マニアック? 国産・輸入車ドアヒンジ・コレクション あなたのクルマのドアヒンジは?

「ドアヒンジ」から見えるドア事情 あなたのクルマのドアヒンジは形鋼? プレス成形? 日産ノート、VWゴルフからトヨタ・センチュリーまで23モデル

普段、おそらくしげしげと見たことはない部品、それがドアヒンジだ。しかし、ドアの開閉、精度を左右する重要部品である。次に自分のクルマのドアを開けたとき、ぜひドアヒンジに注目していただきたい。
VWゴルフ7のドアヒンジ。新型ゴルフ8も同じ構造だ。

この写真、なんだかおわかりになるだろうか? と言ってもタイトルに書いてあるから、これがドアヒンジだというのは、なんとなくおわかりになると思う。

このドアヒンジは、VWゴルフ(ゴルフ7)のものだ。欧米車の主流である形鋼ヒンジだ。

では、こちらは?

スバルWRXのドアヒンジ

スバルWRXの左フロントドアのドアヒンジ
同じく右リヤドアのドアヒンジ

国産車の場合は、ボディ側・ドア側ふたつのプレス成形した枠に軸を差し込んで上下からカシメる構造だ。欧州車は、鍛造、もしくは鋼材からの削り出しで成形し、片持ちの軸部にドア側を上部から差し込む「リフトオフ」という手法を採ることが多い。

プレスヒンジと形鋼ヒンジ

こちらは国産の多くが採用するプレスヒンジ。右はエドシャで欧米で主流の形鋼ヒンジ。ひと目で占有する体積が違うことがわかるだろう。プレスは上下から挟みむ構造を採ることと同時に、成形にあたって駄肉が付きやすい。
対して形鋼は材からの削り出しで同じ強度を確保するので圧倒的に小さくできる。昨今ではドアの造形がになるにつれ、ヒンジの場所取りが難しくなる傾向にあり、その点でも形ヒンジが有利だという。

リフトオフが求められる理由

ボディ製作ラインでは、位置決めをしてからドアを取り付け、塗装ラインに入る前に一度ドアを外して、塗装後に再度ドアを取り付ける。プレスヒンジは軸部が上下でカシメられて(塑性域締め)いる構造上、ドアの取り外しにはボルトを外さざるを得ず、再組み付け時にもう一度位置決めが必要となってしまう。リフトオフなら最初の位置決めだけで済み、結果ラインコストが減らせる。

国産勢のプレスカシメ、欧米勢の形鋼or鍛造という違いは製造の初期段階まで遡る。元々欧州ではヒンジをボルト締めではなくボディに溶接していたのに対し、日本では鋳物をねじ留めしていたことが、今に至るまで違いに表れているという。

リフトオフ式3種の構造

フォルクスワーゲンに採用されたリフトオフ式。ドア側に取り付けられた軸部に縦方向のスプラインを設け、ボディ側の軸孔の横からねじを差し込んで横方向で固定するタイプ。軸の延長線上に固定用のねじがあり、開閉時の剛性に優れることも特長だ。
ドア側に軸があるのは上のタイプと同じだが、スプラインではなくねじ山が切られ、下からナットで固定するタイプ。軸受けおよびナット側ともにテーパーが設けられていて、軸を差し込むと自動的にセンタリングさせる。
リフトオフ式に対する、カシメ式のドアヒンジ。レクサスに用いられる製品で形鋼式。軸の抜き差しはできないが、回転部の寸法を詰められ小型化できる。

軽量化は現代の自動車の優先開発テーマだから、ドアヒンジといえどもその例外ではない。またドアの形が複雑になる傾向があるので、ヒンジの場所取りも厳しくなってきている。その意味でも形鋼ヒンジが有利だという。

ヒンジ自体の部品としてのコストは、形鋼ヒンジの方が高い。しかし、ドアの組み付け工程を考えると、プレスヒンジと形鋼ヒンジのコスト差は大きくないという。

ヒンジ部品だけで、ドアの優劣が決まるわけではない。が、そこから見えてくる背景もある。また、ドアヒンジにもじつにさまざまなノウハウと特許があるという。

では、国産・輸入車のドアヒンジ図鑑をご覧下さい。とくに注意書きがない場合は、右フロントドアの上のドアヒンジである。

国産車に多いプレス成形ドアヒンジ

新型GR86/SUBARU BRZ

MAZDA2

MAZDA3

トヨタRAV4

日産ノート

スバルXV

日産リーフ

ルノー・キャプチャー

プジョー308

マツダCX-8

トヨタ・クラウン

日産スカイライン


欧州車に多い形鋼材を使ったドアヒンジ

日産GT-R

スカイラインはプレス成形のドアヒンジを使うがGT-Rはご覧のとおり、形鋼のしっかりしたドアヒンジを使う。
日産R35・GT-Rのドアヒンジ。形鋼式のエドシャ品を採用している。囲み丸内に同じタイプの構造のアップを示した。ねじ孔が見える部分がドア側に取り付く部品で、下のアーム状の品が前方に伸び、ボディ側に取り付けられる。両者の上下を貫通するのがヒンジの軸で、カシメるタイプのものを使用している。これを上下2ヵ所用いてドアを留める。

メルセデス・ベンツAクラス

メルセデス・ベンツCクラス

VWゴルフ8

レクサスUX

レクサスUXのドアヒンジは、なかなか凝った形状だ。

アウディRS4

VWアルテオン

こちらは右後ドアのドアヒンジ

アルファロメオ・ジュリア

トヨタ・センチュリー

ドアの開閉のフィーリングを司るのは、ドアチェックという部品

ドアの開閉フィーリングを左右するのは、下の写真の黒いパーツ、「ドアチェック」を呼ばれる部品だ。本来は、ドアを全開までの中間位置で止められるようにする機構。それが次第に、ドアの開閉、特に閉まる直前のフィールを左右する重要な部品となった。

ドアチェックとは、元来はドアを全開までの中間位置で止められるようにする機構。それが次第にドアの開閉、特に閉まる直前のフィールの醸成機能を付加されるようになってきた。キモとなるのはハウジング(左側の四角い部分)に仕まれたばねとリンクアームに付けられたテーパー形状。両者でドアを人力に頼らず「引き込む」力を生み出す。ヒンジ部分にトーションバーを仕込んで同様の効果を出す「インテグレーテッドヒンジ」もドイツ車では採用例が多い。

ドアチェックの分構造図
これが国産最高級のトヨタ・センチュリーのドアチェック(黄色く丸く囲んだ部分)。ドアの開閉フィーリングを大きく左右するパーツである。

というわけで、ドアヒンジ図鑑をお送りした。おそらく、他ではあまり見ることがない図鑑だったと思う。冒頭に書いたが、次にマイカーのドアを開いたとき、ぜひドアヒンジ部分、ドアチェック部分に注目していただきたい。

最後にお見せするのが、こちら。
レクサスLC500/500hのドアヒンジだ。

著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…