市販FFニュル最速の“狂気”を操る悦び!「ルノー・メガーヌ ルノー・スポール」【最新スポーツカー 車種別解説 RENAULT MEGANE R.S.】

Cセグメント・ハッチバックながらFF車最速の実力を持つ「ルノー・メガーヌ R.S」。21年のマイナーチェンジで最高出力300psのエンジンがすべてのラインに搭載され、ターボが立ち上がるまではなだらかに、高回転域に入るとその勢いは衰えることなく、洗練されつつ野生味も感じさせてくれる。一方で後席用にエアコン吹き出し口やUSB充電端子を備え、荷室容量もさすがのハッチバック。実用性も十分だ。
REPORT:森口将之(本文)/山本晋也(写真解説) PHOTO:井上 誠

ニ種類のシャシー、全車300ps

ニュルブルクリンク北コースで、市販前輪駆動車トップのラップタムをマークし続けてきたメガーヌRS(ルノー・スポール)。三代目となる現行型は、先代の3ドアから5ドアになった上に、4コントロールと名付けられた4WSを搭載し、直列4気筒ターボエンジンが2.0lから1.8lにダウンサイジングされるなど、話題が多い。

エクステリア

F1タイプのエアインテークブレード(フロント)、本気の空力デバイスであるディフューザー(リヤ)、フロントフェンダーのエアアウトレットといったスタイリングが、世界最速を目指したホットハッチを実感させる。
FF世界最速のために進化しつづける「M5P 」型エンジン。ターボチャージャーを、レスポンス重視のツインスクロール構造&セラミックボールベアリングとしている点が印象的だ。最高出力は全車共通だが、最大トルクはEDCが420Nm、MTは400Nmとなる。
上級仕様のトロフィーに標準装備の19インチホイールは、コンセプトカー譲りの大胆な意匠が特徴。ブレンボ製ブレーキキャリパーは、R.S.はシルバー、トロフィーのみレッド塗装。
基本的には欧州での中心であるCセグメント・ハッチバックがベースなので実用性能は申し分ない。荷室幅は実測値で1100mm もあるほどだ。後席は6対4の分割可倒式、積載量に合わせて調整しやすい。

ボディは同じハッチバックのメガーヌ・インテンスと比べると、60mmも広くなった全幅が目立つ。RSでは当初から使っている、ダブルアクシスストラット式フロントサスペンションを収めるためだ。さらにダンパーは前後とも、ストローク終端部にもうひとつのダンパーを組み込んだHCC(ハイドロリック・コンプレッション・コントロール)を採用する。

インテリア

バックスキンとパンチングレザーのコンビとされたステアリングがスポーツマインドを刺激する。写真ではインパネ中央のディスプレイは7インチだが、2022年7月のマイナーチェンジで9.3インチに拡大されている。
液晶タイプのメーターを採用。2022年7月に7インチから10インチに大きくなっている(写真はマイナーチェンジ前)。
シフトレバーを左に倒すとシーケ ンシャルのマニュアル操作が可能。
ペダルとフットレストはアルミ製だ。

足まわりは公道でのスポーツ走行を想定したシャシースポールと、サーキットを念頭に置いたシャシーカップがあり、標準グレードは前者、トロフィーは後者を組み込む。エンジンは当初から最高出力279psと、旧型を上回っていたが、2021年のマイナーチェンジではトロフィーに積まれていた300ps版が全車展開となった。6速のトランスミッションは、ルノーではEDCと呼ぶ2ペダルのデュアルクラッチのほか、トロフィーはMTも選べる。EDCではマイナーチェンジで、アダプティブクルーズコントロールが装備された。

4コントロールの安定感 固めながらしなやかなサス

1.8lターボエンジンは、2500rpmあたりからなだらかにターボが立ち上がるので扱いやすい。300ps仕様では高回転での伸びも良くなり、レッドゾーンまで勢いが衰えずに吹け上がるようになった。先代に比べて洗練度は格段に向上したが、一方でサウンドは野性的な響きを届けてくれる。

そのエンジン以上に魅力的なのがシャシーで、現在市販されている前輪駆動車ではトップレベルの能力と言うことができる。低速コーナーでの目の覚めるような旋回性と、高速コーナーでの絶大な安定感が両立しているのは、まぎれもなく4コントロール効果。固められた足なのに荒れた路面でもしっとり接地してくれるのはHCCのおかげだろう。

うれしい装備

センター出しのエキゾーストはデュアルテール。片方にアクティブバルブが備わり、排気サウンドを切り替える。 
「セーブ」「スポーツ」「レース」「マイセンス」と四つのドライビングモードから気分に合わせて選ぶことができる。 
フロントアームレストはスライド式、中は小物入れで実用的だ。 
後席用にエアコン吹き出し口やUSB充電端子を備える。

高性能な前輪駆動車でありながら、ステアリングの感触は自然。ハブキャリアをストラットから独立させたフロントサスペンションによるところが大きい。それでいて乗り心地はフレンチスポーツらしく、硬めながらショックを絶妙に逃がしてくれる。ここでもHCCが貢献していると実感できる。

しかもマイナーチェンジではアダプティブクルーズコントロールが追加されたので、この快適性がさらに引き立つようになった。昨今の電動化の流れから考えると、これがエンジンだけで走る前輪駆動スポーツモデルの頂点のひとつになるのかもしれない。

Country          France
Debut           2018年8月(一部仕様変更:22年7月)
車両本体価格         519万円~559万円 

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.143「2022-2023 スポーツカーのすべて」の再構成です。

http://motorfan-newmodel.com/integration/143/

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