「レクサスRX対ボルボXC60」ラグジュアリーSUVのプラグイン対決

「価格が近いラグジュアリーSUVのプラグインハイブリッド」 レクサスRXとボルボXC60を比較

全長4.7m強のDセグに属するボルボXC60に対し、4.9m弱のレクサスRXはいわばEセグ。だが「日本でプラグインのSUVを買う」というリアルなクルマ選びで、RXの前にガチンコで立ちはだかるのはXC60なのだ。
全長4.7m強のDセグに属するボルボXC60に対し、4.9m弱のレクサスRXはいわばEセグ。だが「日本でプラグインのSUVを買う」というリアルなクルマ選びで、RXの前にガチンコで立ちはだかるのはXC60なのだ。
レクサスのラグジュアリーSUVであるRXが新型へスイッチした。約95の国と地域で販売される言わずもがなレクサスの主力モデルだ。今回はRXの中間グレード450h+とライバルとなるボルボXC60を比較試乗。日本と北欧が誇るラグジュアリーSUV・PHVモデルの実力を試してきた。

Lexus RX450h+“version L”
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Volvo XC60 Recharge Ultimate T6 AWD plug-in Hybrid

ライバルとしかいいようのないPHV

電気自動車(EV)についてはいまだ賛否両論の日本だが、PHVはジワリと浸透しつつある。国産PHVの草分けである三菱アウトランダーは新型になって人気が増している。また、トヨタもプリウスに加えて、2020年にRAV4 PHVでパワフルなプラグイン4WDパワートレインを世に問うと、それをレクサスでも展開。どれも売れ行きは上々とか。

一方、EVもPHVもすっかり普通(?)になった感のある欧州でも、既に「全機種電動化」を終えたボルボはその急先鋒といっていい。日本でも、車名に「リチャージ」がつくEVもしくはPHVが全体の約半分を占めるまでになっている。

というわけで、両ブランドの最新PHVを揃えてみたら、まさに「好敵手」としかいいようのないクルマ同士であることに驚かされた。セグメントでいえば、ボルボXC60は全長4.7m強のDセグに属するのに対し、4.9m弱のレクサスRXはいわばEセグ。本来競合するのはボルボならXC90ということになる。しかし、「日本でプラグインのSUVを買う」というリアルなクルマ選びで、RXの前にガチンコで立ちはだかるのはXC60なのである。

リヤのモーター出力が大きなXC60

まずは価格だ。RXのPHVモデルである450h+の本体価格は871万円で、取材車のように電動パノラマルーフやマークレビンソン、オプションカラーなどを追加すると合計は900万円台半ばとなる。対してXC60リチャージT6は今回の上級「アルティメイト」グレードだと本体価格は999万円となるが、この状態で電動ガラススライディンクルーフやハーマンカードン製オーディオも標準装備。オプションもいくつか用意されるが、追加の必要性はまるで感じない。

パワートレインの性能も拮抗する。レクサスは2.5リッターエンジンに182PSのフロントモーターと54‌PSのリヤモーターを組み合わせて、システム出力は309PSをうたう。対してボルボXC60の「T6」を称するシステム出力は41‌PS差の355PS。253PSの2.0リッターターボに8速ATを組み合わせて、フロントに71‌PSのスターター兼発電機を、リヤに145PSのモーターを配する。どちらも電動4WDだが、リヤモーターの出力が好対照なのが興味深い。

大きめの電池を積んで、日常使いだけならEVとして使える点も、当然ながら両車で共通するのだが、そのバッテリー電力量やいわゆるEV航続距離までがガチンコなのが面白い。RX450h+が搭載するリチウムイオンは18.1kWhで満充電EV走行距離は最大86km、XC60のそれは18.8kWhで80km……。いよいよ好敵手というほかない。

今回のXC60は23年モデルというべき最新モデル、ドット風グリルやすっきりしたフロントバンパーといったPHV専用デザインは、さらにモダンでスポーティになった印象である。内装も相変わらずクリーンで、シート表皮も最上級のファインナッパレザーを奢る。

