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無公害を目指しEVの提案にも積極的
東京モーターショーがコンセプトカーを登場させて、大きく様変わりをしてきたのはこの前年の1969年あたりから。そして1970年は各メーカーとも歩調を合わせるように、未来の姿をコンセプトカーとして表現して見せた。
前回、日産のスーパーGTコンセプトとして270Xを紹介したが、実はその傍らではまったく方向性の異なるモデルと登場させていた。
それが日産315Xだ。しかし発表時点では315-aと呼ばれていた。もう1台オープンタイプのモデルも登場し、そちらをモーターファン誌では315-aオープンタイプと記しているが、そちらが315-bだったようで、それらの総称、あるいは発展型の可能性も含めて315Xと呼ぶようになったようだ。
このモデルの3サイズは、L2416×W1350×H1397mmで、ホイールベースは1500mmと極めてコンパクト。トレッドはF1125、R1050mmとリヤが狭い。重量は650kgと発表されていた。2人乗りということもあり、当時の360cc軽自動車の規格からしても、全長は余裕で短く、わずかに全幅だけが広かったが5年後の軽規格の改定では軽自動車サイズに収まるものとなっていた。
ニックネームは“シティ・ラナバウト”、まさに街中のコミューターという位置付けだった。120V-60AHのバッテリーを搭載し、5kW/6000prpmのポテンシャル。最高速度は60km/hで、走行距離は90km (40km/h定値)。この時代の車は速度や加速性能の高さも追求された時代だったが、他方では安全、無公害、低公害にも着目され始めた時代でもあった。
新時代をアピールするミニEV
当然ながら、日産としては軽自動車に全く手をつけていない時代だったが、その市場に進出するならば、新たなフェーズの動力源へとの意図が読み取れる。
注目なのはボディで、ルーフから前傾していくフロントピラーが未来的。わずか1.4m足らずの狭い全幅の中で、豊かなボディサイドの曲面を持たせている。この造形が圧倒的に小さなコミューターに堂々たる存在感を与えている。さらにリヤトレッドを狭くしてまでも、タイヤをシトロエンのようにボディに隠すなど小さくてもチープさを感じさせない形が魅力的だ。
軽自動車メーカーではなかった日産が、既存の軽メーカーに対してデザインサイドで見せつけた挑戦状にも思える。(実用性はともかく…)
さらに冒頭の写真にあるように、このモデルは公道で雑誌の取材に供され、しっかりと走行可能であることをアピールした。
モノを創る側にとっても、使う側にとっても、70年代の幕開けは、まさに何が起こっても不思議ではない超・新時代の幕開け。そのアピールが、この時代のモーターショーには強く感じられる。