溝呂木 陽の水彩カースケッチ帳 連載・第6回 ランボルギーニの故郷へ

溝呂木 陽の水彩カースケッチ帳/連載・第6回 ランボルギーニの故郷へ

クルマ大好きイラストレーター・溝呂木 陽(みぞろぎ あきら)さんによる、水彩画をまじえた連載カー・コラムの第6回目は、数々の名車に彩られたイタリア・モデナでの展示会をめぐるアレやコレやのお話のランボルギーニ編をお届けします。
2019年、サンタアガタのイオタ50周年イベントにて。オレンジ色のランボルギーニ ミウラ。

モデナからほど近い、サンタアガタはランボルギーニの故郷。創始者フェルッチョ・ランボルギーニが作り上げた工場と本社社屋が畑の広がる平原の中にあり、そこにはミュージアムも備えられています。

ランボルギーニ本社併設のミュージアムにてフェルッチョの肖像画と350GT。

今回のモデナ訪問では、もちろんその本社併設のミュージアムも訪ねました。緑色のカウンタック プロトタイプや赤い350GT。ミウラやチータ、エスパーダ、シルエットなど、スーパーカー好きにはたまらないクルマが並んでいました。ボク達にはさらにその後、内容の濃い出会いがありました。今回はそのお話です。

緑色のカウンタック プロトタイプ。

今回の旅に同行されたGGF-Tの赤間氏は、カウンタック2台やウラッコなども所有され、ランボルギーニに深い愛情を注いでおられます。旅のリーダーであるマセラティクラブ オブ ジャパンの越湖氏から紹介された、ランボルギーニ研究家の二人の女性、クリスティーナさんとエリザベッタさんに会いに、サンタアガタの二人の事務所を目指します。

そのお二人、クリスティーナさんはフェルッチョの秘書をお努めだったというランボルギーニの生き字引で、エリザベッタさんとともにサンタアガタはじめ世界中でゴージャスなイベントを開催、今回のモデナでも色々な場所を案内していただけることになったのです。

まずは事務所からほど近い目抜き通りの一等地、市庁舎を目指します。モデナのイベントで披露したランボルギーニ イオタをモティーフにした絵本『アヒルのジェイ』を市長さんにご紹介させていただくためです。

絵本『アヒルのジェイ』とそのキャラクターのアルミ製マスコット。

通された部屋ではエリザベッタさんたちとともに絵本をプレゼンテーション。早逝してしまったアヒルのジェイ(イオタJ)の思い出を探し、仲間たちが力を合わせてアルミを叩き、その姿を蘇らせようとするストーリーです。

日本から持ってきたイタリア語版絵本を贈らせていただき、市長さんからは「イタリアの子どもたちも今はゲームに夢中でクルマへの興味が薄れています。クルマをテーマにした絵本は少ないので、ぜひとも子どもたちに読んでもらいましょう」という、力強い言葉をいただきました。

絵本を持参してモデナ市長を表敬訪問。

赤間さんが持参された日本からのお土産に加え、ボクが女性を描いた水彩画クロッキーをお渡しして、市長さんにはとても喜んでいただけました。ボクたちはサンタアガタを描いた絵と、市の美しい旗をいただいてその場をあとにしました。

カフェでの休憩をはさんで、ボクたちが向かうのは「ミュージアム」とのこと。「あれ、先日ランボルギーニのミュージアムは訪問済みなのに……?」と思ったら、到着したのは大きな元ランボルギーニ工場の建物でした。中には貴重なプロトタイプがたくさん……。そう、郊外のフーノに在る「フェルッチョ・ランボルギーニ・ミュージアム」の方だったのです。そこはランボルギーニ製の空調設備などを作っていた工場跡で、現在、その中は改装された広いスペースになっています。

郊外にあるフェルッチョ・ランボルギーニ・ミュージアム。こちらは企業博物館ではなく私設博物館。

本社併設のミュージアムが小さめのスペースで生産車中心なのに比べて、こちらは広い空間に歴代トラクターをはじめ、フェルッチョ・ファミリーの歴代の愛車のフィアットやアルファロメオ、フェラーリに加えてフェルッチョが手掛けたヘリコプターまでもが展示!

館内の様子。
ランボルギーニを語るうえで欠かせないトラクター。極めて珍しいものも所蔵されている。

ここはランボルギーニの本社とは直接の関係はなく、フェルッチョの息子トニーノが開設した私設ミュージアムなのです。そして並ぶのはミウラやカウンタックだけでなく、貴重な350GTVのプロトタイプのモックを始め、ワクワクするようなウラッコやエスパーダなどのプロトタイプたちが並んでいます。

ウラッコは太いタイヤや変わったライトが特徴的。エスパーダは生産車になる前の、ショーカーのマルツァルからの過度期を思わせる大きなガルウィングドアがあるものです。壁には貴重なミウラの図面が貼られていたりしています。

ライトまわりが特徴的なウラッコのプロトタイプ。
エスパーダは大きなガルウィングを備えた先行試作車。

さらに奥には紅い小さなスポーツカーが……。エリザベッタさんに伺うと、それはランボルギーニ チェントというエンブレムを持つバルケッタで、フィアットをベースにした、いわゆる「虫」と呼ばれる小さなスペシャルでした。これを作り上げた若きフェルッチョはミッレミリアに参戦したものの事故を起こしたことから、その後、ランボルギーニ車のレース参戦を許さなかったというストーリーがあるそうです。

ランボルギーニのルーツとも言える小さなバルケッタ、チェント。

「次の予定があるから」と後ろ髪を引かれる思いでバタバタと後にしたフェルッチョ・ランボルギーニ・ミュージアム。しかしその後、ボクたちには、また新たな素晴らしい出会いが待っていたのでした。

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著者プロフィール

溝呂木 陽 近影

溝呂木 陽

溝呂木 陽 (みぞろぎ あきら)
1967年生まれ。武蔵野美術大学卒。
中学生時代から毎月雑誌投稿、高校生の…