目次
モンツァSP1やSP2などIconaモデルも一堂に
毎年8月にアメリカ西海岸で行われる自動車の祭典、モントレーカーウィーク。その目玉は、なんといってもゴルフ場をメインステージにしたペブルビーチ・コンクールデレガンスだ。世界中から錚々たる名車の数々が集う美の競演は毎年多くのエンスージアストの注目の的となっており、とりわけ近年は新型車のお披露目の場として選ぶ自動車メーカーも多い。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大により中止を余儀なくされたペブルビーチ。2021年は2年ぶりの開催となり、各メーカーもこぞって参加を表明した。なかでもフェラーリは最新作、稀少モデルの数々をごっそり携えて乗り込む意気込みを見せた。また、今年のコンクール・デレガンスの審査員には、フェラーリのチーフデザイナーであるフラヴィオ・マンツォーニも名を連ねていた。
812 コンペティツィオーネの実車が登場
ペブルビーチにおけるフェラーリの拠点、「カーザ フェラーリ」の隣りには、最新のモデルラインナップがずらり勢揃い。ポルトフィーノMをはじめ、ローマ、SF90 ストラダーレ、F8 スパイダーに並び、2021年5月に発表されたばかりの812 コンペティツィオーネの姿も。812 スーパーファストをベースにした最新スペチアーレの実車を目にできるのは多くの来場者にとって初めての機会であり、かなりの注目を集めたという。
「21世紀の技術と1950年代のレーシングカーの美しさ」を融合させる新シリーズ「Icona(Icon=アイコン、象徴)」の第一弾として2018年に登場したモンツァ SP1及びSP2の“集団”が揃ったのもペブルビーチならでは。2シーターのSP2とシングルシーターのSP1、両方合わせて限定500台のみという貴重なモデルながら、10台を優に超えるSP1とSP2が一堂に会した。
最新のミッドシップFR「296 GTB」も!
また、最もフレッシュな跳ね馬、296 GTBも出展。2021年6月に世界初公開した2シーターミッドシップベルリネッタは、新開発のV型6気筒エンジンにプラグインハイブリッドを組み合わせた注目のモデルだ。
296 GTBは、フェラーリの名前を冠したロードカーとしては初めて、シリンダーバンク角が120度のV型6気筒ターボエンジンを搭載(ディーノ 206/246シリーズは“Dino”のバッジのみだった)する。内製のV6ユニットはターボチャージャーをVバンク間に搭載するなど、フェラーリとしては初めての試みを採り入れた意欲作である。
コンパクトな設計や優れた効率、シャープなレスポンスを重視した一方で、フェラーリらしいこだわりとしてエキゾーストノートにも注力。開発中に「ピッコロV12(ミニV12)」の愛称がつけられたというエピソードが象徴するように、V6ユニットながら自然吸気の12気筒を彷彿させる高らかなサウンドを実現したという。
スタイリングの“祖”である250 LMと競演
296 GTBは、リヤのみに122kWを発生する電気モーターを1基搭載する後輪駆動モデル。V6ユニットと連動したときのシステム最高出力は830cvに達する。さらに「eDriveモード」も備えており、都心部や住宅街のようなガソリンを使いたくないエリアでは電気のみで走行できる(最長航続距離はおよそ25km)。
潔いまでにシンプル、かつ塊感のあるタイトなスタイリングは、機能美が際立っていた1960年代のフェラーリに着想を得たもの。特に、1963年にデビューした250 LMの彫刻的なボディやBピラーのデザイン、シンプルなフェンダー、カムテールはデザイナーに大きなヒントを与えているという。ちなみに今回のペブルビーチには、296 GTBの原点ともいえる1964年製の250 LMも共に並べられていた。
電動化時代への過渡期を迎えた自動車業界にあって、フェラーリも新しい一歩を踏みだそうとしており、今回のペブルビーチでもその意気込みを伝える役割を296 GTBに与えた。一方で、煌びやかなクラシックカーの円舞では、映画監督のロベルト・ロッセリーニが所有していたことでも知られる1954年製375MMもエレガントな姿態を披露。250 GTや375アメリカ、ディーノ 206 GTといったフェラーリの宝石ともいえるモデルも多数集結した。1950年に始まり、いまでは世界で最もプレミアム性の高い自動車コンクールとなったペブルビーチ・コンクールデレガンスは、今回が記念すべき「第70回」。変わりゆく自動車の景色と、変わらない自動車の景色。今年の18番ホールにはそのふたつが共存していた。