マクラーレンの最新スーパースポーツ「アルトゥーラ」で九州を行く

マクラーレンのPHVスーパースポーツ「アルトゥーラ」で楽しむ九州ツーリングのハイライトはどこだ?

マクラーレンの次の10年を切り拓くPHVスーパースポーツ、アルトゥーラ。すでに本誌ではワインディングから、サーキットまでテストを敢行しているが、今回はグランドツーリングを通じて得られるマクラーレンの新価値を確かめた。

McLaren Artura

福岡から阿蘇を目指す九州の旅

福岡空港から程近いマクラーレン福岡で車両を受け取って出発。阿蘇を目指し、九州縦貫道を南下する。
福岡空港から程近いマクラーレン福岡で車両を受け取って出発。阿蘇を目指し、九州縦貫道を南下する。

先月号では富士スピードウェイでマクラーレン・アルトゥーラを全開走行させた。その時レポートしたとおり、サーキットでの全開領域におけるマシンの挙動は、十分に楽しめるもので、Eデフの作動やシームレスなスロットルレスポンスなど好印象であった。しかし、マクラーレンはサーキットの速さはもちろん、一般道でも乗り心地がよく使いやすいという印象も持っている。そこで今回アルトゥーラで九州を旅することで、その美点を再確認してみよう。

旅のスタートは福岡空港から近いマクラーレン福岡だった。ここでアルトゥーラを受け取り、最初はエレクトリックモードを選択してモーターでスタートする。アルトゥーラはプラグインハイブリッド(PHV)スーパースポーツなので、モーターのみで走行できる。このモードでは特にマクラーレン独特の点はないが、静かでスムーズで一般道ではとても扱いやすい。このEモードで約30km走行できる。

片側2車線の一般道を走っていると、このクルマの後方や側方の視認性の素晴らしさに気づいた。特に斜め後方の小さなクォーターウインドウが効果的だ。このようなスーパーカーで車線変更をする時に、過去最高に安心感のある車線変更を行えた。クルマ全体の見切りの良さや、駐車時の確認のしやすさも含めて安心感があり、高い安全性を感じた。高速道路に入り、コンフォートモードをチョイスすると、ここで初めてエンジンが始動した。エンジンが始動した瞬間のスムーズなところも好印象だ。時々エンジンがかかる瞬間に違和感のあるハイブリッド車もあるが、アルトゥーラは違和感がまったくなく気持ちいい。エンジンのかかり始めがわからないほどスムーズだ。

様々なモードを気分によって選択

ところで、今日の目的地は阿蘇である。バイパスや高速を走行し、まずは日田に向かう。その道中でパワートレインやハンドリングのモードの違いを試す。パワートレインは電気のみで走る「E」モード、モーターとエンジンをエコに使い分ける「コンフォート」、そしてスポーティな走りを可能にする「スポーツ」、最後にパフォーマンスをフルに発揮し、サーキット走行に対応する「トラック」が選択可能だ。各モードのセッティングは明確に変化があり、ドライバーがどのような走りをしたいかによって選択すればいいのでエコとパフォーマンスを両立できる。

ハンドリングのモードを変更するとサスペンションのセッティングが変わり、街乗りの快適性重視の「コンフォート」、文字通りスポーティな「スポーツ」、サーキット走行に対応する「トラック」モードがある。ダンパーの減衰力やEデフのセッティングが変化し、様々な走りが可能になる。ハンドリングのモード変更は高速道路でも変化を確実に感じ取れるので、オーナーはぜひ試していただきたい。

アルトゥーラの各モードの組み合わせを試しながら走っていると、ナビがまもなく日田であることを告げた。日田や阿蘇は私にとってオートポリスでのレースやテストを行う時の宿泊先である。つまり、その道中が通勤路になるわけだが、私自身この辺りの雰囲気や景色をとても気に入っている。普段のレースやテストでは熊本空港からレンタカーを使うのが普通だが、レンタカーで走っていても感動的な道を、アルトゥーラで走るとなおさら気持ちよく、テンションが上がる。

感動的なワインディングをアルトゥーラで

日田温泉側から三隅川の島内堰を望む。恐ろしく穏やかな水面が、冬の大分県の美しい景色を見せてくれた。
日田温泉側から三隅川の島内堰を望む。恐ろしく穏やかな水面が、冬の大分県の美しい景色を見せてくれた。

日田のインターを降りて、私のお気に入りの場所に向かう。小京都のような町並みは情緒にあふれており、日田に泊まる時は夜に三隈川沿いを散歩するのが大好きなのだ。その川岸までアルトゥーラで行ってみた。改めて考えると明るい時間にここを訪れるのは初めてで、その景色は想像以上に美しかった。この旅最初の新発見で、とてもうれしかった。

