アストンマーティン ヴァルハラが2023年中にプロトタイプのテストを開始

F1の経験と技術を投入した1012PSのPHEVスーパースポーツ「アストンマーティン ヴァルハラ」は2024年から生産【動画】

F1の技術が積極導入された「アストンマーティン ヴァルハラ」のエクステリア。
アストンマーティン ヴァルハラは2023年から実走テストを開始し、2024年からいよいよ生産が開始される。
2023年9月24日に決勝レースが行われたF1 日本GPにおいて、フェルナンド・アロンソが8位入賞を果たしたアストンマーティン。そのアストンマーティンが現在、精力的に開発を進めるスーパースポーツ「ヴァルハラ」は、まさにそのF1から技術や経験を惜しげもなく投入されたスーパースポーツである。999台が限定販売されるヴァルハラは、2024年からいよいよ製造がスタートする予定だ。

Aston Martin Valhalla

市販部門とF1チームが密接にコラボレーション

F1の技術が積極導入された「アストンマーティン ヴァルハラ」のエクステリア。
ヴァルハラの開発においては、アストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズが仲介することで、F1チームのアストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラワン・チームとの技術的なコラボレーションが実現した。

アストンマーティンが開発を続ける次世代ミッドエンジン・スーパースポーツ「ヴァルハラ」は、現在F1に参戦する「アストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラワン・チーム(AMF1)」から、様々な技術や経験がフィードバックされている。

アストンマーティンのグローバル・チーフブランド兼コマーシャルオフィサーを務めるマルコ・マティアッチは、ヴァルハラについて次のように説明する。

「アストンマーティンが掲げるビジョンは、ドライバーにフォーカスしたクラス最高の自動車を作り上げることにあります。次世代ミッドエンジンスーパースポーツ『ヴァルハラ』は、アストンマーティンだけでなく、ミッドエンジン・セグメントにおいても変革をもたらす存在となるでしょう。そして、ヴァルハラは、アストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ社を通じて、ロードカー部門とF1部門の技術を融合した初のモデルとなります」

アストンマーティンとAMF1との技術的な橋渡しは、コンサルティング部門であるアストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ社(AMPT)社によって進められた。AMPTは、車両ダイナミクス、エアロダイナミクス、マテリアルの3分野において、アストンマーティン本社の技術部門を直接サポートしている。

AMPTのエンジニアリング・ディレクターを務めるクラウディオ・サントーニは、次のように説明を加えた。

「自動車メーカーにとって、F1チーム由来のスキルや知識を採り入れることができるのは、大きなアドバンテージとなります。F1のエンジニアは常に性能を追求することで限界を押し広げ、迅速な問題解決のために様々なツールを開発してきました。この知識を活かして、F1の専門知識をロードカーの開発にシームレスに導入することができるのです」

F1マシンのようなドライビングポジション

F1の技術が積極導入された「アストンマーティン ヴァルハラ」のコクピット。
ヴァルハラのコクピットのエルゴノミクス(人間工学)は、F1マシンを参考にしており、カーボンファイバー製バケットシートは、F1マシンに近いシートポジションを実現しながらも、リクライニングが可能となっている。

ヴァルハラは、ドライバーにフォーカスしたミッドエンジン・スーパースポーツとして開発。アストンマーティンの車両ダイナミクス担当グループは、AMPTと緊密に連携。これまでにないドライバーとクルマとの一体感をもたらすべく、全力で開発に取り組んできた。F1マシンの開発で使用されているシミュレーションツールから得られた貴重なデータが、ヴァルハラにも導入されている。

実際、ヴァルハラの技術的なキャラクターと車両セットアップの90%は、シミュレーターを使って開発された。その後、実際の公道やテストトラックを舞台に、最終的な開発・調整作業が行われる。ランス・ストロールやフェルナンド・アロンソら、F1チームのドライバーからも貴重なフィードバックがもたらされる予定だという。

