『トミカ』の中でも随一の異色作? 自動車じゃなくてもイイじゃない!

『トミカ』随一の異色作? 救急救命の最前線で活躍する空飛ぶドクター! トミカ × リアルカー オールカタログ / No.97 ドクターヘリ

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実機はどんな乗り物?
No.97 ドクターヘリ (ローター回転・希望小売価格550円・税込)

『トミカ』のNo.97は自動車ではなく、なんとヘリコプター、『ドクターヘリ』です。ちょっと異色のラインアップですね。

東北エアサービスが運用している川崎式 BKK-117C-2型のドクターヘリ。(PHOTO:川崎重工 リリースより)

ヘリコプターはご存じのように、機体上方の大きな回転翼――ローター――を回転させることによって浮力と推進力を得る形式の航空機で、一般に知られる飛行機を固定翼式航空機と呼ぶのに対して、回転翼航空機と呼ばれます。回転翼の取り付け角度を変化させることで上下、左右、前後の飛行を行ない、空中に静止することも可能です。旋回や方向転換も自在に行なえ、滑走路を必要とせずに、平坦な場所なら地面だけではなく、ビルの屋上でも離着陸が可能です。スピードはジェット機などに比べれば遅いものの、自動車よりは圧倒的に早く、空を飛ぶためもちろん渋滞に巻き込まれるようなこともありません。

ドクターヘリの後方キャビンにはストレッチャー、救急バック、心電図モニターなどの器具、生体情報モニターなど各種の医療機器が常備されている。(PHOTO:川崎重工)

さて、ドクターヘリとは、「医師(ドクター)をいち早く救急現場に連れていくヘリコプター」のことです。実は「ドクターヘリ(Doctor-Heli)」とは和製英語で、英語では「エアアンビュランス(Air Ambulance)」、あるいは「HEMS(Helicopter Emergency Medical Service)」と言います。「いち早く救急現場に駆け付ける」ためには、自動車よりスピードが早くて渋滞もなく、小回りが利き、平らな場所なら簡単に離着陸できるヘリコプターがうってつけなのです。

ドクターヘリの機内には、初期治療に必要な医療機器や医薬品が装備・搭載してあり、基地病院の敷地内などで待機して出動要請に応えます。現場に到着後は、傷病者に対し、ドクターヘリに同乗したフライトドクターがフライトナース(看護師)の協力のもと速やかに治療を行ない、適切な医療機関へと搬送します。早期に治療を開始できることが、患者を医療機関に搬送することを目的としている救急車とドクターヘリとの大きな違いとなっていますが、意外なことにドクターヘリにも救急車のようにサイレンが付いています。

消防本部指令室に119番通報が入ると、救急車を現場に出動させる一方で、状況によりドクターヘリの出動が基地病院に要請されます。フライトドクターとフライトナースを乗せたドクターヘリがランデブーポイント(救急車とドクターヘリが合流する場所。各道府県の運航調整委員会が事前に選定した「場外離着陸場」のこと)に着陸すると、フライトドクターとフライトナースは患者を搬送して到着した救急車に乗り込み、直ちに患者に治療を開始します。ドクターヘリが着陸するランデブーポイントは学校の校庭や公園、空き地などですが、比較的狭い場所にも着陸するため、ドクターヘリには小型のヘリコプターが使用されています。

BK117型ヘリコプターの利点、観音開きができる後方ドア。広い空間を確保でき、患者の搬出入を余裕をもって行なえる。 地上とキャビン床面の高さもストレッチャーの足を伸縮させるのに都合がよい高さなのだ。(PHOTO:川崎重工)

また、ドクターヘリはこうした「現場出動」のほか、多くの場合はより高度な医療を実施している医療機関に患者を搬送するため、“空飛ぶ救急車”として医療機関から別の医療機関へと患者を運ぶ「施設間搬送」も行なっています。さらに、離島や山間地など、病院が近くにないような場所へ医師を派遣する、あるいは患者を輸送するためにも活躍し、大規模災害時には消防防災ヘリや警察ヘリ、あるいは自衛隊や海上保安庁のヘリコプターなどと連携して救命活動にあたることになっています。

2022年4月現在、『認定NPO法人 救急ヘリ病院ネットワーク HEM-Net』によれば、47都道府県に56機のドクターヘリが配備されており、年間出動件数は2万5469件(2020年度実績)に上っています。

BK117型ヘリコプターの心臓、チュルボメカ アリエル ターボシャフトエンジン。(PHOTO:川崎重工)
猛烈な回転を受け止めて同調させるトランスミッション。ヘリコプターのキモとも言える部分だ。(PHOTO:川崎重工)

ドクターヘリには様々な機種のヘリコプターが用いられていますが、『トミカ』の『No.97 ドクターヘリ』は、川崎重工業の川崎式BK117型というヘリコプターがモデルとなっているようです。BK117型ヘリコプターは西ドイツ(当時)のメッサーシュミット・ベルコウ・ブローム(MBB)社(後にエアバス・ヘリコプターズ社)と国際共同開発された中型双発ヘリコプターで、1983年の初号機の納入以来、機体の改良を重ね、優れた技術力と高い信頼性により全世界で1700機以上の納入を誇っているベストセラー機です。後方に備えられた大きく開く観音開きのドアがあるのが特徴で、ここから患者搬送用のストレッチャーの出し入れを行なうことが出来るため、ドクターヘリに適した機体だと言えます。

現在の最新モデルは2019年に登場したD-3型で、フルフラットフロアを備えた余裕のあるキャビンスペース、多用途性に優れた後部の観音開きカーゴドア、高高度におけるホバリング(空中停止)性能の向上、最新の統合アビオニクスの搭載ならびにフェンストロン・テール・ローターおよび最新のベアリングレス・メインローター・システム(5枚ローター)の採用により、高性能、低騒音、低振動を実現しています。

『トミカ』で再現されているのは2001年に登場したC-2型のようで、これは従来機よりもキャビンスペースが30%拡大され、回転翼が改良されて騒音低減、飛行性能の向上などがはかられたほか、操縦に必要な各種情報をデジタル化した見やすい計器類で表示するグラスコックピット化がはかられた、新世代と呼ぶにふさわしい、パイロットへの負荷を低減したモデルです。

BK117型ヘリコプターは警察ヘリとしても使用されている。写真は石川県警の「いぬわし」と名付けられた機体。(PHOTO:石川県警)

『トミカ』の『No.97 ドクターヘリ』は『トミカ』の中でも異色作ですが、ドクターヘリ化されたBK117型ヘリコプターのスタイルを上手く再現しています。救急救命医療の最前線で日夜を問わず戦っているドクターヘリ。ぜひコレクションの救急隊に配備してあげてください。

(2023年1月15日改稿)

■川崎重工 川崎式 BK117C-1型 主要諸元(『トミカ』とは同一規格ではありません)

全長(mm):13000

全高(mm):3850

ローター直径(mm):11000

空虚重量(kg):1764

最大離陸重量(kg):3350

動力:チュルボメカ アリエル 1E2 ターボシャフトエンジン(出力410kW) ×2基

超過禁止速度:278km/h

巡航速度:247km/h

航続距離:550km

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