最新BMW7シリーズとメルセデス・ベンツSクラスに試乗して徹底比較

新型BMW7シリーズとメルセデス・ベンツSクラス「超高級サルーンの対決」どちらのほうが快適か?

メルセデス・ベンツSクラスが2020年秋、2022年春にBMW7シリーズがフルモデルチェンジを迎えた。そのタイムラグは過去のモデルチェンジの中でも最も短い。
メルセデス・ベンツSクラスが2020年秋、2022年春にBMW7シリーズがフルモデルチェンジを迎えた。そのタイムラグは過去のモデルチェンジの中でも最も短い。
パーソナルユースでは事実上のフラッグシップとなるSセグメント。このカテゴリーを語る時に欠かせないのがメルセデス・ベンツSクラスとBMW7シリーズである。7シリーズが刷新された今、永遠のライバルの関係にはどのような変化が起きるのだろうか。

BMW 740i M Sport
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Mercedes-Benz S 580 4Matic Long

永遠のライバルとの対決

最新モデルのW223型SクラスとG70型7シリーズ。クルマを取り巻く環境が凄まじい勢いで変化する中、1年半の差は大きいか?

メルセデス・ベンツを世界に冠たるブランドたらしめているのは間違いなくSクラスの存在だ。戦前に遡ればグロッサーからの流れを汲む世界最高のショーファードリブンカーの系譜があり、戦後は最先端の安全技術を搭載するオーナードリブンカーというポジションも確立してきた。

その牙城に正面から挑んだのがBMWの7シリーズだ。初代の登場は1977年。ダブルバンパーの愛称でW116型Sクラスが名を馳せていた77年のこと。既に珠玉の名声を確立しつつあったストレート6を専用設計のまったく新しいアーキテクチャーで走らせる、その組み合わせに彼らの意気込みがあらわれていた。

以降、両車は微妙に発売タイミングの均衡を保ちながらモデルチェンジを重ねてきた。傍からみれば互いに牽制しつつ、時に大胆な勝負に出たこともあったように思う。具体的にはメルセデスが90年代のW140型で一気に7シリーズを突き放す重厚長大路線に走ったかと思えば、2000年代にはBMWがE65型でクリス・バングルのデザインとUIの大改革でSクラスを突き放すと。共に失敗作と評されるが、現状に満足しないこの姿勢が両車を永遠のライバルたらしめる前提になっている、そして市場を牛耳る原動力になっていることも確かだ。

ホイールベースは同値となるが

現行世代はSクラスが20年秋、それから1年半近くを経ての22年春に7シリーズが、各々のフルモデルチェンジを迎えた。時差としては過去のモデルチェンジの中でも最も短く、相手の出方をみてハードウェアに反映するには時間が足りなすぎる。W223型とG70型は、クルマを取り巻く環境が凄まじい勢いで変化する中、図らずもほぼガチンコの状態でぶつかることになったわけだ。

日本に上陸したばかりの新型7シリーズ。そのグレード構成は至ってシンプルだ。内燃機は直6ターボのディーゼルとガソリンがひとつずつ。740i、740d xドライブに加えて、トップグレードとして前後アクスルにモーターを積むBEVのi7が用意される。また、トリムラインはエクセレンスとMスポーツの2つが用意されている。今回の取材車はメカニズム的には最もベーシックなFRの740iだ。ちなみに新型7シリーズは、ボディタイプは従来でいうところのロング側に1本化されており、その全長は5390mm、ホイールベースは3215mmに及ぶ。

一方のSクラスはS580 4マティック ロングが取材車となる。740iに比べると全長はほぼ変わらず、ホイールベースはぴたり同じと示し合わせたようだが、全高は7シリーズの方が40mm高い。

それもあって並んでみれば、7シリーズの方が気持ち大きく感じられる。というよりむしろ、同門のロールス・ロイス・ゴーストの側に近いのではないだろうか・・・という存在感が新型7シリーズの特徴かもしれない。併せて、DRLとヘッドライトを完全分割して二段積みとした仰天のデザインもあって、その異質さはそれこそE65型を彷彿とさせる。

主たる理由は同じCLARプラットフォームを用いてICEとBEVの両方に対応するモジュール設計だ。バッテリーを床下に敷き詰めながら十分な居住空間を確保するために、体躯が天地方向に広がるのは致し方ないことだ。二段積みの顔立ちもまた、この厚みを吸収するための苦肉の策ともみてとれなくはない。