コクピットエルゴノミクスは、F1マシンからヒントを得ており、ドライビングポジションはAMPTのサポートにより最適化。これにより、レーシングカーレベルのコントロール性を実現しながら、ドライビングの楽しさも最大限に引き出すことが可能になった。

専用開発されたカーボンファイバー製バケットシートはリクライニング機構を持ち、ロードカーとしての快適さを保ちつつ、F1マシンの「AMR23」に近いシートポジションを実現している。

F1で使用不可能なアクティブエアロを採用

F1の技術が積極導入された「アストンマーティン ヴァルハラ」のエクステリア。
ヴァルハラは、究極のダウンフォースを発揮するF1マシン由来のエアロダイナミクスを採用。F1では禁止されている、可動エレメントを含むアクティブ・エアロダイナミクスが導入されている。

アストンマーティンのエアロダイナミクス部門とAMPTは、ロードカーとF1マシン開発で培ってきた専門知識を結集。ラグジュアリーとパフォーマンスが完璧に融合した、魅力的なロードカーが誕生することになった。例えば、ヴァルハラのアンダーボディには、F1マシンの「AMR23」由来の技術が導入されている。

エアロダイナミクスは、F1マシンと同じ手法で開発。つまり、ボディ形状のあらゆる要素を用いてダウンフォースを発生させ、空気抵抗を最小化することがターゲットに掲げられた。その上でヴァルハラは、F1のマシン規定に縛られることがないため、F1では禁止されているアクティブ・エアロダイナミクスを搭載することが可能になった。

この結果、240km/hの速度域において、ヴァルハラは600kg以上のダウンフォースを発揮。走行中、フロントとリヤのダウンフォースを調整し、グリップやバランスを最大化したり、路面状況や選択したドライビングモードに応じて、空気抵抗を最小化することもできる。

フロントウイングは、フラットなローダウンフォース・ポジションにしたり、角度をつけることで、フロントタイヤ周辺に強力なダウンフォースを発生させることもできる。フロントスプリッター後方の底面にはくぼみが設けられており、ここがダウンフォースを生み出す低圧帯となる。

マルチエレメント・リヤウイングは通常ではフラットなポジションにキープされ、美しいボディラインを描きながら、最小限の空気抵抗による基本レベルのダウンフォースを発揮。「トラックモード」に変更すると、ウイングが立ち上がり、最大レベルのダウンフォースが提供される。

最高出力1012PSを発揮するPHEVパワートレイン

F1の技術が積極導入された「アストンマーティン ヴァルハラ」のエクステリア。
アストンマーティン史上最も高効率・高性能なV8ユニットに、3つの電気モーターが組み合わせられ、最高システム出力は1012PSを発揮する。

ヴァルハラは、4.0リッターV型気筒8ツインターボエンジンに、3基の電気モーターを組み合わせたプラグインハイブリッド(PHEV)パワートレインを搭載。アストンマーティン史上最も先進的で、高いレスポンスレベルを実現したV8エンジンがベースとなり、最高出力は1012PSを発揮する。

F1マシンのボルテックス・ジェネレーターから着想を得て、ヴァルハラにはミニディフューザーとして機能する小型溝付ルーバーをリヤタイヤ前方に配置。エアフローを自動車の下部から上方へと排出し、大幅にダウンフォースを高めることが可能になった。ルーフに搭載されたシュノーケルは、F1マシンと同様にエンジンインテークにフレッシュエアを送り込むだけでなく、インタークーラーの冷却ダクトにも給気し、エンジンを効率的に冷却する。

カーボンファイバー素材を複雑に組み合わせたヴァルハラのカーボン構造は、アストンマーティンが開発した独自の新技術が用いられた。構造の上部・下部は、樹脂トランスファー成形(RTM)と、F1由来のオートクレーブ技術を組み合わせた、カーボンファイバー製。ドライバーとパッセンジャーの居住性を損なうことなく、クラス最高水準の剛性レベルを備え、卓越した安全性を実現した。

アストンマーティン ヴァルハラを動画でチェック!

これほどのスーパーカーでもアストンマーティンらしさが漂うのはさすが。ドアはガルウイング式。

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