自動車メーカーも注力する“デザインが主役”の1週間

ランボルギーニの新型カウンタックも登場! 小川フミオが復活したミラノデザインウィークを解説

2021年のミラノデザインウィーク。ランボルギーニブース
2021年のミラノデザインウィーク。ランボルギーニブース
コロナ禍で2020年の開催を見送った「ミラノデザインウィーク」が2年ぶりに帰ってきた。国際家具見本市として始まった同イベントだが、今は各自動車メーカーが趣向をこらしてユニークな展示ブースや発表コンテンツを用意する舞台ともなっている。6日間にわたり行われる魅力的なデザインの祭典、今年はどんなハイライトが待っていたのか。小川フミオがリポートする。

街がデザインで賑わう6日間

2021年のミラノデザインウィーク。Carlo Ratti Associatiのインスタレーション
建築デザインスタジオCarlo Ratti Associatiは、イタリアの半国有石油・ガス会社Eniと組んで、「Natural Capital」なるインスタレーションで、ブレラ植物園を舞台にどの植物がどれだけCO2を吸収するかを見せてくれた。

デザインの祭典と言われ、例年イタリア・ミラノで開催されてきた「ミラノデザインウィーク」。自動車会社も力を入れていて、クルマ好きにも毎回サプライズが用意されることで知られている。2021年は、9月5日から10日にかけて開かれ、ランボルギーニがカウンタック LPI 800-4を欧州でお披露目するなど、ニュースがいろいろある。

2021年のミラノデザインウィーク。VOUWの作品
アムステルダムで活躍するVOUWは、技術を、人間と製品のコミュニケーションのために使うことで知られており、今回の「Bloomlight」は通行人が近づくと街灯がお辞儀するユーモラスで心温まるアイディアを提案。

1961年にミラノサローネ国際家具見本市としてスタートし、やがて開催期間中に新作家具の展示会場とは別にミラノ市内各所でアートからプロダクト、それにその場限りの展示(インスタレーション)にいたるまで、さまざまな催しが開催されるように。デザイン好きにはお祭りのような楽しい6日間として世界的認知を得るまでに成長した。

レクサスやMINI、ヒョンデも常連

2021年のミラノデザインウィーク。Dior Maisonの作品
クリスチャンディオールのホームコレクションDior Maisonは、ルイ16世様式の椅子をモチーフに17人のデザイナーに依頼した「Medallion Chair」を展示。

さきに触れたように、世界各国の自動車メーカーもここでの展示には力を入れてきている。加えて、ルイ・ヴィトン、エルメス、フェンディといったブランドも建築家と組んだり家具を発表したりと、どこも見応えのあるインスタレーションを見せてきた。

このデザインウィークで、パフュームの映像製作などで知られる日本のライゾマティクスなど、内外のすぐれたアーティストやシェフとコラボレーションを展開してきたのは、レクサス。こちらは日本でもたびたび紹介されてきたので、ご存知のかたも多いのでは。

2021年のミラノデザインウィーク。Iza Rutkowskaの作品
広場には往々にして征服者や兵士の騎馬像があることに疑問を呈したポーランド人アーティスト、イザ・ルトコフスカ(Iza Rutkowska)が持ちこんだ大きなオモチャのウマを思わせる彫刻作品。

気鋭の建築家を起用して毎回驚くインスタレーションを見せてくれるアウディ、環境などをテーマにユーモラスでありながら深い考察を促す展示をするMINI、それにデザインウィークを積極的に後援するヒョンデといったメーカーは、この催しの常連だった。

アウディはピュアEVになった次世代A6を展示

2021年のミラノデザインウィーク。アウディブース
アウディはインテリアブランド「moooi(モーイ)」の設立者でもあるオランダのマルセル・ワンダースと組んでA6 e-tronプロトタイプを展示。

ところが、2020年はコロナ禍でデザインウィークは中止。2021年は例年4月だった開催時期を9月に移して、かつ規模も縮小。名称も「スーパーサローネ」に変更というイレギュラーぶりが話題を呼んだ。家具見本市は引き続き中止となったので、余計スーパーサローネに注目が集まった。

アウディは、21年もしっかり“見せて”くれた。「デザインはアウディにとって最重要項目」(プレスリリースより)とするだけあって、コロナ禍のなか参加者激減の2021年でもA6 e-tronコンセプトを展示。しかも舞台装置をデザインしたのは、家具デザイン界で常に話題を呼ぶ作品を発表するオランダのマルセル・ワンダースと、注目のインスタレーションだった。

2021年のミラノデザインウィーク。アウディ
「Audi City Lab(アウディ・シティ・ラボ)」(Via della Spiga, 26)を拠点にアウディはさまざまなモデルを展示(ショーケースのなかにはスポーツクワトロが見える)。

A6 e-tronコンセプトは(読者のかたならご存知のように)2021年4月の上海モーターショーで発表された近未来のプレミアム ピュアEVのコンセプトモデル。灯火類の新技術が特徴のひとつで、右左折の合図をはじめさまざまなメッセージを路面に投影する、あたらしいかたちのコミュニケーション提案が注目された。

