ジョゼフ・フーリエ大学名誉教授のアリム・ルイ・ベナビッド博士が「2021年本田賞」を受賞。パーキンソン病による不随意運動に対する脳深部刺激療法の先駆的研究と実用化に貢献

ジョゼフ・フーリエ大学名誉教授でクリナテック研究センター理事長を務めるアリム・ルイ・ベナビッド博士
公益財団法人 本田財団(設立者:本田宗一郎・弁二郎兄弟/理事長:石田寛人)はこのほど、2021年の本田賞を、進行性のパーキンソン病による、振戦などの自分の意思とは関係なく体が勝手に動いてしまう不随意運動に対する脳深部刺激療法(DBS)の先駆的研究と実用化に貢献を果たしたとして、ジョゼフ・フーリエ大学名誉教授でクリナテック研究センター理事長を務めるアリム・ルイ・ベナビッド博士に授与することを決定したと発表した。

脳深部刺激療法は脳に埋め込んだ電極を後に取り除くことができるだけでなく、電流の強度を微調整して病の進行度合いに応じた治療が可能

1980年に創設された本田賞は、科学技術分野における日本初の国際賞であり、人間環境と自然環境を調和させるエコテクノロジー(※)を実現させ、結果として「人間性あふれる文明の創造」に寄与した功績に対し、毎年一件の表彰を行っている。ベナビッド博士は、世界で最初にDBSを進行性パーキンソン病などによる不随意運動の治療に応用し、その実用化に成功した。DBSは脳の視床下核周辺に電極を埋め、高周波電流の刺激によって進行性パーキンソン病患者の振戦を軽減し、運動機能を回復させる外科的手法。臨床での有効性が認められたことでDBSは世界各地で普及し、現在までに15万人以上が手術を受けている。
※文明全体をも含む自然界をイメージしたEcology(生態学)とTechnology(科学技術)を組み合わせた造語。人と技術の共存を意味し、人類社会に求められる新たな技術概念として1979年に本田財団が提唱

従来、パーキンソン病の治療で最適とされる薬物治療をしても無意識の異常動作を抑制できない場合、凝固術と呼ばれる脳の組織を焼く手術が一般的だった。DBSでは脳に埋め込んだ電極を後に取り除くことができるだけでなく、電流の強度を微調整して病の進行度合いに応じた治療が可能だ。また、DBSはパーキンソン病だけでなく、ジストニア(※)などの治療にも用いられており、歩けなかった人が自立できるようになるなど、多くの人のQuality of Life向上に貢献している。この画期的な治療法を実用化したベナビッド博士の取り組みは、本田賞にふさわしい成果であると認め、今回の授賞に至った。
※筋肉の緊張の異常によってさまざまな不随意運動や肢位、姿勢の異常が生じる状態

今年で42回目となる本田賞は11月17日に授与式が開催され、メダル・賞状とともに副賞として1000万円がベナビッド博士に贈呈される。

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