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Lamborghini Esports
バーチャル空間で競うeスポーツ
リアルではなくバーチャルスペースで競技を行うeスポーツは、人と人が対面する機会がコロナ禍によって制限された事情もあって加速した感すらある。現在、eスポーツには欧州メーカーが中心になって多数参画しており、ランボルギーニの他にもベントレーやポルシェなどが積極的に大会を後押し。バーチャルレース、即ちシムレースは「シムドライバー」と呼ばれるプロフェッショナル(プロゲーマー)を生み出し、ハイレベルな仮想空間でのレースを戦っている。
中でも積極的にeスポーツへ取り組んでいるのがランボルギーニ。2022年には公式eスポーツチーム「Lamborghini Esports」を設立し、『アセット・コルサ・コンペティツィオーネ』をプラットフォームとした「The Real Race」の第3シーズンを実施するなど、eスポーツ界でも存在感を高めている。
国境や性差・老若男女を越えて世界中から参加者が集う
リアルレースと異なるシムレースの利点は多々あるが、中でも完全イコールコンディション/参加者の多様性確保/安全かつ低コスト/カーボンフリーなどが最たるところだろう。競技に用いるバーチャル車両はプログラムによってイコールコンディションが徹底されているため、純粋に参加者の技量のみで勝敗が決し、その参加者もオンラインに繋がることさえできれば世界中どこにいてもエントリー可能で、なおかつ身体的ハンディキャップや老若男女といった物理的制約の影響を受けにくい。
もちろんバーチャル空間でのレースだからクラッシュしても怪我や生命の危険も皆無で、リアルレースであれば必須な高額な車両の購入費や維持費もかからず、練習走行も自宅に居ながらにして自由な時間を使って行える。さらにカーボンフリーが命題となる現実世界では、フォーミュラEなどのEVを用いたレース以上にカーボンフリーな競技でもある(タイヤの消費すらないのだから)。
シムレースをホビーとして楽しむことはもちろん、昨今では高額な賞金や特典が設定されていたりする。例えばランボルギーニは「The Real Race」の優勝者に「Lamborghini Esports」へ参加するチャンスを与えるなど、リアルレースと変わらない栄誉を手に入れることが可能だ。
数十万人の参加者を集めるエンターテインメントに成長
今シーズンは3896名の参加者が世界中から集い、バーチャルレーシングマシン「ウラカン スーパートロフェオ EVO2」を用いて熱いレースを展開。EMEA(ヨーロッパ/中東/アフリカ)とNALA(北アメリカ/ラテンアメリカ)、そしてAPAC(アジア太平洋)という各地区ごとの予選を勝ち抜いた24名が決勝大会に進み、各地区の優勝者3名のうち1名がランボルギーニのオフィシャルeスポーツチームに加わるチャンスを掴んだ。
また、ランボルギーニは「The Real Race」だけでなく、『Asphalt 9:Legends』と提携してモバイルレーシングコンペティション「カウンタック LPI 800-4 チャレンジ」に参加。合計98万人のユニーク参加者と5万3000人の登録プレイヤーを数え、このライブストリーミング決勝戦には6万3000人を超える視聴者が集まるなど、世界中のランボルギーニ&eスポーツファンに対してエンターテインメントを提供している。
eスポーツの一般化は進む
ランボルギーニにとって、eスポーツはリアルでのモータースポーツと対を成す新しいステージのモータースポーツ活動という側面はもちろんあるものの、それに加えてブランドバリューの強化やカーボンフリー社会への貢献をアピールする場としても機能させていると見るのが正しいだろう。さらにもっと重要と考えているのは、カスタマーサービスの一端であるということだ。
誤解を恐れずに言うなら、20世紀に生まれたランボルギーニの各モデルはスペックとアピアランスこそレーシングカーを彷彿とさせたものの、実際のパフォーマンスはレースに供するには抵抗のあるものだったので、ユーザーは公道オンリーでも構わなかった。しかし21世紀の今では、最高出力600PSを優に超えるハイパワーや最高速度300km/h以上を誇る高速パフォーマンス、AWDとアクティブエアロデバイスをはじめとした俊敏なコーナリング性能をランボルギーニは実現し、名実ともにサーキットを視野に入れた性能を手にしている。
正規ディーラー主体の大会も開催
となればサーキットで思う存分ランボルギーニのパフォーマンスを味わいたいと思うのが自然の流れであり、そうした声に対してランボルギーニはワンメイクレース「スーパートロフェオ」を開催して応えてきた。今では人気のレースカテゴリーとして周知されるまでに成功しているものの、ランボルギーニが世界中に抱えるカスタマーへのサービスとするには受け皿が小さくハードルも高い。
そんな状況を見すえ、ランボルギーニは各国のディーラー主体ではあるが、カスタマーサービスの一環としてeスポーツを楽しむ機会を提供している。例えばここ日本では、ウラカン テクニカの発売を記念して「Lamborghini Japan e-campione tour 2022」を開催している。これは「The Real Race」のプラットフォームにも利用されているドライビングシミュレーター『アセットコルサ』を用い、全国9拠点(仙台/横浜/芝/麻布/名古屋/大阪/神戸/広島/福岡)のランボルギーニ ディーラーのカスタマーが参加したバーチャルレース。
予選を勝ち抜いた各地区の代表が決勝を競うというのも「The Real Race」と同様だったが、今回はウラカン テクニカの発売記念とあって競技車両はウラカン テクニカを用いて行われた。ステージは富士スピードウェイと鈴鹿サーキットで、参加者の中にはリアルで各サーキットを走り込んでいるツワモノもおり『アセットコルサ』のリアルと遜色ない車体の挙動やタイヤの温まり方に驚いたとのコメントなどは、現実世界と仮想世界の境界が確実に縮まっていることを示唆する。
多くのメリットを生むeスポーツの今後に注目
リアルでランボルギーニを駆りレースに挑むのは、前述したように様々なリスクがある。しかしeスポーツであればリアルでは避けられないリスクのほとんどを回避可能なうえ、ランボルギーニの秘めたポテンシャルをバーチャル体験することで実際のドライブでも限界がどこにあるかを事前に知る機会を得るというメリットも享受できる。つまりランボルギーニがeスポーツを大々的にバックアップする理由に、前述したブランドバリューの強化やカーボンフリー社会への貢献、充実したカスタマーサービスの他に、セーフティドライブの啓蒙という一面が加わるわけだ。
このようにeスポーツが体現するメリットは数多く、それはランボルギーニだけでなく他のメーカーにとっても同様だ。今後もバーチャルレースをはじめとしたeスポーツは益々一般化し、クルマ趣味の1ジャンルとして成長してくのは間違いない。
PHOTO/アウトモビリ・ランボルギーニ ジャパン