スズキ・ジムニー オフロードに行く予定はないけれど、気になる存在。普段使いは○?×?

大人気のスズキ・ジムニー。高速道路も100km/h(軽自動車の制限速度)なら問題なし。
相変わらずの人気を誇るスズキ・ジムニー。比類なき走破性が人気の源泉なのはわかっているけれど、単にカッコイイからジムニーを選ぶのはどうなのだろう?きっと「4L」に入れないけれど、それでもいい?
PHOTO◎山上博也(YAMAGAMI Hiroya)
スズキ・ジムニーXC(5MT) 車両価格○177万6500円

ジムニーの販売は依然として好調だ。現行ジムニーデビューしたのが2018年7月だから、すでに3年が経過している。平均月間販売台数の推移は
2018年(7~12月):2635台
2019年:2523台
2020年:3171台
2021年(1~7月):3393台

と勢いは衰えていない。現在でも納車待ちが続いているというから、おそらく、2021年は現行ジムニーになって最高のセールスを記録しそうだ。
小型車版であるジムニーシエラ(ジムニーワゴン)の平均月間販売台数は
2019年:902台
2020年:1384台
2021年(1~8月):1243台

となっている。やはり軽自動車のジムニーのほうが2.5倍程度売れている。

全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1725mm ホイールベース:2250mm
トレッド:F1265mm/R1275mm 最小回転半径:4.8m 最低地上高:205mm
車両重量:1030kg 前軸軸重560kg 後軸軸重470kg

熱心なファンを持つジムニー。比類なきオフロード走破性が購入理由の上位にあるのはよくわかるが、それだけではこの人気を説明できない。つまり、オフロードは走らないけれど、ジムニーに憧れて購入に踏み切る人がたくさんいると推測できる。

というわけで前置きが長くなってしまった。筆者も「ジムニーっていいなぁ」と思っているにわかジムニーファンのひとりだ。カッコイイし。ただし、もしジムニーを購入してもおそらく、一度もオフロード走行はしないだろう。副変速機の「4L」に入れることはほぼないだろう。「4H」も都内に雪が降る、豪雨に見舞われるなどごく悪天候のときに使うかどうか。おそらく、99%を後輪駆動で走行すると思う。

もちろん広くはないけれど、気持ちのよりコックピット。室内:長さ1725mm 幅1300mm 高さ1200mm
後席も余裕あり。175cmの普通体型の男性が前後に乗るのはまったく問題なし。
カップルディスタンスは近いけれど、前席2人乗りは快適。

それでもジムニーがほしい! けれどもオフロードにはきっと行かないだろうなぁという前提条件で、ジムニーを1週間ほど借りだして使ってみた。

借りだしたのはジムニーXC(5MT)だ。デビュー時のオフロード走行もさせていただいた試乗会以来のジムニードライブだが、乗った瞬間から、「やっぱりジムニーは楽しい!」と思わせてくれる。エンジンをブンブン回して、5MTのシフト操作を駆使して走る(が、さして速くない)。マツダ・ロードスターSの6MTモデルと似た感じ。エンジンは積極的に回さないと思ったような加速をしてくれない(それでも速くない)から、アクセルを遠慮なく踏み込む。R06A型660cc直3ターボは、別に気持ちがいい回転フィールがあるわけでも爽快なエキゾーストノートがあるわけでもない。でも、「アクセルを深く踏み込む」という行為そのものが楽しい。

80km/h巡航 5速で約3000rpm
100km/h巡航 5速で約3800rpm

ほど。

形式:直列3気筒DOHCターボ 型式:R06A 排気量:658cc ボア×ストローク:64.0mm×68.2mm 圧縮比:9.1 最高出力:64ps(47kW)/6000pm 最大トルク:96Nm/3500rpm R06A型は従来のK6A型と比べると、重量で4.8kg軽く、全幅で60mm小さくなっている。しかし、最大トルクは7Nm低い。

通勤で使ってみる。出社時は渋滞も含む市街地を走る。渋滞で前走車がスタートして、ちょっとぼーっとしていると、インパネには「前走車がスタートしました」というアラートが出る。USBで繋いだiPhoneのAppleミュージックから流れる音楽は、思いのほかいい音。もちろん、エアコンだってばっちり効くし、なんの不自由もない。というより、周囲の大きなSUV、セダンより断然自由な感じがするのが不思議だ。

都内を走っていると、同じジムニーに出合うよりもメルセデス・ベンツGクラスやジープ・ラングラーとすれ違う、あるいは隣同士になる機会が多い。信号でGクラスと並んで停まっていても、なんとなく「やぁご同輩、やっぱりこういうクルマはいいよね。あなたも、好きでこういうクルマ選んでいるんでしょ? 我々、自由だよね」というまるで根拠のない共感を覚えてしまう(きっとGクラスの人はそう思ってないだろうけど)。

ステアリング機構は、ラック&ピニオンではなく、伝統の「ボール&ナット式(リサーキュレーティングボール式)。

エンジンをブンブン回して走るのは楽しいのだけれど、交差点を走り抜けるときのハンドル操作は、最初はちょっと驚く。「あれれ、ステアリングホイールを切っても切っても曲がらないぞ」と思うのだ。ステアリングのギヤ比がスロー。いまや数少ないボール&ナット式(リサーキュレーティングボール)のステアリング機構(電動パワーステアリングはコラムアシスト式)をとるジムニーは、きっとこのギヤ比がオフロードで生きるのだろう。ステアリングの重さもちょうどいい。スローなギヤ比に慣れれば、まったく問題ない。

