ケータハムが将来のEVのための技術開発コンセプト「EVセブン」を発表!

ケータハム・カーズは5月24日、将来の完全電気自動車のための技術開発コンセプト「EVセブン」を発表した。

243ps/250Nmのモーターと51kWhバッテリーを搭載。4.0秒の0-60マイル(約97km/h)と209km/hの最高速を見込む

このコンセプトは、軽量なEVの実現可能性を検証するもので、ケータハムは、ガソリン車と同様にドライバーに焦点を当てたバッテリーEV(BEV)を市場に投入することに一歩近づくことができる。

EVセブンは、公道用およびモータースポーツ用の先進的で頑強なパワートレイン開発のリーダーであるスウィンドン・パワートレイン社と共同で開発。大型のセブン用シャシーをベースに、スウィンドン・パワートレイン社による専用E Axleを採用し、液浸冷却式バッテリーパックを組み合わせている。

バッテリー液浸冷却は、ケータハムの長年の技術パートナーであるMOTUL(モチュール)が供給する誘電性流体を使用し、バッテリーセルに直接接触させることで、最適な熱管理により充電速度の向上とバッテリー寿命の延長を実現。この最新技術はBEVでは最先端であり、これまでは膨大な熱量を発生するスーパーコンピューター等の冷却に使われることが一般的だった。

ケータハムのボブ・レイシュリーCEOはこのように述べている。
「私たちが将来生産するEVモデルは、ケータハムのDNAである、軽量で、ファン・トゥ・ドライブ、ドライバーに焦点を当てたものでなければなりません。このプロジェクトの主な目的は、従来のセブンに比べて乗客ひとり分の重量差しかない車両を開発することです。1トンのセブンを発売することは決してありませんし、むしろやりたくありません」

EVセブンは、公道でもサーキットでも使えるものでなければならない。後者では、20-15-20サーキット走行のサイクルが繰り返し可能なこと、つまり20分間サーキットを走行、15分間で十分なエネルギーを充電し、さらに20分間走行できる能力を意味する。

「日曜の朝のドライブを楽しむことができるEVセブンの実現は、現在のバッテリー技術でも十分可能です。しかし、課題はエネルギー消費量が大幅に増加するサーキットでの使用です。現時点では、サーキット走行時に求められる急速な充放電に対応するためには、バッテリー液浸冷却が最適なソリューションのひとつです」とレイシュリーCEOは付け加える。

EVセブンは、ベースとなる市販のセブン(※)からわずか70kgの重量増(総重量700kg弱)に留められている。51kWhの液浸冷却式バッテリーは、エンジンルームとトランスミッショントンネルに収納され、最大152kWのDC急速充電が可能だ。実用可能な容量は約40kWhで、サーキットでの過酷な使用や急速充電にも劣化することなく、安全に使用することができる。
※欧州・日本市場のみで販売されており、ベンチマークに使用されている現行生産モデルの「セブン485/480(SV)」

このコンセプトには、HPDEシリーズをベースにしたスウィンドン・パワートレイン社のE Axleの専用バージョンが採用されている。最高出力は240bhp(243ps)/9000rpm、瞬間最大トルクは250Nmを発生。これにより、0-60mph(約97km/h)の加速タイムはおよそ4.0秒が見込まれている。パワートレインは、セブン485/480の性能特性に対応するように設計されており、EVセブンがICE(※)モデルと同様のドライバビリティを共有できるようにしている。
※インターナル・コンバッション・エンジンの略で、内燃機関を意味する

EVセブンにはLSD(リミテッド・スリップ・デファレンシャル)、セブン420カップのビルシュタイン製アジャスタブルダンパー、回生ブレーキ、4ピストンブレーキキャリパーも装備。レイシュリーCEOはこのように補足する。
「現段階では、EVセブンをこのままの形で生産する計画はありません。このプロジェクトは、EVパワートレインがお客様の個々の使用ケースに対してどの程度有効なのかを確認するためのテストベッドです。軽量でシンプル、そしてファン・トゥ・ドライブという、セブンに必要なケータハム車特有の車両特性を実現する方法を学ぶために、私たちは大きく目を見開いてこのプロジェクトを進めています。私たちは、次世代のバッテリー技術が可能にする将来の適切なタイミングで、この車両を市場に投入するつもりです。だからこそ、今がこのコンセプトを試す時なのです」

スウィンドン・パワートレイン社のマネージングディレクターであるラファエル・カイレ氏は、このように述べている。
「1990年代初期にJPE(ジョナサン・パーマー・エボリューション)エディションのセブンに搭載されたボクスホール製エンジンを開発して以来、ケータハムとのパートナーシップは30年以上続いています。そしてこのエキサイティングなプロジェクトを通じて、今後もパートナーシップを継続できることにワクワクしています。
 車体の軽量化や充電速度の目標は、間違いなく野心的なものでした。しかし、最先端の液浸冷却式バッテリー技術と独自のパワートレイン部品を使用することで、独自のコアバリューを維持した電気自動車セブンを開発することができたのです」

EVセブンコンセプトは、今年7月に英国グッドウッドで開催されるモータースポーツイベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で一般公開される予定。ケータハムは、EVセブンとは別に完全EVのスポーツカーコンセプトも開発しており、年内に発表する計画だ。このプロジェクトのデザインは、ブランドの新しいチーフデザイナーであるアンソニー・ジャナレリ氏が主導しており、今後数カ月のうちにさらなる詳細が公表される見通しだ。

●ケータハム「EVセブンコンセプト」主要諸元・仕様
・モーター:専用スウィンドン社 HPDE E Axle 
・トランスミッション:シングルスピード、専用レシオ2ステージリダクション 
・ファイナルドライブ:リミテッド・スリップ・デファレンシャル 
・バッテリー:51kWh(40kWh 実用可能)ー 液浸冷却式バッテリー  
・チャージング:最大152Kw DC急速充電  
・シャシー:大型シャシー 
・ディメンション:全長3350mm、全幅1685mm、全高1115mm 
・最高出力:240bhp(243ps)/9000rpm 
・最大トルク:250Nm/0rpm 
・重量:700kg未満 
・0-60 mph(約97km/h)加速タイム:4.0秒(見込み) 
・パワーウェイトレシオ:340bhp(345ps)/トン 
・最高速度:209km/h(見込み) 
・サスペンション:ビルシュタイン製アジャスタブル(420カップより) 
・ホイール:13インチ Apollo ブラックアロイ(フロント6”、リヤ8”)   
・タイヤ:AvonZZR 
・ブレーキ:4ピストンキャリパー付ベンチレーテッドディスク 
・ステアリング:ラック&ピニオン、ロック・トゥ・ロック1.93回転 

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