【オートモビルカウンシル2023】自動車趣味人の祭典の私的見所

自動車趣味人のお楽しみ「オートモビルカウンシル2023」で見つけた「心揺さぶられたクルマ3選」

ポルシェジャパンのブースに展示された993カレラ。前期型、ミッドナイトブルー、黒内装、リアワイパー付きでウインカーの色までフルノーマルは筆者がかつて所有していた993と全く同じ外観だという。
ポルシェジャパンのブースに展示された993カレラ。前期型、ミッドナイトブルー、黒内装、リアワイパー付きでウインカーの色までフルノーマルは筆者がかつて所有していた993と全く同じ外観だという。
2023年4月14〜16日、千葉・幕張で開催された「オートモビルカウンシル」。2016年以来開催される、国内外の自動車メーカーやヘリテージカーショップが出展するエンスージアスト向けイベントで、自動車趣味人が心動かされたクルマとは?

AUTOMOBILE COUNCIL

年齢層の高い自動車コニサー向けイベント

4月14~16日に幕張メッセで開催されたオートモビルカウンシルに行ってきた。オートモビルカウンシルは2016年に始まったイベントで、今回が8回目となる。自動車を「文化」という視点からとらえ、過去から現在に至る自動車趣味人の眼鏡にかなう車を集めて、また音楽や美術も取り混ぜながら楽しもうという、自動車コニサー向けのイベントである。来場者もそのような年齢層の高い趣味人っぽい人がほとんどである。

私も第一回目から毎回訪れており、今では日本で行われている自動車イベントの中でも最もお気に入りのイベントとなっている。今回も様々なカテゴリーの魅力的な車が集められたが(なかでもフェラーリの珠玉の車達が集められたコーナーは壮観だった)、私が個人的に惹かれた車をご紹介したい。

まずは入場してすぐ目が釘付けになった車は、ポルシェジャパンのブースに展示されていた993カレラである。なぜかというと私が2011年から2014年の間所有していた993と全く同じ外観(前期型、ミッドナイトブルー、黒内装、リアワイパー付きでウインカーの色までフルノーマル)だったからだ。懐かしさがこみあげてきてちょっと感動してしまったのだ(但し展示車はATで私の車はMTだった)。

乗ることを主に考えると魅力的な914/6

いろいろ見回って、私が最も所有してみたいと思ったクルマは何か。素晴らしいフェラーリや911などがある中で、所有欲をかき立てられたのは大阪のジロン自動車が出展していたポルシェ914/6である。

私は子供の頃からポルシェに憧れ、ついには空冷911を手に入れたわけだが、セミトレ時代の911の操縦性には最後まで馴染めなかった(993のあと1989年式のカレラ3.2に乗り換えたのだが、要するに乗りこなせなかった、ということだ)。

しかし914/6ならミッドシップだし、そもそも入門用として設定された車種なので、気楽にウェーバーキャブの空冷フラットシックスを味わえる上、オープンエアも楽しめる。眺める楽しみは希薄だし、ステータス性は高くないが、乗ることを主に考えた場合非常に魅力的なモデルに思えた。2.0リッターの911Tと同じ110PSならパワーもほどほどで公道でも十分楽しめるだろう。

見た目はノーマルで走りを一段アップしたNAロードスター

しかし実際に購入を検討するかと言えば否である。この914/6に限らず、最近のヘリテージカーの値上がりはすさまじく、10年ほど前までの価格を知っている身としてはとても手を出せないのだ。私が所有していた993など、12年前の購入時は現在の相場の4分の1以下で買えたのだから。そういう意味ではほとんどの車は購入対象として考えられないのだが、1台、本当に買っても良いかもと思える車があった。

それは、広島のセイコー自動車が出展していた、ユーノス・ロードスターである。価格はなんと500万円。新車当時170万円から買えたユーノス・ロードスターとしては破格に高い金額である。しかし今NAロードスターはある程度状態の良いものを買おうとすると200万円くらいは考える必要があるし、それをマツダでレストアをフルに行うと485万円もかかるのだ。それを基準とすると高すぎるとは言えない金額だ。

マツダはボディコンディションの良いフルノーマル車両でないと受け付けてくれず、完成品は完全なノーマル仕様である。一方セイコー自動車のアプローチはマツダとは異なり、新車時を復元する方向ではない。このオートモビルカウンシルに展示されていた車両のベースは程度極上車ではなく、フロアフレームに歪みがあり、錆もあった個体だ。それを完全なドンガラにしてから徹底的に修正している。そして最終的な仕上げの方向性も新車当時のノーマルに戻すのではなく、見た目はノーマルながら改良を加えて走りのレベルをより高いものにするというコンセプトだ。

このあたりは非常に共感できるもので、それで500万円というのはリーズナブルで、購入意欲をかなり刺激されたというわけだ。またクラシックレッドというボディカラーも、新車当時をよく知る身としては非常に魅力的だ。この車なら実際に乗って楽しむには理想的な1台と思えた。

自動車に対する愛と歴史に対する敬意

今回が8回目となるオートモビルカウンシル。自動車を「文化」という視点からとらえ、過去から現在に至る自動車趣味人の眼鏡にかなう車を集めて、また音楽や美術も取り混ぜながら楽しもうという、自動車コニサー向けのイベントだ。
今回が8回目となるオートモビルカウンシル。自動車を「文化」という視点からとらえ、過去から現在に至る自動車趣味人の眼鏡にかなう車を集めて、また音楽や美術も取り混ぜながら楽しもうという、自動車コニサー向けのイベントだ。

現在私はNDロードスターを愛用しているが、最新のNDと最初のNAを併有して楽しむというのは非常に惹かれるアイデアである。しかしながら現在の自宅にはシャッター付きガレージが2台分しかなく、このNAロードスターを収納する場所がない。現保有の2台を手放す気はまったくないからだ。今年の初めまでは近所の実家にシャッター付きガレージがありアバルト595を所有していたが、そのガレージが無くなることになり手放したのだ。今でもそのガレージがあれば購入した(あるいはセイコー自動車にレストア車を発注した)可能性はかなりあったと思う。

オートモビル・カウンシルは戦前の名車や億単位の値が付く希少なモデルからごく庶民的なモデルまで幅広く展示されるが、そこにあるのは自動車に対する愛と、その歴史に対する敬意である。実際に出展車を購入することはますます難しくなっていくかもしれないが、このイベントが末長く開催し続けられることを切に願うばかりである。

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実際に購入したアバルト595。

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著者プロフィール

山崎 明 近影

山崎 明

1960年、東京・新橋生まれ。1984年慶應義塾大学経済学部卒業、同年電通入社。1989年スイスIMD MBA修了。…