新車発表後の試乗会の取材メモを見ると

「ステアリングはボール&ナット。ラック&ピニオンするには独立懸架でないと基本的に難しい。機構はジェイテクト製。20年間大きな問題もない高い信頼性がある。開発エンジニアは”このハンドリングって、ちょっと昔の懐かしい感じだよね。いまのラック&ピニオン式のぴゅっとすごく切れ込んでいくのではなく、優しい感じが特徴のある乗り味になるじゃないか”と考えたそう」
と書いてある。
まさにその通りの乗り味だ。

夜になって東新宿にある編集部から明治通りを使って、新宿~原宿~渋谷駅前を通って帰る。渋谷駅前はいつ終わるのかわからない工事が続いていて、ものすごく路面が荒れている。ここを走り抜けるときに、ジムニーのフレーム構造が生きる。現行モデルの開発では軽量化より走りの質を重視したという。フレームががっちりした分、上物もがっちりしている。それが街中でも感じ取れるのだ。

タイヤは185/60R14サイズのブリヂストン DUELER H/T684Ⅱ
リヤサスペンションも3リンクリジッドアクスル式
フロントも3リンクリジッドアクスル式

WLTCの市街地燃費は14.4km/ℓだが、実際に通勤で数日使ってみたところでは、12.8km/ℓほどだった。

脳内妄想で「ジムニー買うなら5MTかな、4ATかな」と考えたことがある。シフト操作がどうこうよりも、「4」より「5」のほうが良さそうだから5MTかな、と漠然と思っていた。今回の試乗でそれぞれのギヤ比を調べてみた。トランスファー(アイシン製)のギヤ比は高速減速比:1.320、低速変速比:2.643でMTもATも同じだ。

5MT
1速:5.809
2速:3.433
3速:2.171
4速:1.354
5速:1.000
後退:5.861
最終減速比:3.818

4AT
1速:2.875
2速:1.568
3速:1.000
4速:0.696
後退:2.300
最終減速比:5.375
ってきり5MTの5速はオーバードライブだと思っていたら、1.000で直結だった。最終減速比と掛け合わせても5MTの5速:3.913 4ATの4速:2.314(3速は3.818)だから、5MTの5速と4ATの3速がほぼ同じ。つまり100km/h巡航時のエンジン回転数は4ATの方が低いということになる。

燃費は
5MT(4AT)
WLTCモード燃費:16.2km/ℓ(13.2km/ℓ)
 市街地モード 14.4km/ℓ(11.0km/ℓ)
 郊外モード 17.3km/ℓ(13.8km/ℓ)
 高速道路モード 16.4km/ℓ(14.0km/ℓ)

とずいぶん違う。個人的な好みでは5MTだが、案外(燃費以外)は4ATも悪くないのだろうな、と感じた。

今度はちょっとしたドライブに連れ出してみた。往復で300km。半分高速道路、4割郊外路といったシチュエーションだ。高速走行は、軽自動車の高速道路での制限速度(100km/h)までだったら、問題ない。思ったよりも車内は静かだし、重心が高くてフラフラすることもなかった。ただし、80~100km/h巡航を淡々とこなしても燃費がぐんぐん上がっていく感じはしない。高速道路の燃費は15km/ℓ+αくらいだろう。

エンジン回転数は 80km/h巡航 5速で約3000rpm 100km/h巡航 5速で約3800rpm
ステアリングのギヤ比がスローなのに最初戸惑う。
5MTを駆使して走るのは楽しい。その手前の副変速機には触れなかったけれど。

今回、トータルで405.9km走った結果、燃費は13.8km/ℓだった。暑い最中にエアコンをフルに効かせての燃費だから、まぁまぁと言える。最初に書いたように、今回の試乗は、ジムニーでなくては走れないところはゼロ。それでも1週間ともに過ごしてみた結果、「ジムニー、やっぱりいい」と思った。筆者の場合、マツダ・ロードスターS(エントリーグレードの6MT)かジムニーXCか、というような迷い方をすることになりそうだ。ジムニーとロードスターで迷う? と思うかもしれないけれど、いまのジムニー人気の一端(ほんと一端かもしれないけど)を支えているのは、こういう人気なのだろう。手に入れても、一度もオフロードを走らないジムニー。でも、これだけ洪水などの災害が都市部で増えてきたいま、ジムニーを持っている安心感は他には代えられない(いや、Gクラスやランクルが買える人は別ですが)のである。それにやっぱりカッコイイしね。

いわゆるラゲッジルームはないに等しい。女性のハンドバッグ程度なら載るけれど。
後席は分割可倒式。
後席を倒せば、荷物はかなり積める。
スズキ・ジムニーXC(5MT)ボディカラー キネティックイエロー
スズキ・ジムニーXC(5MT)
 全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1725mm
 ホイールベース:2250mm
 車重:1030kg
 サスペンション:F&R 3リンクリジッドアクスル式
 駆動方式:パートタイム4WD
 エンジン
 形式:直列3気筒DOHCターボ
 型式:R06A
 排気量:658cc
 ボア×ストローク:64.0mm×68.2mm
 圧縮比:9.1
 最高出力:64ps(47kW)/6000pm
 最大トルク:96Nm/3500rpm
 燃料供給:PFI
 燃料:無鉛レギュラー
 燃料タンク:40ℓ
 トランスミッション:5速MT
 WLTCモード燃費:16.2km/ℓ
  市街地モード 14.4km/ℓ
  郊外モード 17.3km/ℓ
  高速道路モード 16.4km/ℓ
車両価格○177万6500円
 メーカーオプション
 フロアマット 2万515円 パイオニアスタンダードワイドナビセット 14万9435円
 ETC 2万2220円 USBソケット、USB接続ケーブル 7535円 ドライブレコーダー 3万7950円

著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…