『トミカ』のNo.54は『トヨタ タウンエース ハンバーガーカー』です。その名前からハンバーガーの移動販売車を想像しますが、実際にはトヨタ タウンエース トラックの荷台にハンバーガーの模型を載せた、そのものズバリの『ハンバーガーカー』です。これはシリーズ番号で続きとなる『No.55 いすゞ ギガ フライドポテトカー』とセットになっていると思われます。
この『ハンバーガーカー』は実車の世界では、トラックの荷台に看板や作り物を積んだりバスをラッピングしたりして、お店や商品の広告宣伝などを行なう“アド・トラック(広告宣伝トラック)”と呼ばれる車両になります。
とは言え、現在では“アド・トラック”とは、基本的にはトラックの四角い荷室の表面に商品やお店の宣伝を描き、けたたましい音楽とまばゆい光を放って町中をゆっくり流して走るクルマのことを指すようになってきており、『トヨタ タウンエース ハンバーガーカー』のような模型や作り物を載せて注目を集めるクルマのことは“フロート車”あるいは“フロート・トラック”と呼んで区別するようになってきているようです。ちなみに“フロート”とは、お祭りやカーニバルでパレードで使用される、飾りつけされた乗り物や牽引台車――日本の祭礼で使用される山車(だし、さんしゃ)もその一種――のことです。
この“フロート車”で有名なのは、九州の福岡県福岡市で行なわれる『福岡市民の祭り 博多どんたく港まつり』で西日本鉄道が主管して走らせている『にしてつ花自動車』でしょう。この『にしてつ花自動車』は、福岡市内線が廃止された際、同線で走らせていた花電車をトラックに置き換えたものとして、1978年から始まり現在に至っています。主におとぎ話、アニメ、特撮番組、スポーツや福岡市で開催される行事などにちなんだ飾り付けが行なわれています。コロナ禍の影響で2020年から休止となりましたが、2022年は3年ぶりに復活を果たしており、童話『桃太郎』を題材とした1号車、福岡を本拠とする野球チーム『福岡ソフトバンク ホークス』とサッカーチーム『アビスパ福岡』のマスコットを描いた2号車の2台が走りました。
もちろんこの『にしてつ花自動車』だけでなく、名古屋市や神戸市の交通局のように、地元のお祭りやパレードに際して路線バス(の退役車両)を飾り付けた“花バス”を走らせているところも日本各地に見られます。
『トミカ』の『No.54 トヨタ タウンエース ハンバーガーカー』は、この花自動車のようにトラックの荷台にハンバーガーの模型を積載し、架空のハンバーガー・ショップである『トミカバーガー』の宣伝を行なう“フロート車”です。ベースとなっているタウンエースは現行モデルで4代目を数える、トヨタを代表するキャブオーバーあるいはセミキャブオーバー型の小型商用バン/トラックで、開発と生産は初代モデルから一貫してダイハツに委託されています。
2008年に登場した現行4代目モデルは、トヨタとダイハツで共同開発され、インドネシアのダイハツの生産拠点で生産されたグランマックスの日本向け仕様といった存在で、当然ながらダイハツのグランマックスとは兄弟車になります。また、OEM供給されているマツダの5代目ボンゴも兄弟車です。車型はバンとトラックの2種類で、バンには標準ルーフとハイルーフの2種類があります。また、トラックはバンより若干全長が長くなっています。この現行4代目タウンエースのトラックは最大積載量が800kg積みと、先代より小さくなりましたが、これは町中での使いやすさや使い勝手の検討の結果、先代より小型化、小排気量化、最大積載量の減少化がはかられたためです。
コレクションの中でも異彩を放つ『トミカ』の『No.54 トヨタ タウンエース ハンバーガーカー』は先にも述べた通り、ぜひ、続き番号の『No.55 いすゞ ギガ フライドポテトカー』とセットでそろえることをオススメします。
■トヨタ タウンエース DX(2WD 4A)主要諸元(『トミカ』のモデル車両と同一規格ではありません)
全長×全幅×全高(mm):4295×1675×1920
ホイールベース(mm):2650
トレッド(前/後・mm) :1460/1440
車両重量(kg):1170
エンジン:2NR-VE型直列4気筒
排気量(cc):1496
最高出力: 71kW(97ps)/6000rpm
最大トルク:134Nm(13.7kgm)/4400rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション(前/後):ストラット/リーフリジッド
ブレーキ(前/後) :ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤ:(前後):175/80R14 99/98NLT