【ル・マン24時間】【WEC】まもなく始まるル・マン24時間の見どころを解説

100周年を迎えるル・マン24時間レース「注目ポイントとトピックをかいつまんで説明」

抜けるような真っ青な空と白い雲のコントラストが美しい6月の暑いフランスの中部のル・マン市郊外にあるサルトサーキットと公道を繋いだ全長約13㎞のコースで開催されるル・マン24時間耐久レースのレースウィークがはじまった。欧州在住ジャーナリストが直前の見どころをリポートする。

レースウィークがはじまる!

100周年記念を迎えるこの特別な大会をこの目で見ようというファンで、チケットはどのカテゴリも早々に売り切れている。レースウィークがはじまる一週間以上も前から、山盛りの荷物を積んだファンのクルマが、いちはやくキャンプ場のよい場所を取ろうと陸路でル・マンへ向かう高速道路で遭遇し、気分が浮き立つ。

地元のル・マン市民やフランス国民はもちろんの事、世界各国からこの小さな町へこのレースを観るだけのために数多くのファンが訪れるとあり、普段はひっそりしているル・マンの街中が、このレースウィークにはどこもごった返す大盛況ぶりだ。

ル・マンの町を走るトラムやフランスの高速列車TGVが停車するル・マン駅も、世界中のゲストを迎えるべく、ル・マン24時間レース一色に彩られている。

盛り上がるハイパーカークラス

ル・マンの黄金期を担ったLMP1クラスの終焉を経て、アウディ、ポルシェなどが次々と撤退し、トップカテゴリのクラスはほぼトヨタの独占状態となり、ひっそりしていたのだが、ハイパーカークラスが新設されたことで相次いで自動車メーカーの参入。その第一期とも言える今年は、昨年の後半から前倒しで参戦するプジョーに加え、フェラーリ、ポルシェ、キャディラックが新規に参戦している。

また、来年にはBMW、ランボルギーニ、現在はLMP2クラスに参戦するアルピーヌも新たに加わることもあって、メーカー同士の熱い戦いが激化している。日本を代表するトヨタの独勝状態がこのままキープできるのか、気になるところだ。

ハイパーカークラスには、日本を代表する小林可夢偉や平川亮らが乗り込む2台のトヨタGRを筆頭に、F1と同じく真っ赤なボディに黄色いアクセントが美しい2台のフェラーリ499Pには元F1ドライバーのアントニオ・ジョヴィナッツィら6名が乗り込む。

スポーツカーの誕生から75周年を迎えるポルシェは、歴代のル・マンで活躍したスポーツカーのカラーリングを集結したカラフルなデザインを採用し、ポルシェペンスキーレーシングの3台にはこのカラフルなカラーリングを採用し、その1台は記念の75番を掲げて走るなど、計16台が100周年記念大会の総合優勝を懸けて24時間レースへ挑む。

NASCARのカマロも参戦

来年からLMP2からハイパーカークラスへスイッチするアルピーヌ、イタリアのプレマレーシングはランボルギーニ、ベルギーWRTはBMWのファクトリーチームのハイパーカークラスを担当するとあり、レースフォーメーションを習得するための参戦など、こちらも強豪揃いのLMP2クラスは20台がエントリーする。

また21台が参戦するLMGTE AMクラスへは走る実業家たちのクラスと言っても過言ではないだろうか。国内外のレースで活躍するジェントルマンドライバーのCarGuyの木村武史はフェラーリ488GTE EVOを、また同じくフェラーリのポノスレーシングからはコッツォリーノ・ケイ、辻子依旦、横溝直樹の3名がタッグを組む他、アストン・マーティン ヴァンテージGTEのDステーションには星野敏や藤井誠暢が乗り込むなど、プロアマ含め、ハイパーカークラスとLMGTEクラスに計8名の日本人ドライバーが出場をする。

他にもイノベーションクラスからは、元F1ドライバーのジェンソン・バトンらがアメリカのNASCARシリーズで活躍するシボレー カマロZL1で特別出場を果たすなど、100周年記念大会は話題に欠くことはない。

金曜日にはパレードも

レース前日の金曜日には、全ドライバーがヒストリックカーに乗ってル・マン市内をパレードするのも恒例行事で、各チームが工夫したノベルティなどが配布されるとあり、この日は街の人口密度が頂点になる。パレードのルートには一番前の席を取ろうと並ぶ人々で歩くのもままならない状態だ。

パレード沿線の酒場やレストランでキリリと冷えたシャンパンやビールをたしなむ優雅なひと時は、大人のモーターファンにとっての愉しみ方のひとつとして魅力的だ。

サルトサーキットの上空に描かれるトリコロールとリヒャルト・シュトラウスの奏でる『ツァラトゥストラはこう語りき』でスタートを切る記念すべき100周年の世紀の瞬間を、共に祝い、共に声援を贈りたい。100年目の王者に君臨するのは、果たして一体誰なのだろうか──。

ル・マン24時間初挑戦となるフェラーリ 499P 50号車がトップタイムを記録。フェラーリは1-2体制で、ハイパーポールへの進出を決めた。

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