911を凌駕する走りの楽しさ!「PORSCHE 718 BOXSTER」【最新スポーツカー 車種別解説】

当初は911よりコストを抑えたポルシェのエントリーモデルとして生まれたが、現在ではオンリーワンのポジションを確立した「718ボクスター」。ダウンサイジングされたオープンボディにミッドシップのメリットを活かしたコーナリングの楽しさで、ポルシェの底力を見せつける。
REPORT:石井昌道(本文)/工藤貴宏(写真解説) PHOTO:平野 陽 

往年のミッドシップレーシング 「718」の名を受け継いで

2021年にデビュー 25周年を迎えたボクスター。初代モデルはAピラーより前のフロントセクションを911と共通とし、ミッドシップでオープン、リヤサスペンションは911に比べると簡素なストラットでコストを抑えつつ爽快なポルシェのエントリーモデルとして生まれてきた。瞬く間に人気者となって、芳しくなかったポルシェの業績を見事に回復させた。

エクステリア

クローズドボディベースのオープンカーではなく、もともとオープンカーとして 開発されたモデルだけあってプロポーションに隙がないのはさすが。1996年に登場した初代に比べると車体は大きくな っているが、全幅はわずか20mmの拡大に留まるので今どきのスポーツカーとしては十分にコンパクトだ。
一般的に「重心が低い」と言われる水平対向エンジンだが、ボクスター(をはじめポルシェのスポーツモデル)ではさらに低い位置に搭載すべくドライサンプ化。その結果、エンジンは驚くほどの低い位置に積まれ、その上に閉じた幌を置く設計となっている。
撮影車両が履くのは「20 インチ Carrera S」ホイールで、「ボクス ター S 」に標準装備。ボクスターシ リーズ全体としては、18インチか ら20インチまで合計8タイプのホ イールをラインナップする。

現在では718ケイマンとともに、911ベースのコストダウンモデルではなく、両雄並び立つスポーツモデルという立ち位置となっている。現行モデルは16年に登場。1950年代に活躍した4気筒エンジン+ミッドシップの718というレーシングカーにちなんだ数字をつけた車名にするとともに、時代の要請によりダウンサイジングターボ化されたのが特徴だ。

インテリア

T 字型レイアウトにスロープ状のセンターコンソール、そしてシフトレバーの前後にスイッチを集中配置するなど今どきのポルシェのセオリーに従ったレイアウト。イエロー(レッド、グリーン、シルバーも設定)のアクセントはオプションだ。
スポーツカーらしい低着座姿勢。「ボクスターT」は標準シートに対して背もたれの再度ポートを強化した「スポーツシートプラス」を組み合わせ標準状態は背もたれのみ電動調整。前後や高さ などすべてを電動化するオプションも選べる。
メーターはスポーツカーの伝統を守り、シンプルで大きな回転計を中央にレイアウト。右は車両情報を切り替えて表示するマルチディスプレイだ。
足元はオルガン式アクセルでヒール&トゥのしやすさよりも確実な操作性を重視。

フラット6NAに代えて搭載されたフラット4ターボは、不等長エキマニのため、昔のスバル車のようにドコドコドコッという独特のビートを発する。それをワイルドでやんちゃなキャラクターと好意的に受け止める向きもあったが、多くのファンは失望。それもあってか、19年には718スパイダー、 20年には718ボクスターGTS4.0の6気筒NAが相次いでラインナップに加えられた。ダウンサイジングターボは環境性能対応だったが、ピエゾインジェクターや気筒休止などの採用でフラット6NAでもクリーンにすることができたのだ。

走る楽しさは圧巻! 911より上かもしれない

フラット4ターボは、低回転から図太いトルクを発生。Sの2.5バージョンではガソリン・ターボには珍しいVTG(可変ジオメトリーターボ)を採用してレスポンスも抜群にいい。路面変化が激しく、アップダウンが多いワインディングロードなどを走らせると、いついかなる場面でもアクセルを踏み込んだ瞬間からグイッと頼もしく加速体制に移る性能に文句の付けようはない。ピックアップの良さは、直列も含めれば数多ある4気筒ターボの中でも異色の出来だろう。ただし、前述のようにフィーリングは好ましくないという人も少なくない。

うれしい装備

ルーフ開閉は電動式でスイッチはセンターコンソールの中心的場所に設置。 
軽量化と雰囲気演出のため、「ボクスター T 」のドアオープナーは ストラップ式を採用。 
走行モード の切り替えダイヤルはハンドルに組み込まれ、運転中も操作は容易にこなせる。 
「スポーツクロノパッケージ」のアイコンとしてダッシュボードにストップウォッチが備わる。
Country    Germany
Debut      2016年4月(ボクスターT追加:20年6月) 
車両本体価格   807万円〜1404万円

それに比べるとフラット6NAは夢のように官能的だ。特有のビート感などはなく、上質で滑らかかつ鋭く吹け上がっていき、トップエンドでは突き抜けるような快感がある。フラット4ターボのレブリミットが7500rpmなのに対してスパイダーは8000rpm、GTS4.0は7800rpm。上限が引き上げられているだけではなく、回転が高まるに連れて尻上がり的にパワーとサウンドが盛り上がっていく。ハンドリング性能はミッドシップのメリットを活かして世界トップレベル。911よりもコーナリングでの楽しさは上といってもいいだろう。ただし、リヤサスペンションは911がマルチリンクなのに対してストラットなので絶対的な性能は一歩譲る。そういったヒエラルキーはあるものの、楽しさでは勝っているのだ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.143「2022-2023 スポーツカーのすべて」の再構成です。

http://motorfan-newmodel.com/integration/143/

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