覚悟しろ! GT-Rのパトカーに追われたら、もう逃げ切れないぞ! トミカ × リアルカー オールカタログ / No.105 日産 GT-R パトロールカー

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.105 日産 GT-R パトロールカー (サスペンション可動/左右ドア開閉・希望小売価格550円・税込)
栃木県警 GT-R パトロールカー実車フロントビュー。(PHOTO:栃木県警)
栃木県警 GT-R パトロールカー実車リヤビュー。(PHOTO:栃木県警)

『トミカ』のNo.105は『日産 GT-R パトロールカー』です。日産GT-Rは日産のスポーツモデルの象徴とも言える最高級・高性能スポーツカーで、2007年にデビューしました。もともと日産の高性能スポーツモデルとしては、日産の代表的中型セダンのスカイラインに高性能エンジンを詰め込んで作られたスカイラインGT-Rがありました。スカイラインGT-Rは長らく日産の高性能スポーツモデルのトップに君臨していましたが、好調に代を重ねていくうちに、「そもそも日産を代表しようという高性能スポーツカーが、中型セダンであるスカイラインのシリーズの中の特殊モデルで良いのだろうか?」という当たり前とも言うべき疑問が日産の中に生まれてきました。

日産 GT-R 実車フロントビュー(2017年モデル)
日産 GT-R 実車リヤビュー(2017年モデル)

そこで「高性能スポーツカーは中型セダンのスカイラインとはもう切り離して考え、日産を代表するにふさわしい徹底的に高性能なスポーツカーを専用設計で新たに作ろう」という考え方で誕生したのがR35型GT-Rです。このような経緯から、名前こそGT-Rですが、スカイラインとはまったく関係のない車両になっています。

GT-Rの心臓、V型6気筒ツインターボのVR38DETT型エンジン。
GT-Rのエンジンには組み立てを担当した『匠』と呼ばれる熟練職人のネームプレートが装着される。

さて、GT-Rには前後重量配分が適正化された専用の『PMプラットフォーム(“PM”は“プレミアム・ミッドシップ”の略)』が用いられています。このプラットフォームはエンジンとトランスミッションをつなぐトルクチューブがない独立型トランスアクスル構造で、軽量化と振動の低減がはかられています。さらに改良版のアテーサET-S四輪駆動システムと組み合わせたことにより、世界初の独立型トランスアクスル4WD構造となりました。これにより、どんな状況でも安定して高速で走行できるようになっています。エンジンは3.8ℓ、V型6気筒ツインターボのVR38DETT型。これは『匠(たくみ)』と呼ばれる特別に熟練した職人さんが1人で1台を担当し、手作業で組み立てられる高性能エンジンです。

R35型GT-Rは毎年進化するイヤーモデル制を採っているため、毎年ごとに細かな違いがありますが、見た目での大きな変化が認められるのは6パターン程度。明らかに大きく違って見えるのは2017年以前と以後、あるいは2022年以前と以後です。2017年モデルからはGT-Rにも日産車に共通するデザインのVモーショングリルが採用され、全体が細部にわたって形状変更を加えられて全長が延長されると同時に、空気抵抗、ダウンフォース、冷却性能の点で高性能化に貢献するデザインになっています。

2017年モデルのGT-Rのコクピット。レーシングカーのようにシンプルで機能的だ。パトカーではさらに無線機などが装備される。

この2017年モデルに続く2018年モデルの“Pure edition(ピュアエディション)”のGT-Rをベースとして作られたのが日産GT-Rパトカーで、これは2023年2月現在でも国内に1台しか存在しないようです。この貴重なGT-Rパトカーを使用しているのが栃木県警で、県警高速隊に配属されて高速道路での交通取締に加え、各種のイベントにおける警察の広報活動にも用いられています。また、このパトカーは栃木県警が警察の予算で購入したわけではなく、栃木県内の男性から「交通事故抑止対策に役立ててほしい」と寄付されたものだというから驚きです。

実は栃木県警はフォード・マスタング・マッハ1など、昔から高性能スポーツカーのパトカーを用いている県警として有名で、2023年2月現在でも、この日産GT-Rのほか、日産Z33型フェアレディZ“バージョンNISMO”、ホンダNA2型NSXが県警高速隊に、レクサスLC500が交通機動隊にそれぞれ配備されて活躍しています。日本で最も多くのスーパー・パトカーを使用している県警でしょう。そして、これらのスーパー・パトカーもすべて寄付されたものだというのが驚きです。NSXとフェアレディZは栃木県内に工場を構えているホンダと日産のそれぞれの自動車メーカーから、そしてレクサスはGT-Rと同じ方からの寄付とのこと。ちなみに昔、使用されていたマスタングはJA共済連栃木からの寄付車だったそうです。

栃木県警のスーパー・パトカー軍団。右からGT-R、フェアレディZ、NSX。(PHOTO:栃木県警)

このようなスーパー・スポーツカーが栃木県警に導入されている背景には、県内も走る東北自動車道の存在もあるようです。マスタングが導入された1972年は東北自動車道の岩槻IC~宇都宮IC間が開通し、県警でも交通の高速化が予見された年でもあります。東北自動車道は基本的に直線が多く、高速度域での交通違反が見込まれたため、違反車両に追いつける高速性能を持ったパトカーが必要だったというのが、栃木県警にスーパー・パトカーが装備された大きな理由のようです。2022年10月12日からは栃木県内では佐野藤岡IC付近において最高速度が120km/hに引き上げられ、ますます交通違反の高速化が見込まれています。不幸な事故が起こらないよう、その高速性能をもって事故や違反を抑止あるいは未然に阻止することも、GT-Rパトカーをはじめとしたスーパー・パトカー軍団の重要な役目なのです。

R35型GT-Rの最新モデルは2022年モデル。すでに理想的なフォルムを得ているため、以前のモデルと外形的な差異は乏しい。

さて、『トミカ』の『No.105 日産 GT-R パトロールカー』は、言うまでもなくこの栃木県警のパトカーをモデルとしています。ですから車体にも栃木県警の文字がしっかり入れられています。どうやら2017年モデルを再現したと思われる、2023年2月現在の『トミカ』の『No.23 日産 GT-R』と同様の型を用いてい作られているようですが、実車のGT-Rの2017年モデルと2018年モデルは外観に大きな差異はないので、実車と比較してもおかしな部分は見つかりません。総じてよくできたモデルだと言えます。ぜひ、あなたの高速隊にもこの最強のパトカーを配備してはいかがでしょう?

■日産 GT-R Pure edition 主要諸元(『トミカ』モデル車両と同一規格ではありません)

全長×全幅×全高(mm):4670×1895×1370

ホイールベース(mm):2780

トレッド(前/後・mm) :1590/1600

車両重量(kg):1740

エンジン形式:型 VR38DETT型 V型6気筒DOHCツインターボ

排気量(cc):3799

最高出力:404kW(550ps)/6400rpm

最大トルク:632Nm(64.5kgm)/3200-5800rpm

トランスミッション:6速AMT

サスペンション(前後):ダブルウィッシュボーン

ブレーキ(前後) :ベンチレーテッドディスク

タイヤ:(前) 255/40ZRF20(97Y) (後)285/35ZRF20(100Y)

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