三菱コルト・ギャランAⅠカスタム(1962)70年代に向けたセダンの進化系【週刊モーターファン ・アーカイブ】

三菱が本格的に乗用車生産に取り組んで10年弱、
新たに加わったそのクルマは流麗なデザインと高い走行性能でまたたく間にヒット、
現在も発売されているクルマの原点がここにある

週刊モーターファン・アーカイブでは、これまでのモーターファンの懐かしい秘蔵データから毎週1台ずつ紹介していく。

解説●渡辺 陽一郎(60年代国産車のすべて より 2012年刊)
フロントビューの印象をうまくリヤビューにも活かす。折り紙細工のような面構成で、すっきりとクリーンな印象を打ち出した。

国内専用車としては現在(2012年当時)もフォルティスのサブネームを持つ三菱自動車の期間車種がギャラン。その生い立ちは1960年に発売されたオリジナル乗用車である三菱500までさかのぼる。厳密に言えば三菱自動車は当時三菱重工業(登記上は新三菱重工業)の乗用車製造部門であり、それまでのA型リムジン(1919年)やヘンリーJ(1950年)といったノックダウン生産を中心とした車種に対し、三菱500はその後、600ccに排気量を拡大されたのを機にヘッドネームにコルトが付き、排気量やモデルチェンジを繰り返していった。そのコルトシリーズの中で従来までとは異なるモデルとして1969年に登場したのが、コルト・ギャランである(ヘッドネームのコルトは後に取れ、ギャランとして販売された)。

ギャラン(GALANT)とはフランス語で「華麗」「勇ましい」という意味を持つが、車名が表す通り、まさしく従来のコルトシリーズとは一線を画する「華麗なスタイリングと勇ましい走り」を両立したモデルとして世の注目を集めた。

そのポイントは大きく2つ、まずそのスタイリングである。「ダイナウェッジライン」と呼ばれるシャープなくさび型と、リヤウインドウ周辺のポップアップラインが特徴。製作には若手を積極的に採用、かつ三菱の航空技術を取り込むことで、空力的にも優れたデザインとなった。

リヤタイヤ側に重心を置いた、FRらしいロングノーズのプロポーション。トランクリッドを下げることで、バランスを整え、後方視界も向上させた。
センタークラスターの下は物入れとなっているが、オプションでメーターや8トラックステレオなどを装備することができる。

また当時、極めて珍しかったのがフロントのサイドウインドウに主流であった三角窓とポール式のラジオアンテナを廃止したこと。これによりデザインの流麗さをさらに際立たせることに成功している。ちなみにラジオアンテナはトランクリッド全体をアンテナとして活用するという斬新なアイデア。ギャランが従来までのクルマとは違う、という決意表明のようなものかもしれない。

そしてもうひとつが、走りの性能をコルト以上に磨き込んだことである。シリーズ構成としては、1.3ℓ87psを発生するAⅠと1.5ℓを発生するAⅡが基本、AⅡに関しては105psのツインキャブ仕様も設定、いずれも直4でこのエンジンからOHC化された。すでによは高速時代に入っており、その最高速度はAⅡで175km/hというから驚く。組み合わされるトランスミッションは、3&4速マニュアルとトルコンも設定。当時としてはまさしく先端を走っていた一台である。

(出典:モーターファン別冊 60年代国産車のすべて / 執筆・高山正寛)

SPECIFICATIONS:COLT GALANT AI CUSTOM(1969)

〈寸法重量〉
全長×全幅×全高:4080×1560×1385mm
ホイールベース:2420mm
トレッド前/後:1285/1285mm 
車両重量:825kg 
乗車定員:5人
〈エンジン〉
直列4気筒OHC(4G30型)
ボア×ストローク:73.0×77.0mm
総排気量:1289cc
最高出力:87ps/6300rpm 
最大トルク:11.0kgm/4000rpm
〈トランスミッション〉
4MT 
〈駆動方式〉
RWD 
〈ステアリング型式〉
ボールナット式
〈サスペンション〉
前・ストラット式、後・リジッド式
〈ブレーキ〉
前・2リーディング式ドラム、後・リーディングトレーリング式ドラム
〈タイヤサイズ〉
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