アウディの舞台デザインはマルセル・ワンダースが担当

2021年のミラノデザインウィーク。アウディブース
アウディ A6 e-tronプロトタイプはさまざまなライティング技術を特徴としているだけに、展示も照明に凝っている。

ミラノの高級ブティック街としても知られるスピガ通り26番地に、前出マルセル・ワンダースがデザインを担当した「アウディ・シティ・ラボ」なるショールームを構えるアウディ。そこにポリフォーム(フロンガスを使用しない独立気泡構造をもったバブルシート)による舞台装置が設定され、A6 e-tronプロトタイプが置かれた。

「Enlightening The Future」(未来を照らす、の意か)と題されたこのインスタレーションは、例年よりは残念ながら小ぶり。たとえば2018年のミラノデザインウィークでは、北京のマ・ヤンソン(馬岩松)ひきいるMADアーキテクツとともに、16世紀にできたカトリック神学校の庭に人工プールをこしらえ中央に舞台を設置。コンセプトモデル「AI:CON」などを展示したのは忘れられない。

ランボルギーニは新型カウンタックをお披露目

2021年のミラノデザインウィーク。ランボルギーニブース
大きなインスタレーションの会場用地が並ぶ、以前から自動車メーカーに人気のトルトーナ地区。ここでランボルギーニはカウンタック LPI 800-4を欧州初お披露目した。

ランボルギーニは例年、サローネと通称される家具の見本市で、同ブランドの家具の展示に力を入れてきた。プレスデイに足を運ぶと、たいていステファノ・ドメニカリCEO(当時。現・スクーデリアフェラーリ・フォーミュラワンのプリンシパル)がいて、「今回の家具どうかな」と古いウッドを活かしたカウチなどを紹介してくれたものだった。

2021年のミラノデザインウィーク。ランボルギーニブース
「ダイナミックボックス」に入れたランボルギーニ カウンタック LPI 800-4がアンベールされる瞬間。

2021年はがらりと方向転換したランボルギーニ。これまでヒョンデやレクサスがインスタレーションの場に選んできたミラノ市内トルトーナ地区(駅でいうとポルタ・ジェノヴァ近く)のスーパースタジオ・ピューで、カウンタック LPI 800-4を展示した。展示は、建築デザインスタジオのカルロ・ラティ・アソチアティに依頼。

ランボルギーニをイメージしたテーブルランプも

2021年のミラノデザインウィーク。ランボルギーニブース
ランボルギーニが設置した会場には往年のオリジナル・カウンタックも置かれた。

オリジナル・カウンタックの発表から50周年を記念して112台限定で生産される予定のカウンタック LPI 800-4。最初のお披露目は、8月に米西海岸の高級ゴルフリゾート、ザ・クェイル・ロッジを舞台に開催された「ザ・クェイル、モータースポーツギャザリング」だった。欧州でのデビューが今回のミラノデザインウィークとなる。

スーパースタジオ・ピューでは、825平米の会場を作りあげ、3台が「ダイナミックボックス」と名づけられたブースに置かれた。ショーが始まると照明が変化し、ビデオが始まりモーショングラフィクスとサウンドスケープが雰囲気を盛り立てるなか、サウンドボックスを覆っていたベールがはがされ、新世代のカウンタックが姿を見せるという仕掛けだ。

2021年のミラノデザインウィーク。ランボルギーニとiGuzziniのテーブルランプ
ランボルギーニのチェントロスティーレと、照明メーカーのイグッツィーニが組んだデスクライト「Mya」。

6.5リッターV型12気筒エンジンに電気モーターを組み合わせ、574KW(780cv)の大出力を誇る全輪駆動のカウンタック LPI 800-4は、来場者に大きな衝撃を与えたようだ。同時に、イメージを壁に描く“ライティングロボット”として話題の「スクリビット」を使ってランボルギーニのデザイナーがクルマのスケッチを即興で描く演出がウケていたという。

ランボルギーニではさらに、チェントロスティーレ(デザインセンター)が照明メーカーのイグッツィーニ(iGuzzini)とコラボレーションして、ランボルギーニ車のシャープなイメージをもったテーブルランプをデザインした。カラーリングはランボルギーニのイメージどおり黒主体で、挿し色が黄色。「Mya」と呼ばれるこのランプ、販売はまだのようだ。

2021年のミラノデザインウィーク。ランボルギーニブース
2021年のミラノデザインウィーク。ランボルギーニブースではライティングロボットの「スクリビット」がデザインスケッチを即興で描写。

2019年にはホンダが発売前の「Honda e」をミラノ市内の会場でお披露目したりと、多様性にも富んだ内容が特徴的なミラノデザインウィーク。2022年は、以前のようにさまざまなインスタレーションが復活して、話題性に富んだ展示が観られることを、自動車ファンとしてもおおいに期待したい。

REPORT/小川フミオ(Fumio OGAWA)

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