【火曜カーデザイン特集】 カローラはこれまで色々なモデルを模索 もちろんSUVもあった!

カローラにSUV? ならば思い出すのはスプリンター・カリブだ!

カローラクロスが間もなく登場するというところで、カローラにSUV? クロスオーバー? そんなのってアリ? と考える方も多いかもしれない。しかし、実はカローラは様々なモデルで試行錯誤も行なってきたという経緯もあるブランドだ。ミニバンのスパシオ、ハッチバックのFX、そして4ドアハードトップのマリノなど。なかでもSUVとして思い出すのは、カローラの兄弟車だったスプリンターにあった、カリブだ。(by Carstyling 松永大演)

RVブームに生まれた初代カリブは縦置きFFを4WD化

初代のスプリンターカリブは1982年に登場した。現代では消滅してしまったが、カローラの兄弟車であるスプリンターを名乗った4WDだ。とはいえベースとなったのはターセル、コルサ、カローラII。トヨタ初のFFとして縦置きエンジンとしたモデルだった。その縦置きレイアウトを活かして4WDとし、ステーションワゴン以上に大きく見える荷室を持った。リヤのサイドウインドウを大きくすることで、多くのスポーツギアを載せて、遊びに行かれる車としての価値をデザインでもアピールした。

カリブは1981年の東京モーターショーでRV5として参考出品され、翌年に発売された。ルーフまで回り込む、大きなリヤサイドウインドウは市販車ではややコンパクトに。

80年代からRVブームが巻き起こったが、このRVとはレクリエーショナル・ビークルの略。単にハイラックスサーフやパジェロなどのSUVだけでなく、ミニバンなども含めた外で遊ぶための車を幅広くRVとして一括りにしていた。そのカテゴリーをさらに拡大し、ちょっとライトに振ったのがカリブ。その翌年の83年にはユーティリティ部分にフォーカスしたともいえるシビックシャトルが登場、91年には三菱からRVRが登場するなど、カテゴリーとしての広がりを生んで行った。

遊びの車という大前提で登場した初代カリブ。下はマイナーチェンジモデル。
ヘッドランプが異形化した。

2代目以降カローラ/スプリンターベースに

スプリンターカリブは88年には、ベースをカローラ系に代えて2代目、そして95年には3代目と進化を続け一定の市場を育むというストーリーをたどる。そこでのコンセプトは常に変わらず、ワゴン専用ボディに4WDを組み合わせたものだった。個性的なリヤサイドウインドウをもち、フラットに切り落とされたリヤゲートとリヤピラーに沿った縦型リヤコンビランプは、カリブとしてのアイコンともいえた。

2代目モデルは1988年登場。ベースはカローラとなった。
1995年に登場の3代目カリブ。3代とも個性的なサイドウインドウ形状を持つ。さらに2代目以降ピラーを内側に傾けルーフを絞りスポーティに見せ、機動性の高さを表現。カリブとしての最終モデルとなった。

ヘビーデューティのストリートダウン的装い

まさに使い方を目に見える形として提案してきた、カローラ系の中でも非常にアクティブなモデルだった。

初代から主張されていたのは、遊び心ありきで生まれた車だったということだ。何かあるものを、遊びに利用するというのが一般的な車選びだったのだが、アウトドアスポーツのための車として、完全に割り切った形で登場させたのがカリブだ。そんな車を、日常使いするのがおしゃれ。

現代で言うならば、マウンテンバイクやトレッキングシューズのヘビーデュティさがっこいいから街中で使う感覚。街中だから普通の自転車、皮靴……ではなく、カッコイイから使う。

そこにあるのは、「だって、自分はそういう人間だから」。そんな風に自分をさり気なく主張できるのが、その人それぞれの持ち物にあったりする。その感覚を車に持ち込んだのが、カリブだ。

もちろんスポーツカーを日常で使って自己主張することもできるが、それはあくまでも車の世界だけの話。カリブは、その先の世界を車を介して主張することができたのだ。

現在クロスオーバーSUVが大きな人気を得ているが、その内側に隠されたのもそんな思いに違いない。SUVが好きなのではなく、その先にあるものが自分らしさなのだ、と。

カローラクロスが提供してくれる世界観にも、興味津々である。

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著者プロフィール

松永 大演 近影

松永 大演

他出版社の不採用票を手に、泣きながら三栄書房に駆け込む。重鎮だらけの「モーターファン」編集部で、ロ…