川岸での撮影は道が思いのほか狭く、切り返すのに緊張した。だが、ここでPHVの良さが光った。モーターを使ったリバースの動き出しがとてもスムーズなので微妙な動きがしやすかったのだ。予想外のところでモーターの効果を体感できた。日頃味わえない日田の雰囲気を堪能したところで、阿蘇を目指す。

日田から杖立温泉を経由して阿蘇に向かう。杖立温泉も私のお気に入りだ。温泉も川沿いの雰囲気も最高に素敵なので、ひとりで泊まってリラックスしたことがあるが、あれは最高だった。ただし道は、ワインディングで序盤はタイトだ。路面も少しバンプが多く、阿蘇に近づくにつれてスムーズな路面になっていく印象がある。どの季節に行っても九州の自然は感動的だが、この辺りは今回紅葉がとても綺麗だった。

スーパースポーツながら快適な旅

このワインディングで様々なモードを試した。路面の状況やスピードに合わせてシャシーセッティングを変え、バンプに対しての快適性と走りの鋭さをコンフォートからトラックまで小まめに行って、その時最適だと思える調整をした。パワートレインにおいてもEモード以外のコンフォートからトラックまで気分によって選択し、走りを楽しんだ。

ワインディングを走るにつれ、山の中から徐々に高原の雰囲気に変化していく。ススキが独特な雰囲気を醸していた。標高も高いので日田とは別世界のように気温が下がると、阿蘇の雄大な景色を一望できる大観峰に到着した。ここから見る景色は個人的には日本で一番雄大だと思う。

崩れた山肌から感じる凶暴さなど、自然の力強さをひしひしと感じる。この日も上がっていた噴煙を見ていると、現代のこの世の景色とは思えない。しかしアルトゥーラにとっては、この辺りは天国だ。美しく雄大な景観の中、整備されて走りやすいワインディングは、その性能を最高に楽しめる場所なのだから。

やはり九州の旅は最高だった

大観峰からいっきに下山する。オートポリスから近く、温泉も気持ちいいので、よく泊まる内牧温泉を通過し、南阿蘇を目指す。

南阿蘇もやはりワインディングが素晴らしい。大観峰を逆に見ることになるのだが、こちらの景色はやはり噴火口が近いこともあって、すこし緊張感がある感じのワイルドな印象だ。中岳の噴火口に到着したが、残念ながらこの日はスケジュールの都合で、火口は見られなかった。ただし、近くの駐車場に行くとガスのにおいがはっきり鼻につき、放送で毒ガス注意を常時呼び掛けていた。

福岡からほんの2時間移動するだけで、自然の怖さと迫力ある景色を堪能できる九州は、本当にドライブ旅をするには最高だと改めて実感した。もちろん今回アルトゥーラに乗っていたこともあって、その旅の喜びはさらに増幅し、なにより一般道におけるアルトゥーラの走りの素晴らしさも十分体感できた。九州の素晴らしい自然と町並み、そしてアルトゥーラの速くて扱いやすく、しかもエコな部分を堪能できた。街中でのEモードによる静粛性の素晴らしさと視界の良さは感動的だった。

680PSをフルに発揮した時の強烈な速さは、決して凶暴ではない。全てにおいて新時代を感じさせるスムーズさで、制御の反応の速さは異次元といっていい。一方でハイテク一辺倒ではなく、インフォメーション重視の電動油圧パワーステアリングのお陰で、アナログ的で自然な操舵感が得られる。ドライバーが安心して自らの意思でマシンをコントロールできる部分を残している。

REPORT/田中哲也(Tetsuya TANAKA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)
MAGAZINE/GENROQ 2023年2月号

SPECIFICATIONS

マクラーレン・アルトゥーラ

ボディサイズ:全長4539 全幅1976 全高1193mm
ホイールベース:2640mm
車両乾燥重量:1410kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
排気量:2993cc
トータル最高出力:500kW(680PS)/7500rpm[モーター最高出力:95PS]
トータル最大トルク:720Nm(73.4kgm)/2250rpm[モーター最大トルク:225Nm]
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前235/35R19(8.5J) 後295/35R20(10.5J)
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:3.0秒
車両本体価格:3070万円

【問い合わせ】

マクラーレン東京
TEL 03-6438-1963

マクラーレン麻布
TEL 03-3446-0555

マクラーレン大阪
TEL 06-6121-8821

マクラーレン名古屋
TEL 052-528-5855

マクラーレン福岡
TEL 092-611-8899

ダンロップコーナーを立ち上がるアルトゥーラ。サスペンションセッティングとEデフの効き方が素晴らしくマッチしていた。

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田中哲也 近影

田中哲也