誰でも簡単、トヨタの最高峰ミニバンをプラモデルで作ってみた!

プラモ作りがちょいステップアップ! 部分塗装でスッキリ仕上げる | 作ってみよう、自動車プラモ 第3回 | アオシマ 1/32 ザ・スナップキット No.04 トヨタ ヴェルファイア 編

ちょっとした休日、肩の力を抜いてプラモデルでも作ってみませんか? 誰にでも気軽に作れる気になるプラモデルをピックアップして実際に組み立ててみました。今回は高級ミニバン市場で絶大な存在感を誇るトヨタの30系ヴェルファイアのプラモデルを取り上げ、ちょっと仕上げにひと工夫してみました。

TEXT&MODEL-BUILD◎高橋昌也
協力◎アオシマ

(初出:2020年5月22日/改題・改稿)
アオシマ 1/32 ザ・スナップキット No.04 トヨタ ヴェルファイア。メーカー希望小売価格1650円(税抜き)

トヨタ・ヴェルファイアはアルファードの姉妹車で、アルファードVのネッツ店向けモデルとして2008年に初代モデル(20系。アルファードとしては2代目)がデビューしました。名前の由来は「VELVET(ヴェルヴェット=物静かな)」と「FIRE(ファイヤー=炎)」からの造語で、「物静かな炎」=「クールな情熱を持つクルマ」という意味を込めています。高級感や上質感を訴求したアルファードのデザインに対し、「力強さ」や「先進性」を押し出した、やや過激とも言える迫力あるデザインでアルファードよりも若い層にアピールして好評を博しました。また、ヴェルファイア(および2代目以後のアルファード)には主に上質感をアピールするノーマルボディ仕様と主に先進性をアピールするエアロボディ仕様がラインアップされているのも特徴で、これは後の2代目にも継承されています。
2015年にフルモデルチェンジして2022年12月末現在も販売されている2代目は、先代よりも大きなメッキグリルを採用し、全幅も20mm拡大されて重厚感が増大。特にエアロボディ仕様車(Z系グレード)のいわゆる「イカツさ」が増したスタイリングは先代のエアロボディ仕様車をしのぐ人気を博しており、エアロボディ仕様車は販売数の約40%を占める勢いを見せているそうです。

30系ヴェルファイア エアロボディ 前期型 実車

現在のところ30系ヴェルファイアのプラモデルは、アオシマ(青島文化教材社)から1/32スケールのものとフジミ模型から1/24スケールのものが発売されています。今回は第1回目で取り上げたトヨタC-HRの時と同じく、接着不要、塗装不要で誰でも簡単に組み立てられるアオシマの1/32スケールのものを選択しました。プラモデルをまったく組み立てたことのない方や、久方ぶりにプラモデルを作るといった方にもオススメできる商品です。
さて、このプラモデルは商品名には『トヨタ ヴェルファイア』とあるだけですが、詳しく言えば2代目(30系)ヴェルファイアの前期型、ガソリンエンジンのZ系グレードを模型化したものです(おそらくZAグレード)。C-HRの時にも書きましたが、トヨタのハイブリッド車はエンブレムに青い影がついているのが特徴ですが、このプラモデルのカラーリング用シールにはそれが無いためハイブリッド車ではないことがわかります。またエアロボディなのでZ系グレードなのがわかりますね。ちなみにホイールは235/50R18用のシルバーメタリック塗装の18インチ・アルミホイールです。
このプラモデルには4色のボディカラーがあり、お好みで選べます。今回組み立てたのは「バーニングブラッククリスタルシャインガラスフレーク」ですが、このほか「ホワイトパールクリスタルシャイン」、「ブラック」、「グレイッシュブルーマイカメタリック」があります。もちろんボディカラーとカラーリング用シールの色以外はすべて同じ内容です。

箱の中身を見てみよう

箱の中身。第1回目のトヨタC-HRと同様、組み立てやすさを追求してパーツの一体化をはじめとした徹底的な合理化をはかっているためアッサリした印象を受ける。それだけに自分で色々と手を加える余地も大きい。

〇このプラモデルの感心した点

リヤのプライバシーグラス部分はブラックスモーク成形の部品を使い、フロントのグラス部分との差別化をはかっている。ちょっとブラックスモークが強めな印象だが、こういった細かな部分も手を抜かずにこだわっているのは好印象。

バンパーなどはギラギラのメッキ部品を、ホイールにはツヤ消し調メッキ部品を使うことで実車の素材や仕上げの違いを表現しているのもうれしい。

△このプラモデルでちょっと不満な点

第1回目でご紹介した同社のトヨタC-HRのプラモデル同様、成形不良対策のためタイヤ裏側はくり抜かれている。完成後はそんなに見えないとは言え、やはり溝を埋める部品が欲しい。それよりも、タイヤのトレッドパターンも何らかの形で再現して欲しかったところ。

こちらも滅多に裏返して見ないとは言え、マフラーの一部が彫刻されただけの車体裏面はいささか寂しい。せめて『トミカ』のようなミニカーの車体裏面ぐらいの彫刻表現が欲しかったところ。もしくはシールでの表現でも良いかも知れない。

