燃費に泣くスバリストに朗報♪ e:BOXERストロングハイブリッド搭載、SUBARU「クロストレック プレミアムS:HEV」に期待せよ!【清水和夫試乗動画】

清水和夫✕クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV
清水和夫✕クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV
スバルが満を期して、ストロングハイブリッド専用の2.5L水平対向エンジンとトランスアクスルを新開発。人気のクロストレックに搭載し、2024年10月17日から先行予約が開始、12月5日に発表された。ワンタンク63L=1000kmを超える航続距離を達成と、燃費の悪さが常に話題となっていたスバル車オーナーに朗報が舞い込んだ!のか? さて、元祖スバリスト清水和夫の評価はどうだ?
IMPRESSION:清水和夫(Kazuo SHIMIZU)/MOVIE:StartYourEnginesX/ASSIST:永光やすの(Yasuno NAGAMITSU)

燃費向上はスバリストの夢! はたして解消されたのか?

ロストレック ストロングハイブリッドS:HEV
クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV

スバル車の燃費が良くなった!? スバリストの悩みを一気に解消しそうなe:BOXERストロングハイブリッド搭載「クロストレック プレミアムS:HEV」が12月5日に発表された。
最高出力 88kW を発生する駆動用モーターを採用し、ほぼほぼモーター駆動をメインとし、モーターでは苦手な領域をエンジン駆動がカバーしてくれるという。プロペラシャフトで前後輪をつなぐ機械式AWDを採用、従来のマイルドハイブリッドに対して約20%の燃費向上だとか。
では、SUBARU車には愛も厳しさも持ち合わせる国際モータージャーナリスト・清水和夫氏のプロトタイプ試乗を見てみよう。

清水和夫✕クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV
清水和夫✕クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV

トヨタのハイブリッド技術にスバルのAWDを組み合わせたS:HEV

スバルの期待するストロングハイブリッド。トヨタのTHSをスバル流に味付けし、燃費もいいしパワフルだし、非常に楽しみなクルマだ。

清水和夫✕クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV
清水和夫✕クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV

スバルは、THSを付けたハイブリッドはアメリカではすでにやっていたが、今回、本格的にモーターの出力を上げてバッテリーも大きくし、やる気を見せた。多分高速ではリッター18km/Lくらいいくのではないか?と言われている。燃料タンクもでかくしたから、給油なしで1000km走れちゃう。

清水和夫✕クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV
清水和夫✕クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV

モーターはMG2の駆動用が88kWだから結構パワーはあるし、トルクは270Nmというから、2.5Lガソリンエンジン車並みの出力を持っている。プラス燃費もいいということで、スバルにしては本当にいいものをトヨタから提供されたなっていう気はする。

ただ、そのトヨタのシステムをそのままポン付けしただけではなく、スバル内の拘りがある。その1つが4駆システム。機械式のメカニカル4駆で、フロントはTHSのMG2で駆動して、その出力がプロペラシャフトを介してリヤに伝わり機械的にリヤアクスルを回すので、いわゆるフルタイム4駆に近いような特性だ。

おぉ~結構ガツガツいくね。結構乗りやすい。クルマもコンパクトだし。

iモード(インテリジェントモード)で走っていたが、今度はSモード(スポーツモード)で走ってみよう。ハンドリングは悪くないね。乗り心地も悪くない。いいクルマに仕上がっている。“スバリストOB”としたらちょっと安心だ。

フル加速テストをしてみる。4駆だからホイールスピンはしないが。MG2が270Nmなので、THSの中ではモーターを大きくして、バッテリーもリチウム1kWくらいなので、トヨタのスタンダードの0.8kWよりもちょっと大きい。バッテリーと思ったらちょっと大きくして頑張っているっていう感じ。10kWのモーターだから、発進の時にちょっとご利益があるのかな?

2.5Lエンジンの恩恵もあり、夢の高燃費に涙するスバリスト

エンジンも、今までのマイルドハイブリッドのe:BOXERは1995ccと排気量小さい。が、ストロングハイブリッドのS:HEVは2498 ccあるので、多分アメリカのビジネスを考えたらこのくらいの出力がないとダメだと思う。マイルドハイブリッドは国内向け、ストロングハイブリッドはグローバルに通用する。

燃費が良くなり燃料タンクは63L。なのでS:HEVストロングハイブリッドは多分1000kmくらい走れる。スバルでワンタンク1000kmっていうのは夢だったよね!

スバル車にとってやっと手に入れた燃費のいい力強い走りのハイブリッド。トヨタのTHSを水平対向エンジンとドッキングしたのだが、エンジンもケチらずに2.5Lという排気量にして、THSの2モーターのMG1とMG2。

特徴的なのは、MG2というのは駆動用モーターだが、88kWあるし、トルクは270Nm。今までのクロストレックに付いていたe:BOXERはエンジンの出力も小さいしモーターも10kWなので、もうそれは比較にならないくらいe:BOXER S:HEVのほうが力強い。

価格差と有難みとの関係はどうか?

