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ドイツ南部の都市・ミュンヘンはBMWのお膝元
BMWファンの聖地ともいえるBMWミュージアムは、BMWが本社を置くドイツ南部最大の都市ミュンヘンにある。自動車産業以外にも、ビールの街としても有名だそう。ドイツを訪れた9月は、ビール祭りである「オクトーバーフェスト」の直前ということもあってか、BMWミュージアムに来館する人たちにも、ドイツの民族衣装である「ディアンドル」を着た女性の姿も見受けられた。
そのBMWミュージアムの所在地だが、なんとBMW本社の隣という分かりやすさ。さらに同社の工場やグループの最新モデル展示施設「BMWワールド」も隣接しており、さすがBMWの地元と感じさせるシチュエーションだ。
BMWワールドは無料だが、BMWミュージアムは有料。入場料は大人で10ユーロ(税込)だ。日本円で1600円くらいなので、近年の物価高を考えると、手頃な価格ともいえる。同時に、地域を象徴する観光施設でもあるため、平日ながら、軽い入場制限を行うほどの盛況ぶりであった。
ミュージアムは地下に広がる構造で、BMWの歴史、技術、市販車、レーシングモデルなどが展示されている。館内への荷物の持ち込みには制限があるが、無料のロッカーが提供されており、もちろん、カメラの持ち込みは可能だ。
まず驚かされたのは、バイク「BMWモトラッド」の展示だ。まるでミニカーのコレクションケースのように、多くの実車が飾られている。そのサイズはおよそ建物3~4階分と巨大で、スクーターから軍隊用サイドカー、レーサータイプなど多種多様な顔ぶれだ。
そして四輪車の展示は、なんと平置きのものが多い。もちろんステージ上に飾られている車両たちもあるが、鑑賞や撮影の邪魔となる囲いはほとんどなし。クラシックカーでも囲いがなく、目前で鑑賞できるものまであるという太っ腹さだ。
BMWらしいと感じさせたのは、エンジンの展示の多さ。航空機のエンジンメーカーとして創業した歴史から、クルマだけでなく、航空機エンジンの展示まである。もちろん、歴代の乗用モデル用だけでなく、レーシングシーンで活躍したエンジンも単体で展示されているのだ。
展示エリアは、「BMW M」「デザイン」「テクノロジー」「モータースポーツ」などに分かれており、様々なテーマ展示が行われている。
個人的に楽しかったのが、BMWの広告とCM動画を鑑賞できるエリアだ。特にCM動画は、見ごたえ抜群。映像自体は、大型スクリーンで映し出されているのだが、その前にある席とスピーカーを備えたブースが3つと少なく、順番待ちが必要なことも。ただカップルで座れるくらいの広さはあるし、ブース脇から眺めることも出来るので、来館の際はぜひチェックを……。映像の上映時間は20分ほどだ。
特に気になったBMWのクルマをチェック!
ここからは私が気に入った展示車たちを紹介していこう。
■BMW850iカブリオレ
BMWのフラッグシップクーペとして、1989年のフランクフルトモーターショーで発表された初代8シリーズのオープン仕様として開発。但し、採算性の観点から市販化が見送られた。
展示されるのは、その貴重なプロトタイプ。300psの5.0L V型12気筒エンジンを搭載し、最高速度250km/hを発揮。トランスミッションは、6速MTだ。特徴としては、ソフトトップの採用に加え、クーペと異なる2シーター仕様となる点などが挙げられる。
時を経て、現行型8シリーズで2ドアオープン仕様が投入されたのは、長年の夢が果たされたとも解釈できるわけだ。
■BMW Z1
1987年にプロトタイプが発表された新提案の2シーターのオープンスポーツカー。最大の特徴は、ドアがボディ内部に格納される構造を持つこと。さらにドア格納したままでも走行できるというユニークなアイデアが盛り込まれた。
ボディパネルは樹脂製で、パネルを購入することでボディカラーの変更も可能とされていた。パワートレインは、当時の325iからの流用で、170psの2.5L直列6気筒SOHCエンジンを搭載。最高速度220km/hとされた。
製造期間は1988年~1991年と短命に終わった。総生産台数が8000台という少なさは、製造がハンドメイドだったことも大きい。プラットフォームこそ3シリーズ(E30)をベースとするが、かなり各部が専用化されているという。個人的にも一度は運転してみたい1台だ。
■BMW Z8
映画「ワールド・イズ・ノット・イナフ」のボンドカーとして登場しながらも、劇中で真っ二つにされてしまうという衝撃的な最期を遂げたことが思い出深いZ8は、1950年代の名車「BMW 507」をモチーフにデザインされたモデル。
シャシーとボディはオールアルミニウム製で、エンジンは、BMW M5用の4.9L V型8気筒エンジンという豪華さ。その性能は、最高出力400psを発揮し、0-100km/h加速が5.0秒、最高速度250km/hとされる。
内外装はクラシックテイストに仕上げられ、インパネでは、センターメーターが特徴的。販売期間は、1999年~2003年と短く、総生産台数も5703台であった。
■BMW 315/1
ブルーとイエローのカラーリングの美しさとスタイルの良さに目を奪われたのが、BMW 315/1だ。1934年~1936年に製造された小型オープンスポーツカーで、1.5L直列6気筒エンジンを搭載し、最高出力40psを発揮。最高速度は、125km/hだった。モータースポーツシーンでも活躍し、BMWの評価を高めることにも貢献した。
流れるようなシルエットが美しく、特にリヤスタイルは見とれてしまうほど。その巨大なキドニーグリルは、現行型でも復活されており、同社の歴史と伝統を感じさせるが、こちらの方が優雅さでは勝る。
個人的には、インパネの四連メーターの中央左側が、巨大な時計となっていることが驚きであった。同車の生産台数は、230台と少なかった。
■BMW M535i
今や貴重な初代5シリーズ(E28)だが、その中でもレア中のレアといえるのが、5シリーズ初のMバッジモデルとなった「M535i」だ。モデル最終年となる1981年に投入されたBMW M社とのコラボモデル。そのため、生産台数は1650台に限られる。
スポーツ性能を高めるべく、スポーツサスペンションやレカロシートなどを装備。さらにオプションとしてMエアロやストライプなどが用意された。二代目モデルも当初は、M535iがフラグシップスポーツであったが、1984年に初代M5が登場し、その座を譲った。
見応え十分! クルマ・バイク好きならぜひ訪れたい
テーマ別展示のため、歴代BMWの全てが展示されているわけではなく、必ずしもお気に入りのBMWに出会えるというわけではないが、見ごたえは十分。流石、公式博物館と思える車両や展示物とで出会うことはできる。これらは展示車のほんの一部であり、これ以外の四輪車だけでなく、バイク「BMWモトラッド」も見ごたえあるモデルたちばかりで、今回、紹介しきれなかったモデルや展示もまだまだある。
ぜひドイツを尋ねた際は、足を運んでみて欲しい。隣接するBMWワールドを含め、クルマ好きならば、旅の良き思い出のヒトコマとなること間違いなしだ。