ちょっと手を入れて、2代目(30系)ヴェルファイアを作ってみた。

今回のプラモデルは第1回目のトヨタC-HRと同様に部品を切り出してシールを貼るだけなので、模型工作用ニッパーとピンセット、つまようじが有れば誰でも簡単に短時間で組み立てられます。もちろんメーカーの指定通りそのまま組み立てても何の不満もなく仕上がりますが、今回はちょっとステップアップして、一部を付属シールを使わず、模型用塗料で部分的に塗装してみました。そこで今回の製作過程は、主に部分塗装過程をご紹介します。
塗装と言っても模型用塗料や筆や溶剤をそろえて…という本格的なものではなく、模型用マーカー塗料でチョイチョイと塗ってみる程度のものですので、あまり構えずに気楽に楽しんでみましょう。現在、「模型用」として入手しやすいマーカー塗料は、GSIクレオスから発売されている『ガンダムマーカー』とタミヤから発売されている『タミヤ ペイントマーカー』の2種類になります。たまに模型製作ガイド本やガイド誌などで触れられている三菱鉛筆の『ポスカ』のようなポスターカラーマーカーもプラスチックに塗れますが、正直、塗膜が固く、すぐにパリパリはがれてしまうのでオススメは出来ません。あくまで非常手段と考えた方が良いでしょう。
さて、前者はその名前の通り「機動戦士ガンダムのプラモデル」=通称『ガンプラ』の塗装用に開発されたものですが、もちろん『ガンプラ』だけでなくプラモデル全般に使用できます。大雑把に言えば前者はアクリル絵具、後者は油絵具の親戚になり、使われている溶剤はまったく異なります。今回は黒と銀の2色だけを塗ることにし、黒には『ガンダムマーカー』の「ガンダムブラック」、銀には『ガンダムマーカーEX』の「シャインシルバー」を使用することにしました。
まずはドアハンドルなど、ボディのメッキ加飾された部分を「シャインシルバー」で塗りました。基本的にはフリーハンドですが、一部はマスキングテープを使用して塗料がハミ出さないよう留意しています。続いてフロントガラスの下部を「ガンダムブラック」で塗装。ここはワイパーの突起が邪魔になってなかなかシールが貼り辛いため、塗装したかったところです。本来、ここに貼るべきシールのフチの部分を利用してマスキングしましたが、そのままではシールのノリが強いので、一度、カッティングマットに貼って粘着力を弱めてから貼っています。これを型紙にしてマスキングテープを切り出しても良いでしょう。むしろその方がノリが強するための失敗を避けられるかもしれません。また、実車では大型メッキベゼルに囲われた台形のロアグリルの内側も「ガンダムブラック」で塗装した後、周囲を「シャインシルバー」で塗っています。
フロントウィンドウ上部、サイドの三角窓の周囲、リヤウィンドウの周囲は実車では車内の部品や内側からガラスに貼られたフィルムなので、やはり貼るべきシールのフチの部分を利用してマスキングした後、内側から「ガンダムブラック」を塗っています。これで仕上がりはより実車に近くなります。
もっともこれらは無理をして塗装する必要はありません。あくまで「楽しむ」ことが大事です。もし仮に塗装に失敗しても、本来、貼るべきシールは無傷で残っていますから、それを貼れば十分にリカバリーできるでしょう。今回はこの塗装に最も時間をかけてみましたが、満足の行く仕上がりになったと思います。

各種マーカー塗料の違いと工作の流れ

上から『ガンダムマーカー』の「ガンダムシルバー」、同EXの「シャインシルバー」、『タミヤ ペイントマーカー』の「クロームシルバー」。同じ「銀(シルバー)」でも色の表情が全然違う。「ガンダムシルバー」は最もツヤ消し感が強く、「シャインシルバー」は最もメッキ感が強い。「クロームシルバー」はその中間ぐらい。「ガンダムシルバー」は「銀塗装」、「シャインシルバー」は「銀メッキ」、「クロームシルバー」は「アルミ素材」の表現にそれぞれ向くと思う。

細長い部分はムラにならないよう塗り重ねずに一気に塗りたいので、マスキングテープでマスキングしてから塗装した。マスキングテープは100均で購入したもの。

フロントウィンドウ下部の塗装のマスキング(赤枠で囲った部分)には、もともと貼る指示をされているシールのフチ(ピンク色に着色指示している部分)を使って貼っている。これならいちいちマスキングテープを切り出す手間が省ける。今回、部分塗装にしたのは、この複雑な部分に上手くシールを貼る自信が無かったから。

フロントウィンドウ下部、サイドウィンドウ周囲、Bピラーなどは外側から、フロントウィンドウ上部、三角窓の周囲などは内側から塗装している。これにより少し実車の雰囲気に近づけられた。

リヤウィンドウもシールの「使わないところ」をマスキングシート代わりに使用して内側から黒く塗った。ピラー部分も実車ではクリアーブラックのパネルなので、裏側から黒く塗った方が実車っぽく見えると思う。

ちょっとしたテクニック。ライトなどのクリアー部品はフチ(断面)を黒く塗ると装着した時に締まった印象になる。透明樹脂は断面から周囲の光を拾って乱反射させてしまうため、余計な光を遮断するわけだ。実車では黒やダークグレーのゴムでシールされている部分に相当する。

完成したプラモデルをフロントから見る。バンパーやBピラーの黒い樹脂部分は塗料と実車の部材とでは質感が違うので、結局、シールを貼ることにした。左右の大きなロアグリルは指定ではシールを貼るようになっているが、そうすると繊細な彫刻が完全にシールで覆われてしまう。塗装なら繊細な彫刻を生かすことが出来るため、ここは塗装にチャレンジして欲しい部分。

完成したプラモデルをリヤ側から。実車ではリヤライト上下はブラックスモーク樹脂を使ってブラックアウトされているが、プラモデルではクリア樹脂の上に黒いシールを貼ることで表現されている。ここはいずれ実車同様のブラックスモーク塗装にしたい。

(初出:2020年5月22日/改題・改稿)

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著者プロフィール

高橋 昌也 近影

高橋 昌也

1961年、東京生まれ。早稲田大学卒。モデラー、ゲームデザイナー、企画者、作家、編集者。元・日本冒険小…