ロストレック ストロングハイブリッドS:HEV
クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV
ロストレック ストロングハイブリッドS:HEV
クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV
■クロストレック 各グレード価格(すべて税込/S:HEVはAWDのみ)
e:BOXER Touting FWD:3,014,000円
e:BOXER Touting AWD:3,234,000円
e:BOXER Limited FWD:3,234,000円
e:BOXER Limited AWD:3,448,500円
e:BOXER e:HEV Premium S:HEV AWD:3,833,500円
e:BOXER e:HEV Premium S:HEV EX AWD:4,053,500円

ストロングハイブリッドは同じAWDと比べプラス約60~80万円くらい。が、その価格差でストロングハイブリッドが手に入れることができるので、スバルにしては久しぶりのヒットメーカーになるか?という気がする。

大事なのは、エンジンの排気量を上げてバッテリー1kWリチウム、ちょっと大きくしてモーターも88kW。で、4駆システムはリヤモーターではなくてメカニカル4駆ということ。メカニカル4駆というのが、スバルがずっと拘ってきたAWDの、ちょっとフルタイムに近いようなシステムなので、滑ったら4駆になります的なオンデマンドでもない。よくリヤモーターのハイブリッドがあるが、意外とリヤに大きいモーターは搭載できないので小さくなる。そうすると、回生もあまり取れないし雪道での発進くらいしか役割がない。が、スバルはペラシャフトでのメカ4駆なので、これもずっと伝統的にスバルが拘ってきたシンメトリカルAWDの掟にぴったり合っているわけだ。

ロストレック ストロングハイブリッドS:HEV
クロストレック ストロングハイブリッドS:HEVのコクピット

エンジンのパワープラントが2.5Lの2モーターのストロングハイブリッドになったっていうことで、多分私の想像ではこれからますます排ガス規制が厳しくなるので、ターボが使いにくい時代になった。ターボエンジンというのは、規制の中ではそんなに燃料リッチにしていないが、規制値から外れた高出力のところは、ガソリンをバンバン吹いてガソリン冷却していた。そうすると、どうしても一酸化炭素など余分なものが出ちゃうので、それを今度ヨーロッパのユーロ7(Euro 7)という排ガス規制ではそこも規制対象になるし、2030年頃の米国環境保護庁(EPA)のティア4(Tier 4)という燃費規制も相当厳しくなるので、“ガソリンターボ冬の時代”になりそうなのだ。

ロストレック ストロングハイブリッドS:HEV
クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV

じゃスバルにとって今、走りのパフォーマンスと燃費を両立させる技術は何があるのか?と言うと、ディーゼルもダメだったしガソリンもこれから厳しい。そうすると、もう電気の力を使うしかない。スバルは独自のハイブリッドシステムというのは、せいぜい今までのe:BOXERの10kWしかなかったので、これはトヨタと一緒になってTHSをもらい、エンジンも2.5Lの水平対向にしたので、これだったらターボがなくても1番大きいアウトバックの車体にも多分積めるのではないか?と思う。

清水和夫✕クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV
清水和夫✕クロストレック ストロングハイブリッドS:HEV

ということで、今回S:HEVはクロストレックに載ったが、これはやがてフォレスターとかレイバック、アウトバックにも積まれていくと思う。スバルの基盤、極めて重要な稼ぎ頭のパワープラントになるのかなと思う。

今日、天候の悪い中、4駆のトラクション性能の良さや、デコボコしたところのオフロード性能、オンロードのウェットの走りとか、いろんなところを試すことができた。いよいよこれを一般公道で乗る日が来ると思うので、その時にまた改めてテストレポートをしたいと思う。今日はプロトタイプということで機能ごとのテストをやった中では、なかなかかな?と思った。

【SPECIFICATIONS】
車名:スバル クロストレックPremium S:HEV
全長×全幅×全高:4480×1800×1575mm ※ルーフレール装着車の全高は1580mm
ホイールベース:2670mm
トレッド(前/後):1560/1570mm
車両重量:1660kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.4m
エンジン種類:水平対向4気筒DOHC
内径×行程:94.0×90.0mm
総排気量:2498cc
エンジン最高出力:118kW(160ps)/5600rpm
エンジン最大トルク:209Nm(21.3kgm)/4000-4400rpm
燃料タンク容量:63L(無鉛レギュラー)
駆動用モーター形式/種類:MG2/交流同期電動機
モーター最高出力:88kW(119.6ps)
モーター最大トルク:270Nm(27.5kgm)
ミッション:リニアトロニック(CVT)
燃料消費率(WLTCモード):15.8km/L
サスペンション(前/後):ストラット リア/ダブルウイッシュボーン
ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
車両本体価格(税込):3,833,500円

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著者プロフィール

清水和夫 近影

清水和夫

1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、N1耐久や全日本ツ…