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Rolls-Royce Phantom Syntopia
アムステルダムのアトリエで制作

オランダの革新的なファッションデザイナーでありオートクチュリエールでもある、イリス・ヴァン・ヘルぺン(Iris van Herpen)とロールス・ロイスは、イノベーション、クラフトマンシップ、ラグジュアリーの限界を押し広げるマスターピース「ファントム シントピア」を作り上げた。
ロールス・ロイスのグッドウッド本社ファクトリー、そしてイリス・ヴァン・ヘルペンのアムステルダム・アトリエにおいて、彼女のチームとロールス・ロイスのスペシャリストが手作業で仕上げた、1台限りのアートワークとなる。インテリアには、水の流れを表現した立体的なテキスタイルを採用。ロールス・ロイス史上最も複雑な形状を持つ「ウィービング・ウォーター・スターライト・ヘッドライナー」が導入された。
ファントム シントピアは、5月に行われるプライベートコレクションに登場する予定。ロールス・ロイスは、一点物のオーダーとして、この作品を決して複製しないことを約束している。ロールス・ロイス・モーター・カーズのトルステン・ミュラー・エトヴェシュCEOは、イリス・ヴァン・ヘルぺンとのコラボレーションについて次のようにコメントした。
「国際的なデザイナーでありオートクチュリエールのイリス・ヴァン・ヘルペンとコラボレーションした『ファントム シントピア』は、これまでで最も野心的で、世界に1点しか存在しない高度なビスポーク仕様のファントムです。この美しい芸術作品はロールス・ロイスが真のラグジュアリーメゾンであることを明確に示しています」
「ロールス・ロイスは20年にわたり、世界で最も有名なデザインハウス、アーティスト、時計職人、宝石職人とコラボレーションしてきました。ファントム シントピアは、このクルマがビスポークのベースとして、最高のキャンバスだと証明しています」
ビスポークとオートクチュールの共通項

ファントム シントピアは、ファントム エクステンデッドをベースに、ロールス・ロイスのビスポーク・コレクティブがこれまでに手がけた中で最も技術的に複雑な工程を経て完成した。イリス・ヴァン・ヘルペンと共同プロジェクトは、構想から完成まで実に4年の歳月を要しており、間もなくコレクターのプライベートコレクションへと加わることになる。
アイデアの源泉となったのは、イリス・ヴァン・ヘルペンが2018年に発表したコレクション。このコレクションは、自然界に見られるパターンや形状から着想した「バイオミミクリー(bio-mimicry:生物模倣)」に基づいてデザインされていた。
動きによって命を吹き込まれた高度に彫刻的なドレスで構成されたコレクションと同様、ファントム シントピアは「ウィービング・ウォーター(Weaving Water:水を編む)」というテーマを表現している。イリス・ヴァン・ヘルぺンは、ファントム シントピアについて、次のように説明する。
「ファントム シントピアでは『水を編む』というコンセプトからインスピレーションを得ています。常に動いている感覚を、ファントムというクルマで表現したのです。自然の力に圧倒されるような、最先端体験を生み出したいと考えました。ファントムの力強い動きが、インテリアの移り変わる立体的な波に織り込まれ、自然界のクリエイティビティを体現しています」
「今回、ロールス・ロイスのビスポーク・コレクティブと共同作業を行うなかで、ロールス・ロイスの世界がオートクチュールによく似ていることを知りました。私が作る服も、ロールス・ロイスと同じように、お客様ひとりひとりのサイズに合わせてオーダーメイドされた一点ものなのです」
「ロールス・ロイスのクライアントが、デザインから製造までグッドウッドに招待されるのと同じように、私のクライアントもフィッティングのためにアムステルダムのアトリエにやってきます。このコラボレーションは、あらゆる面で自然な共生と言えるものでした」
パープルやゴールドに変化するブラック

ファントム シントピアのエクステリアを完成させるため、ロールス・ロイスのビスポーク・コレクティブは、ワンオフで「リキッド・ノワール(Liquid Noir)」塗料を開発。この美しいブラックパープルは、太陽光に照らされると虹色に輝き、角度を変えるとパープル、ブルー、マゼンタ、ゴールドの下地が現れる。
この効果を得るため、最も濃いソリッドブラックの塗料に、カラー変化特性を持つ鏡面顔料を配合した仕上げが施されている。繊細かつエレガントな輝きを加えるため、チームはクリアコートに顔料を塗布する新技術を開発した。この開発プロセスには数ヵ月を要し、テストと検証だけで3000時間を超えたという。
ボンネットには、インテリアのモチーフである「ウィービング・ウォーター」が描かれているが、こちらは仕上げ工程において、塗料を慎重に再分散させることによって生み出されている。
ヘッドライナーで表現された「ウィービング・ウォーター」

インテリアの一部は、ロールス・ロイスのグッドウッド本社ファクトリーにおいて、ロールス・ロイスの職人がイリス・ヴァン・ヘルペンのチームメンバーとともに手作業で製作。その他の部分は、イリス・ヴァン・ヘルペンのアムステルダム・アトリエで、オートクチュールの衣服と同時に制作された。
ラグジュアリーなコーチドアを開けると、「ウィービング・ウォーター・スターライト・ヘッドライナー」が目に飛び込んでくる。この美しいヘッドライナーの制作には、これまでで最も困難な作業を伴うことになった。
1000枚以上のリアルレザーの中から選ばれた、1枚の完璧なレザーを使用。左右対称の正確なカットが施され、その下にはイリス・ヴァン・ヘルペンの「エンボス・サウンズ」コレクションで使用されたナイロン生地を織ったシルバーの「リキッドメタル」テクスチャーが仕込まれ、ヘッドライナーに美しい立体感を与えている。
仕上げとして、ガラス・オーガンジーで作られた162枚の繊細な花びらが施された。これはイリス・ヴァン・ヘルペンのクチュールチームがグッドウッドまで足を運び、約300時間をかけて完成させている。ここに、187個の光ファイバーで作られた星を手作業で配置。後方から前方に向かって照らされ、星々の動きを表現している。ヘッドライナーだけでも、約700時間の総作業時間が費やされたという。
フロントシートは、光沢のあるマジックグレー・レザー、リヤシートにはシルク混の専用ファブリックを採用。夜の水面に映る光のパターンをイメージした独特の模様を表現している。また、高級家具に用いられるタフティング技法をモチーフにした「ウィービング・ウォーター」キルティングも施された。