フェラーリが誇るPHEVスーパーカー見参!! フェラーリ SF90 ストラダーレ / トミカ × リアルカー オールカタログ No.120

発売から50年以上、半世紀を超えて支持される国産ダイキャストミニカーのスタンダードである『トミカ』と、自動車メディアとして戦前からの長い歴史を持つ『モーターファン』とのコラボレーションでお届けするトミカと実車の連載オールカタログ。あの『トミカ』の実車はどんなクルマ?
No.120 フェラーリ SF90 ストラダーレ (サスペンション可動・希望小売価格550円・税込)

『トミカ』と呼ばれるミニチュアカーには現在、様々なシリーズがありますが、ファンの間で「通常シリーズ」あるいは「ベーシックシリーズ」などと呼ばれる基本形のシリーズは全120車種です。これは毎月第3土曜日の「『トミカ』の日」に、基本的には2車種ずつ新車に入れ替わり、常に120車種が維持されるようになっています。2023年4月現在、この『トミカ』のラストナンバーであるNo.120を飾っているのが『フェラーリ SF90 ストラダーレ』です。

フェラーリ SF90 ストラダーレ 実車フロントビュー(標準仕様)
フェラーリ SF90 ストラダーレ 実車リヤビュー(標準仕様)

SF90 ストラダーレは、イタリアの自動車メーカー、フェラーリが製造販売している、いわゆる“スーパーカー”と呼ばれる高級高性能スポーツカーです。フェラーリは、もともと自動車レース活動を目的に設立されたため、基本的にはレーシングカーと高級スポーツカーしか製造しない自動車メーカーとして世界的に有名です。現在でもF1世界選手権レースなどに参戦していますから、ご存じの方も少なくないでしょう。その自動車レースのチームとしての名前を“スクーデリア フェラーリ”と言いますが、SF90 ストラダーレの“SF90”とは、レーシング・チームとしての創設から数えてフェラーリの90周年を記念した名前になります。“SF”は“スクーデリア フェラーリ”の頭文字をとったもので、“90”は“90周年”を意味します。また、“ストラダーレ”とはイタリア語で“公道用市販車”を意味します。

このSF90 ストラダーレはフェラーリにとって、2023年4月現在、『トミカ』でも『No.62 ラフェラーリ』として発売されているラ フェラーリに続く2車種目のハイブリッド車となりますが、そのハイブリッド・システムは電気モーターだけでも走行できるプラグイン・ハイブリッド・システム(PHEV)です。当然、フェラーリ初のPHEV車で、なおかつハイブリッド・システムが発揮する強力なパワーをフル活用するために、フェラーリのスポーツカーとして初となる4WDシステムも備えています。

SF90 ストラダーレはフェラーリ初のプラグイン・ハイブリッド車。強力なV型8気筒エンジンに3基の電気モーターが組み合わされ、電気モーターだけでの走行も可能だ。

ハイブリッド・システムの核となるのは574kW(780ps)の最高出力を誇るF154FA型 V型8気筒DOHCターボ・エンジンで、これに3基の電気モーターが組み合わされます。3基のうちの1基はF1マシンでも使用されているMGU-K(運動エネルギー回生システム)と呼ばれるもので、減速時の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収してバッテリーに蓄え、蓄えたエネルギーを加速に利用します。これはエンジンとトランスミッションの間に配置されて後輪を駆動させます。残る2基はフロント・アクスル(車軸)の左右に搭載され、それぞれ左右の前輪を駆動させます。このモーター装備の前車軸のことを“RAC-e(電子コーナリング・セットアップ・レギュレータ)”と呼びます。

SF90 ストラダーレはステアリングホイールに特別装備したエレクトロニック・ビークルダイナミクス・モードセレクター“eManettino(イー・マネッティーノ)”により、ドライバーは、4つの異なるパワーユニット管理モードを自由に選べますが、完全電動の“eDrive”モードを選択すると、この“RAC-e”の前輪の2基のモーターだけで25kmの距離まで走行することができます。

F1グランプリで最もテクニックが必要とされると言われるモナコの市街地コースを疾走するSF90 ストラダーレ。電気モーターによるトルクベクタリングで軽々と、しかも高速で急カーブを走り抜けることが可能だ。

