構造を持つ、316グレードのステンレススチールの一体成型品。非常に丈夫かつ、極端な温度変化にも耐えることができる。また、モリブデンを配合することで耐食性を高めており、北極圏から赤道付近まで一年中風雨にさらされるパーツとして、極めて重要な特性が与えられている。

「フライングB」は、レスターキャスト社において、通常ガスタービンのブレードなどの精密部品に用いられるインベストメント鋳造(ロストワックス)法で製造。これは複雑な形状のパーツによく使われている鋳造法で、時間はかかるものの、砂型鋳造よりも公差が少なく、より薄い壁や滑らかな表面を作ることができる。

まず、溶けたロウを金型に注入。水溶性のコアがアクリルのクリスタルの2つの翼が収まる空洞を満たし、セラミックの中心コアがワックス型に照明配線のための通路を作る。その後、ワックスのエンブレムを金型から取り外し、水溶性コアを溶かしてワックスで完璧な「フライングB」ができあがる。

次に、コロイダルシリカとアルミナを含むファインセラミック溶液の複数の層でワックスのエンブレムを包みこむ。これらの層が固まった後、蒸気圧チャンバーでワックスを溶かし、エンブレムの形をした中空の空洞を持つセラミックの型を残す。

ここで1600℃に加熱した溶融316ステンレススチールを、セラミック製の鋳型へと流し込む。鋼鉄が冷えて固まると、外側のセラミックが取り除かれ、セラミックのコアは苛性溶液を使って加圧溶解。ショットブラストで微量のセラミックを除去し、「エクストルードホーニング」と呼ばれる工程で、内部の通路を滑らかにして配線が通れるようにする。

セラミックの残りをすべて除去し、部品を慎重に測定して正確な公差で製造されていることを確認した後、「フライングB」は手作業による研磨へ。この手作業による最後の仕上げが、滑らかなステンレススチールの深い光沢を引き出すという。すべての工程を終えるまでには11週間かかり、最後はWCMヨーロッパ社において、魅力的な光を放つクリスタルアクリルの翼と配線、小さなLEDが組み合わされて、マスコットは完成する。

長い時間をかけて進化を続けたフライングB

複雑な工程を踏み、完成までに11週間もの時間を要する、6代目「フライングB」。
ベントレーの黎明期には存在しなかったフライングBだが、時代の移り変わりや法規に合わせて、進化を続けてきた。

初期のベントレーには、ボンネットマスコットが装備されていなかった。現存する最古のベントレーである「EXP2」には、ドライバーの視界に直接入るラジエーターキャップとして、シンプルな水温計が装備されている。しかし、オーナーからの要望により、1920年代半ばから、翼を水平に構えた華麗で直立した真鍮製の「B」を提供するようになった。

ダービー時代(1931〜39年)には、アーティストのチャールズ・サイクスが、より小型で流線型のバージョンの制作を依頼。彼のオリジナルデザインは、アールデコスタイルの前傾した単翼の「B」で、左右どちらから見ても「B」が正しく読めるようにファセットが施された。しかし、この単翼はオーナーに不評だったため、サイクスのファセット付き「B」デザインは、後方に向かう2枚の翼を持つものに変更されている。

後方に傾いたフライングBは、ダービーベントレーMRおよびMXシリーズのオーバードライブに短期間採用。このデザインの欠点は、翼がボンネットの上に突き出ていることで、オーナーはボンネットを開けるときに傷つけないようマスコットを横にひねらなければならなかったという。

サイクスのデザインはその後改良されながら、1970年代までベントレーの各モデルに採用。歩行者保護法により突起した固いボンネットオーナメントが禁止されたため、廃止された。

2006年、ベントレー アズールとブルックランズのモデル用に、格納式となった改良版の「フライングB」を搭載。その後、同じデザインがミュルザンヌにもオプションとして採用さた。このデザインは衝撃を与えると格納されるが、それ以外は固定されている。その後、2019年に新型フライングスパーの登場とともに、「フライングB」は技術的・芸術的に、現在のマスコットへと進化を果たしている。

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