そろそろモデルチェンジ? まだまだ一線級の人気と実力を誇るホンダ・フリードをチェック!【Honda FREED深掘り試乗コラム】

今年、デビュー後まる8年を経過したにも関わらず、ホンダ・フリードの人気は衰えることを知らず、販売は好調に推移している。ライバルのシエンタは新型に切り替わっているから、なおさらその印象は強まる。スペース効率の高さはもちろん、しっかりした走りや、癖がなく誰でも受け入れやすいスタイリングなど、総合力の高さがロングヒットにつながっているのだろうか。
REPORT:安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO:中野幸次(Nakano Koji)

最新シエンタを凌ぐミニバン売り上げナンバーワン

国産ミニバンカテゴリーにおいて、22年度下半期に最も売れたモデルがフリード。登録車販売台数ランキングでも、フィットやヴェゼルを抑えて6位にランクインしている。驚くべきは、同年8月に新型に生まれ変わったシエンタが8位と、フリードの方が上回っていることだ。現行フリードは16年6月のデビューだから、今年でまる8年が経過。フルモデルチェンジの声も聞こえてくる中で、この成績は大健闘。それだけ商品としてのバランスが良いということだ。

フロントグリルをはじめアクティブな加飾が施された「クロスター」が人気だ。

カテゴリーはコンパクトミニバンに属し、2列目がキャプテンシートの3列6人乗りと、ベンチシートの3列7人乗りを用意。派生モデルのフリード+(プラス)は、サードシートを外した5人乗りとしているのに加え、2列目の折り畳みをタンブル方式からダブルフォールディング式へと変更。折り畳んだ2列目シートとラゲッジフロアの間に段差がつかないようにするデッキボードを備えた“車中泊仕様”となっている。フラット面の前後長は185cmに達するから、日本人なら9割以上の人が横になれるのではないか。

パワートレーンは2種類を用意。1.5Lの自然吸気エンジンと、それをハイブリッド用に仕立て直し、ホンダ独自の1モーターハイブリッドシステム“i-DCD”と組み合わせたハイブリッド仕様だ。後者は7速DCTの奇数軸に22kW/160Nmのモーターを設け、奇数段でのモーター走行とエネルギー回生に加え、全段モーターアシスト走行を可能にしたもの。発進は基本的にモーターで行われ、モーター走行の最高速は約70km/h。バッテリーにはリチウムイオン電池を採用する。

ホンダのハイブリッド車はコンパクトカーのフィット、ヴェゼルも含めて2モーターの「e:HEV」に移行中だが、フリードは従来タイプの1モーター「i-DCD」を搭載する。

ホンダのハイブリッドシステムは、2モーター式のe:HEVシステムに移行しつつあり、i-DCDはフルモデルチェンジを機に消えてしまう運命にあるが、技術的な面白さはホンダらしく、なくなる前に手に入れるのも一興かも知れない。

駆動方式はFFのほか、全グレードに4WDが用意される。4WDシステムには、ハイブリッド車も含めて電子制御多板クラッチ式を採用。発進アシストモーターをリヤにつけるより、後輪の駆動トルクが大きくできるため、操縦性能の向上にも使えるからというのがホンダの弁だ。

そこはかとなく上品さを醸し出すスタイリング

誰にでも似合うような落ち着いたスタイリングもフリードの人気の一因だ。

外観に奇抜さはまったくなく、加飾も派手でない落ち着いたデザイン。かといって退屈なほど事務的ではなく、そこはかとない上品さが醸し出されている。これだけでも売れている理由がわかる。

インテリアもすっきりとしていて落ち着きがあるが、フル液晶メーターが当たり前となり始めた昨今、薄型のデジタル式センターメーターが少々古臭さを感じさせる。

多層構造のインパネデザインは、運転していない時にも「基地感」があって楽しい。

試乗車は「フリード+」のハイブリッド仕様。シフトセレクターは電子スイッチ式で、操作パターンはプリウスと同じく、常に中立位置に戻る方式だが、フリードハイブリッドの暴走事故が多いという話は聞いたことがないので、問題はシフトパターンにあるわけではないと思う。

スタートスイッチを押してもエンジンはかからないが、Dレンジに入れてごく普通に発進すると、20km/h出ないくらいでエンジンがかかる。モーター走行は奇数段でしかできないため、2速にシフトするタイミングでエンジンをかけざるをえないからだ。エンジン稼働中の振動と騒音はそれなりにあり、電動感は薄い。

ホンダらしい引き締まり感のある乗り心地

意図的にアクセルオフしてモーター走行を誘っても、トヨタのTHS-IIほどは応えてくれない。一方で、7速DCTの変速は小気味良く、エンジンを含めたシステムの稼働状態は把握しやすい。ハイブリッドだと意識して乗るより、7速DCTの変速が楽しめて、燃費もほどほどに良い、というクルマではないかと思う。

特に7速DCTはレシオカバレッジが9.3もあり、トップギヤの減速比が0.446と超高速。THS-IIやe:HEVよりも、高速走行時のエンジン回転数は低く抑えられる。WLTCモード燃費を見ても、高速モードの伸びが著しく、ロングドライブ適正は高い。

「+」は2列シート車のため、2列目はベンチタイプだ。
5ナンバーサイズの車幅ながら、ゆったりしたスペースの前席。

乗り心地はホンダ車らしい引き締まり感があるが、サスの初動に少し渋さがあり、低速で荒れた路面を通過すると、少しひょこひょこする動きが出る。ジョイント通過時には、タイヤの硬さを感じることもある。とはいえ、大衆的な価格のファミリーカーとしては目くじらを立てるようなアラはなく、良くまとまっている。

操舵の手応えは軽すぎず、タイヤの接地感は掴みやすいが、直進時にセンターが少し落ち着かない感じがする。舵が効いてからの手応えはしっかりしているので、もう少し直進時に落ち着きがあれば、長距離ドライブでも疲労が少なくなるのではないか。

フリードプラスのハイライトは荷室空間だろう。極低フロアになっており、二段ラゲッジとして使用できるのがユニークだ。
ダブルフォールディング式の後席を畳むときれいなフラットフロアが出現。170cmくらいの大人ふたりが余裕で横になれる。

燃費はいつのもコース(郊外の市街地を含む一般道9.6km)を走って21.3km/L。流れが良く燃費に有利な条件だったとはいえ、WLTCモードを2%上回ったのは立派だ。

ホンダ フリード+ HYBRID CROSSTAR(FF)


全長×全幅×全高 4295mm×1695mm×1695mm
ホイールベース 2740mm
最小回転半径 5.2m
車両重量 1450kg
駆動方式 前輪駆動
サスペンション F:マクファーソン式 R:車軸式
タイヤ 前後:185/65R15 

エンジン種類 水冷直列4気筒横置
エンジン型式 LEB
総排気量 1496cc
内径×行程 73.0mm×89.4mm
最高出力 81kW(110ps)/6000rpm
最大トルク 134Nm(13.7kgm)/5000rpm
トランスミッション 7AT

燃費消費率(WLTC) 20.9km/l

モーター種類 交流同期電動機
モーター型式 H1
最高出力 22kW(29.5ps)/1313-2000rpm
最大トルク 160Nm(16.3kgm)/0-1313rpm

価格 2,919,400円

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著者プロフィール

安藤 眞 近影

安藤 眞

大学卒業後、国産自動車メーカーのシャシー設計部門に勤務。英国スポーツカーメーカーとの共同プロジェク…