さらに、このモーターは電動走行のためだけでなく、2基のモーターによって左右前輪をそれぞれ独立してトルク制御し、左右のトルク配分を自在に制御することで旋回時の車両の挙動を安定させる、いわゆるトルクベクタリングにも用いられます。

このようなハイブリッド・システムの採用は全体的に重量が増加してしまうため、SF90 ストラダーレは先進技術はもちろんのこと、最高強度のアルミ合金やカーボンファイバーなど複合素材の導入により、シャシーやボディの徹底的な軽量化がはかられています。また、強力なパワーを発揮すると放熱の必要性も増えるため、エンジンのみならず電気モーターやインバーター、バッテリーにいたるまで徹底した放熱・冷却対策が盛り込まれています。これらはボディやシャシーの空力性能を低下させないように考えられています。

SF90ストラダーレのスタイリングは新世代を感じさせるもの。コックピットは従来よりも前面投影面積が小さくされ、位置も車体前方に移動させている。

この空力性能の向上のために新たに採用された空力装置が“シャット・オフ・ガーニー”と呼ばれるものです。これは車体後部上面のパネルに内蔵されたフラップが電動アクチュエータでパネルとともに下降し、上面の空気の流れをせき止めることによってダウンフォース(下向きの力)を発生させるもので、特に横方向の動荷重(運動する物体が構造物に与える力)が低い高速走行時でのボディ上面気流を制御し、大きなダウンフォースが必要となるコーナリング時やブレーキング時、方向転換時に役立たせようというものです。

「目は路上、手はステアリングホイール」という考え方が中心に据えてデザインされたインテリア。インパネは16インチ曲面 HD スクリーンを用いてフェラーリ初のフルデジタル化。

車のスタイリングは近年のフェラーリのスーパーカーの流れを汲んだもので、コックピットはドラッグ(抗力)低減を図るべく、従来よりも前面投影面積が小さくされ、位置も車体前方に移動しています。また、このSF90 ストラダーレで初めて、レースから生まれた「目は路上、手はステアリングホイール」という考え方が中心に据えられました。それを象徴する装備がヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD)で、さまざまなデータをドライバー正面のフロントガラスに映し出すことで、視認性を高めています。また、中央のインスツルメントパネルは16インチ曲面 HD スクリーンによってフェラーリ初のフルデジタル化され、ステアリングホイールに設置されたタッチパッドとハプティック・ボタンによって、ドライバーが親指だけで様々な機能を制御できるよう操作ができます。

サーキット走行のために性能を突き詰めた“セット・フィオラーノ・パッケージ”と呼ばれる仕様。カーボンファイバーの多用など、徹底した軽量化がはかられている。

SF90 ストラダーレには標準仕様に加え、サーキット走行のために性能を突き詰めた“セット・フィオラーノ・パッケージ”と呼ばれる仕様もあります。こちらは内装が簡略化されると同時に各部をカーボンファイバー製に置き換えることでさらなる軽量化がはかられ、リヤスポイラーの後端部も跳ね上げるように高められています。

『トミカ』の『No.120 フェラーリ SF90 ストラダーレ』は、2019年に登場したこのスーパーカーの標準仕様をモデル化しているようです。先進的でありながらもフェラーリらしい優美なフォルムが上手く再現されており、コレクションに加えたくなる1台でしょう。また、同じフェラーリのハイブリッドカーである『No.62 ラフェラーリ』と並べて比較してみるのも興味深いことでしょう。

■フェラーリ SF90 ストラダーレ 主要諸元

全長×全幅×全高(mm):4710×1972×1186

ホイールベース(mm):2650

トレッド(前/後・mm) :1679/1652

車両重量(kg):1570

エンジン形式:型 F154FA型 90度V型8気筒DOHCターボ

排気量(cc):3990

最高出力:574kW(780ps)/7500rpm

最大トルク:800Nm(81.6kgm)/6000rpm

電気モーター最高出力(3基合計):162kW(220ps)

ハイブリッド・システム最高出力:735kW(1000ps)

トランスミッション:8速AMT

サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン/マルチリンク

ブレーキ(前後) :ベンチレーテッドディスク

タイヤ:(前) 255/35ZR20 J9.5 (後)315/30ZR20 J11.5

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