【旧車再考】 情熱的ハンドリングに出会ったプジョー206CC

プジョー206CC いまだ魅力満載! トレーリングアームの危うい楽しさ!

プジョー206CC
ちょっと古い車にしばらく乗ることができたので、少しレポートをしてみたいと思う。プジョーは3つ、もしくは4つの数字で車格やその性格を表すが、中央に0もしくは00を置くのが決まり。今回紹介するのは、206の中でもCC という20世紀末に登場したモデルだ。

1998年登場のフレンチはマイルドに!?

プジョー206とは、1998年に登場したモデル。先代205がいい意味でプジョーのイメージを払拭して、走る楽しさや躍動感をしっかりと作り上げたことによって、多くのファンを作り上げた。対する206は特徴的な形を咀嚼しながらも、デザインを一新し発表当初は賛否を生んだ。とはいえ、商業的にはやはり大きな成功をえたことからも、高い存在感を持ったモデルでもある。

とはいえ、その時代に直面した者からして見ると、躍動的な走りを見せてくれる205とは対象的なのが206。少しマイルドになった206には、興味を持たない向きも少なからず存在した。もちろんWRC参戦のためのホモロゲモデルのGTや、スポーティなRCの登場など、思いっきり走るのが好きな人々にとってファンな話題も少なくないモデルでもあったことは事実なのだが…。

キュートなスタイリング。全長は3.8mと軽自動車より40cm長いくらい。2人で使うなら不足なしのサイズだ。

205では、GTIでなくても、GRとか普通のモデルであっても、走ることが楽しいと思わせる要素に溢れていた。そのことを期待する層にとっては、少し期待外れだった…というのが当時の記憶だ。そんなことから、206については意識の中でやや敬遠気味のまま対峙することになった。

CCとはクーペカブリオレのことで、ハードルーフを格納してオープンカーとすることができるモデルだ。もともとは1930年代のプジョー601のラインナップとして採用されたが、その再来が206CCとなった。この複雑な構造を、コンパクトなモデルに、またプラス2とはいえ4人乗りモデルとしてよく採用できたものだ、と思う。

遊び心たっぷりのスタイリング

トランクを逆に上げて、完全電動格納ができるルーフ。

そのスタイリングは、今見ても興味深い。構造上、長めとなったリヤデッキはクルーザーのデッキのような表現で、遊び心もたっぷり。同色を大胆に用いたインテリアもただ者ではない。小さなモデルなのに、持っていることが刺激的。

ただルーフや後ろが重くなる、またリヤ周りを中心として剛性が下がることは避けられず、ここでも走りをスポイルしてしまうのは当然だろうと思ってしまう。デザインの魅力は感じつつも、ハードウエアとしはあまり良くないのではないか。しばらくの足代わり、という軽い気持ちで乗り込んだのだ。

インテリアも魅力的。ゲート式シフトレバーを採用するが、ナビの装備はない。

ところが、路上に出た途端、フロントタイヤの吸い付くような具合に懐かしさを感じてしまった。まさに205や306、405といったモデルのねっとりとした足回りだ。80年代のフランス車のテイストを深く思い出させてくれる。あの206が出た当時のマイナスな気持ちはなんだったのだろうか! と驚くほど。

トランスミッションは4速ATの一般的には悪名高きAL4。エンジンがガーガーいいながら、なかなかシフトアップしてくれない例のやつだ。”悪名” とはいわれるものの、自分的にはこのATの感覚は嫌いだと思ったことはない。シフトダウンのマナーも相変わらず。減速していくとどんどんギヤを下げてくれるので、うるさかったり減速が効きすぎる反面、アクセルオン時のピックアップが極めていい。こんなところが一度気にいってしまえば、アンダーパワーすらも気にならない。

乗り味はやっぱり魅力的!

最近の車に乗り慣れてしまうと「一連のプジョーやシトロエンのあの乗り味は、妄想だったのではないか?」と時折思ってしまうことがあったのだが、206CCに乗り直してみて間違いなく存在していたのだと思い直した。何よりも路面からの入力に対して、前後左右の足がそれぞれ個別にいなす感覚がありその穏やかな動きは踏切などを超えるときに顕著だ。荒れた路面でも左右にゆすられにくいのも大きな特徴。揺れてはいるのだが、ゆっくりとした動きなので安定して感じるのかもしれない。

そして何よりも、「そうだ! これだ」と思い出したのがリヤサスの構成。トレーリングアームを用いているのだ。205、306、405など同列として前述しモデルには定番の構成で、ばねは棒状のトーションバーでダンパーはコンベンショナルな構造だが、ほぼ水平に寝かせたような状態に配置。トランクがスクエアで広くできる、という構造上のメリットはあるが、ややコーナーリング中のグリップに難点があったとは当時一般的な評。しかしそれは、裏を返せば走っていて楽しいという美点でもあった。

この時代のプジョーのマナーとしては、オーバースピードでコーナに入ってもステアリングとは別にコーナーの途中でアクセルをやや抜いてやることで、内側にむく特性がうまく構成されていた。いわゆる、タックインの動きが明確に出る仕立てだった。それも限界付近という話ではなく、そこそこのレベルから出始めるので、どの程度ならどれだけ動くかわわかりやすい。

その一方でトリッキーな動きにはグリップが失われやすく、その点がトレーリングアームをやめる一因であったかもしれない。その後の307では、トレーリングアームながら通常の走り方ではかなりタックインを抑えた設定となっていて「なるほどこう来たか」と思ったものだが、逆にそれ故に思うように扱えなかったな、とも思い出した。

2021年の現在でいえば、この206CCもかなりの長老なのだが、その走りにはトレーリングアームの気持ちよさが存分に現れていた。ルーフなどの重さが気になるのでは? と思ったが、それよりも走る楽しさがこれほどリアルに味わえるとは思わなかった。ベストとはいえないが、これもまさにコーナリングマシンといっていい感じ。

206の発表当時、205を知った状態で新型の206を迎えると、かなりつまらなくなったと感じたものだった。しかし、今回改めて乗ってみると、そのテイストはネコ足と言われた時代の一連のフィーリングそのものだった。

様々な理由もあって、大きくなるばかりの車だが、ちょっと前のサイズって魅力的だったかもしれない。

3サイズはL3810×W1675×H1380mm、排気量は1.6ℓ。流してみた実質燃費は10km/lをやや切るくらい。1.6ℓとして燃費は決して現代レベルではないが、この両手に収まってしまうほどの車が、どこにでも楽しく連れていってくれることを思うと、車の価値ってなんなのだろうと思ってしまう。まあ、高速ではかなりうるさいんだけど…。

もちろん老体なので安易にお勧めはしないし、車から受取るフィーリングは各者各様。アバタもエクボだったのかもしれないが、しかしあの熱い時代をこの車は今もそのまま生きている、そのことは決して間違いではない事実だ。

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著者プロフィール

松永 大演 近影

松永 大演

他出版社の不採用票を手に、泣きながら三栄書房に駆け込む。重鎮だらけの「モーターファン」編集部で、ロ…