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必勝体制で12年ぶりのジャパンに挑んだトヨタ

2022年シーズン、トヨタはカッレ・ロバンペラが最年少記録を更新してドライバーズ選手権を初制覇。さらに第12戦カタルニアの段階で最終戦を残してマニュファクチャラーズ選手権も獲得、2年連続でダブルタイトルを決めた。残るは最終戦ラリージャパン、ホームイベントを前にトヨタは必勝体制を敷く。
王者ロバンペラを筆頭に、今シーズンは限定参戦ながらも8度の王座獲得経験を持つセバスチャン・オジエ、舗装路で抜群のスピードを持つエルフィン・エバンスの3人が、トヨタ・GRヤリス・ラリー1をドライブ。さらに、地元愛知出身で2019年に同じ地域で開催されたテストイベント「セントラルラリー」への出走経験を持つ勝田貴元も、GRヤリス・ラリー1のステアリングを握る。
一方、ライバルのヒョンデは、オィット・タナックとティエリー・ヌービルのダブルエースに、前回のラリージャパン(2010年に札幌を拠点にグラベルラリーとして開催)参戦経験を持つダニ・ソルドが、ヒョンデi20 Nラリー1をドライブ。Mスポーツ・フォードは、開幕戦ラリーモンテカルロで勝利したセバスチャン・ローブ登場の噂もあったが、クレイグ・ブリーンとガス・グリーンスミスのふたりが、フォード・プーマ・ラリー1で参戦する。
トヨタ勢がパンクで後退するなかヒョンデが勝利

11月10日木曜デイ1、豊田スタジアムでの華々しいセレモニアルスタート直後に行われたSS1を制したのはオジエ。ところが、オジエは本格的なSS走行がスタートした11日金曜デイ2のSS2で痛恨のパンクを喫し、早々にトップ争いから脱落してしまう。
トヨタは優勝を狙える位置につけていたロバンペラも、12日土曜デイ3のSS8で岩にヒットしてパンク。母国イベントでの勝利は、僅差で首位のヌービルを追うエバンスに託された。しかし、首位のヌービルに4.0秒差で挑んだ最終日となる13日日曜デイ4、エバンスもまたSS16でパンクに見舞われ、ポジションを大きく落とした。
優勝を期待されていた3人がまさかのパンクで脱落。初日から自分のペースを守って走行していた勝田が、首位ヌービル、2番手のタナックに続く、トヨタ最上位の3番手に浮上する。勝田は雨が降り始めた困難なコンディションでもミスを犯すことなく、3位を守ってフィニッシュ。トヨタ勢最上位、自身としてはシーズン2度目の表彰台を母国ラリーで手にした。
プレッシャーの掛かるなか、厳しいサバイバルラリーを走り切った勝田は「母国開催のラリーで表彰台に立つことができて、本当に特別な気持ちです。非常にトリッキーなステージが多く、グリップレベルが大きく変化する難しいラリーウイークになりました。ラリー終盤は特に難しいコンディションになりましたが、何とか乗り切ることができました」と、安堵の表情を浮かべている。
ソルドのマシンが全焼もトヨタの地元で1-2

厳しいシーズンを送ってきたヒョンデはヌービルがシーズン2勝目。このラリーを最後にチームを去ることになったタナックが2位に入り、第10戦アクロポリス以来となる1-2フィニッシュをトヨタの本拠地ラリージャパンで決めて見せた。
ただ、3人目のワークスドライバーとして参戦したソルドは、SS2のスタートから16.1㎞地点で右リヤから出火。後から走行したMスポーツ・フォードのガス・グリーンスミスも含めて、必死の消化活動を行ったものの、i20 N ラリー1はパワーユニットとホイール、パイプフレームを残して消失してしまった。
茫然自失のソルドは「SSをスタートした段階で、どこからか燃料の匂いがしていました。炎がシートに燃え移って、車内にも煙が充満してきてマシンを止めるしかありませんでした」と、コメント。ヒョンデは原因究明に当たるとしているが、2023年も使用を予定していた貴重なラリー1マシンを、1台失ってしまったことになる。