同じ価格なら選択したくなるRX

ただ、RXの周囲のボディパネルと溶け合ったようなシームレスグリルは新鮮だし、内装もいかにも手の込んだ仕立てで、あらゆる部分がソフトパッドやレザーで覆われる。このRX450h+はラグジュアリー志向の「バージョンL」のみの設定で、セミアニリンのシート表皮も一部がスエード調になるなど、さすがの肌ざわり。ショールームにXC60とRXを並べて「ほぼ同じ値段です」といわれれば、大半がRXを選ぶだろう。しかも、ボディサイズもRXのほうがひと回り立派なのだ。

しかし、2台をショールームから引っ張り出して、ステアリングを握るとRX圧勝とはいかなくなる。どちらが良い悪いではなく、好き嫌いははっきり分かれるに違いない。

体感的にもパワフルなのは額面どおりにボルボ。電池残量があれば当然モーターだけで走り出すのだが、RXよりあからさまに軽快である。アクセルをさらに踏み込むとターボエンジンが目覚めて、より活性化する。通常はこのようにエンジンが後から追いかけるように作動するが、ドライブモードを「パワー」にすると最初からエンジンが唸りをあげて、そこにモーターが間髪入れずに加勢する。すこぶるパワフルで、ちょっと驚くレスポンシブを披露する。

また、ボルボはリヤモーターが強力なので、積極的に走るほど曲がりも鋭くなる。アシには可変ダンパーも備わるが、基本的に引き締まったスポーティ志向。ただ現行XC60の発売初期にあった揺すられるようなクセももはやなく、いかにも熟成されたフットワークが心地よい。

電気自動車(EV)についてはいまだ賛否両論だが、PHVはジワリと浸透しつつある日本。両車ともラグジュアリーSUVのプラグインハイブリッドとしては実力者である。
電気自動車(EV)についてはいまだ賛否両論だが、PHVはジワリと浸透しつつある日本。両車ともラグジュアリーSUVのプラグインハイブリッドとしては実力者である。

そんなXC60と比較すると、RXはいかにも「高級車」という感じである。それは内外装の仕立てだけでなく、走りでもラグジュアリー感が強い。走り出しからXC60よりすこぶる静かで、圧倒的に重厚だ。「XC60より100kgくらい重い?」と思ったら、さにあらず。実際の車重差は20kgしかなくRXのほうが軽量。RXのボディサイズも含めて考えると、レクサスの軽量設計技術に改めて感心する。

また、パワートレインのモーター出力からも分かるように、RXのパワートレインはフロント優先。アクセルを積極的に踏み込んで旋回をしかけても、FF的なゆったりと安定した身のこなしに終始する。

こうして超重厚ラグジュアリーテイストのRXから見ると、パワフルで積極的に曲がるXC60はスポーツカーと錯覚しそうになる。スペックシートに記される数字は拮抗しているのに、乗り味は見事なまでに好対照。やっぱりクルマは面白い。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/佐藤亮太(Ryota SATO)
MAGAZINE/GENROQ 2023年4月号

SPECIFICATIONS

レクサスRX450h+“バージョンL”

ボディサイズ:全長4890 全幅1920 全高1700mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:2160kg
エンジン:直列4気筒DOHC
総排気量:2487cc
最高出力:136kW(185PS)/6000rpm
最大トルク:228Nm(23.2kgm)/3600-3700rpm
モーター最高出力:前134kW(182PS) 後40kW(54PS)
モーター最大トルク:前270Nm(27.5kgm) 後121Nm(12.3kgm)
トランスミッション:電気式無段変速機
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
燃料消費率(WLTCモード):18.8km/L
車両本体価格:871万円

ボルボXC60リチャージ・アルティメイトT6 AWDプラグインハイブリッド

ボディサイズ:全長4710 全幅1915 全高1660mm
ホイールベース:2865mm
車両重量:2180kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1968cc
最高出力:186kW(253PS)/5500rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/2500-5000rpm
モーター最高出力:前52kW(71PS)/3000-4500rpm 後107kW(145PS)/3280-15900rpm
モーター最大トルク:前165Nm(16.8kgm)/0-3000rpm 後309Nm(31.5kgm)/0-3280rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
燃料消費率(WLTCモード):14.3km/L
車両本体価格:999万円

【問い合わせ】
レクサスインフォメーションデスク
TEL 0800-500-5577
https://www.lexus.jp

ボルボお客様相談室
TEL 0120-922-662
https://www.volvocars.com

トップグレードの「RX500h」、プラグインハイブリッドの「RX450h+」、エントリーグレードの「RX350」の3グレードがラインナップされた。

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