輸入車好きでもちょっと気になる日本車「トヨタGRMNヤリス」に試乗

GRMNヤリスとGRヤリスを比較試乗「911だったらGT2 RSとターボSくらい違う!」

500台のみという、ただでさえレアなGRMNヤリスだが、中でも50台限定の「マットスティールグレー」3台が千葉までツーリングするというので広報車の赤いGRヤリスで追っかけた。
500台のみという、ただでさえレアなGRMNヤリスだが、中でも50台限定の「マットスティールグレー」3台が千葉までツーリングするというので広報車の赤いGRヤリスで追っかけた。
クルマ好きならちょっと気になる「トヨタ GRヤリス」だが、それをベースに仕上げられた「GRMNヤリス」はもっと気になるだろう。メーカー製チューンドカーとはいかなる世界か? わずか50台限定の「マットスティールグレー」を試乗して体感した。

TOYOTA GRMN YARIS

マットカラーの凄み

昨夏、発表されるや限定数500台に対しておよそ25倍もの申し込みが殺到し、抽選で購入権を決定したGRMNヤリス。なかでもさらにさらに狭き門、50台限定の「マットスティールグレー」はマニア垂涎の一台だ。

そんなレアモデルが筆者のクルマ仲間内に4台もいると知ったのはつい最近のこと。うち3台が千葉までツーリングに出かけるというので筆者も広報車の赤いGRヤリスで追っかけてみた。

見た目の獰猛さはベースのGRヤリスでもすでに十分、なんだけど、GRMNは流石に輪をかけて凄い、というか“いかつい”。マットカラーは尚さら。艶ありカーボンパーツがさらに凄みを強調している。これでカーボンパーツを艶消しにしていたらステルスみたいでもっとかっこよかったかも、と、それはさておき。GRMNのオーナーたちも“ノーマル”GRヤリスに興味津々(乗ったことがあるという人はひとり)だったので、集合地点からちょっと運転を代わってもらった。

GT2RSとターボSくらい違う

メタルクラッチを慎重かつ大胆につなぎ、いざ発進。と、パーキングの駐車スポットから曲がり出る時に盛大なガチャ音がして、いきなり人のクルマを壊してしまったかと驚く。周りの人も「あのクルマ壊れている」と言う顔でこちらを見つめている。ああ、そうだった、機械式LSDだったな、と胸を撫で下ろした。

走行車線に出ながら2速へシフトアップ。さらに3速、4速へ。そこまで乗ってきたGRとは変速の気持ちよさが段違いだ。ギア比もそうだし、クラッチミートの瞬間さえ心地いい。そしてトルクアップが効いているのだろう、シフトアップのたびドカーンドカーンと強烈にプッシュされる。出力スペックはGRと変わらないとはいえ、感覚的には2割増しの速さ。こりゃそうとうツーカイな乗り物だ。

そして何より違っていたのが、乗り手が体感する頑丈さだった。分厚い板を丸めてドライバーを包み込んだかのような感覚が常にあって、クルマもろとも弾丸になったかのようだ。そしてアシはまるで生き物のように自由に、けれども硬派な節度を保って動く。GRMNに比べればGRの乗り心地はずっとラグジュアリー。ポルシェ911で喩えるなら、GT2 RSとターボSくらい違っている。

ドライバーを猿にするクルマ

そのあまりの違いに驚いた筆者は日を改めて別のオーナーからマットスティールグレーのGRMNヤリスを借り受け、山坂道で遊んでみた。

再びシフトアップの妙味を楽しみながら、ああ、これはドライバーを猿にしてしまうクルマだと独りごちる。全てが恐ろしく機械的だという点で、ロードスターのようにクルマとの一体感を慈しみながら思いのままに走らせる、という味わいとはまるで対極にあった。けれども乗り手を虜にさせてやまないという点では同じ。これも喩えるならば、高性能なモビルスーツを着て生身の人間と格闘し、当然ながら得た圧倒的な勝利感、のようなものだろうか。とにかく公道において、GRMNヤリスほどクルマ操縦の楽しみを機械的にものすごく高いレベルで味わえるロードカーは他にないかも。

と、そこで今更ながらふと思い直す。これはコンペティションを想定して作り上げられたマシンであった、と。後ろを振り返ればリアシートはなく、でっかいウィングは猛々しい。サーキットで走ればもっと楽しいに違いないことは、公道でのチョイ乗りでも十分に感じることができた。

乗らずに手放すのは引退宣言に等しい

オーバーフェンダーがタダならぬ雰囲気を醸すGRMNヤリス。大型のリヤスポイラーも注目ポイントだ。

限定500台。レアモデルゆえ大事に取っておきたい気持ちもわかる。けれどもこの手のクルマを乗って楽しまないというのであれば、否、買ったのにその実力の片鱗を全く知らずに手放すというのであれば、それはもうクルマ好きの引退宣言に等しい。ちょっと舐めたホールケーキが知らない間になくなってしまうような童心で、開発者の心意気を満喫してもらいたいもの。今回、取材に協力してくれたオーナーたちのように、たとえそれがさらに貴重な50台限定のマットカラーモデルであっても。

乗らないならワタシが代わりに乗ってあげますわよ。それに新車バブルはそろそろ崩壊?

REPORT/西川淳(Jun NISHIKAWA)
PHOTO/悠佑(SHA-SHIN.jp)、吉見幸夫(Yukio YOSHIMI)

SPECIFICATIONS

トヨタGRMNヤリス サーキットパッケージ

ボディサイズ:全長4030 全幅1815 全高1475mm
ホイールベース:2560mm
車両重量:1260kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:1618cc
最高出力:200kW(272PS)/6500rpm
最大トルク:390Nm(39.8kgm)/3200-4000rpm
トランスミッション:6速MT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ストラット 後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:235/40R18
車両本体価格:846万7000円

優勝を期待されたトヨタ・ワークスの3人が相次いでパンクに見舞われるなか、地元の勝田貴元がトヨタ勢最上位となる3位表彰台を獲得した。

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