謹製直6でなければ味わえない疾走感

現行のSクラスが登場した際にはインフォテインメントやアンビエントなど、室内の設えや演出の変貌ぶりに驚かされたが、新型7シリーズはそこに被せたかのような趣向に満ちている。従来ならウッド等のオーナメントが嵌め込まれるダッシュからドアトリムにかけてはインタラクションバーと呼ばれるクリスタルカットの透明な加飾が取り回され、設定や機能に応じて多彩なイルミネーションが車内を彩る。他にもオプションのリヤエンターテイメントには前席とのパーテーションのごとく31.3インチの8Kディスプレイが天吊りで配されるなど、空間の新しさは時差を超えた価値を7シリーズの側に感じることになるだろう。

この空間価値を活かすことに配慮したのかと思うほど、新型7シリーズはNVHの処理や細かなホップ&バウンドの処理に気を遣っているようにみえる。それは直近の他のモデルに乗っても感じるところで、以前なら運転実感を強調する演出とみられていた音振にきちんと対処したりと、クルマづくりのベクトルがコンフォート側に向いているのかと察せられることが多い。BEV時代に向けての価値変化を敏感に反映しているのかと邪推してしまうが、端的に日常域の乗り心地がいいことに異を挟む人はいないだろう。

それでも山道を走っての印象は、BMWらしい爽快さに満ちていた。B58型直6を搭載する740iは強い加速を求める際に若干の力不足を感じるものの概ね動力性能は十分で、高負荷のワインディングでエンジンを存分に唱わせて走るような場面では、巨大な体躯をもってして、謹製直6でなければ味わえない疾走感を十分に味わわせてくれる。

時代と共に歩み寄る両車の性格

今回の取材車はSクラスはS580 4マティック ロングと740i。全長はほぼ変わらず、ホイールベースはぴたり同じだが、全高は7シリーズの方が40mm高い。
今回の取材車はSクラスはS580 4マティック ロングと740i。全長はほぼ変わらず、ホイールベースはぴたり同じだが、全高は7シリーズの方が40mm高い。

一方のSクラスはともあれ懐の深さが印象的だ。低中速域では外界とひとつ余計に壁を挟んでいるかのような安らぎがあり、高速域では眼前のクルマの動きを先々まで掌握しているかのような豊かな情報量が実感できる。どの速度域でもボディコントロールが巧く、どんな外乱に対してもドライバーの視点移動を最小限に留めるフラット感によって、疲れを最小限に留める。メルセデスライドの核心はすべてのモデルで大なり小なりきちんと実感できることが凄いなあといつも感心させられるが、それが最も濃密に体感できるのは、いつの時代もやはりSクラスだ。

が、それは厳密に性質を見極めていく上での話でもある。同じ点から点に向かう際に、どれほど安穏の時を過ごすのか。あるいは覚醒的な瞬間に体を費やすか。それはメルセデスとBMWの選択理由にそのまま繋がっていたように思う。が、パワートレインの大変革に伴い、両車の表裏的性格は、歩み寄りをみせているのかもしれない。そのくらい、ベーシックな快適性において両車の差異は接近しているのが実情だ。

Sクラスと7シリーズ。乗用車の頂点であり永遠の好敵手でもある両車はいま、現世代への約束と次世代への展望との両方を握る、そんな重責に晒されているのかもしれない。

REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2023年2月号

SPECIFICATIONS

BMW740i Mスポーツ

ボディサイズ:全長5390 全幅1950 全高1545mm
ホイールベース:3215mm
乾燥重量:2120kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCターボ
排気量:2997cc
最高出力:280kW(381PS)/5500rpm
最大トルク:※520Nm(53.0kgm)/1850-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/45R20 後285/40R20
燃料消費率:12.8km/L(WLTC)
車両本体価格:1490万円
※システムトータルは540Nm(55.1kgm)

メルセデス・ベンツS580 4マティックロング

ボディサイズ:全長5320 全幅1930 全高1505mm
ホイールベース:3215mm
乾燥重量:2160kg
エンジンタイプ:V型8気筒ツインターボ
排気量:3982cc
最高出力:370kW(503PS)/5500rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/2000-4500rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前255/45R19 後285/40R19
燃料消費率:8.8km/L(WLTC)
車両本体価格:1978万円

【問い合わせ】

BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

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