マツダ・ロードスターRF オープンカーのベストシーズンは冬である。では真夏は? ロードスターの魅力を再確認する

マツダ・ロードスターRF RS(6MT)車両本体価格:390万600円
マツダ・ロードスターは、ソフトトップの「ロードスター」と電動リトラクタブルハードトップの「ロードスターRF」のふたつのモデルがある。RFの魅力は、トップを上げていれば、よく出来た2シータークーペ、下ろせばオープンエアを気軽に満喫できる二面性だ。この二面性、真夏の東京ではどうなるか? 1週間、通勤とドライブで試してみた。
TEXT & PHOTO◎鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi)
NAロードスター時代は、左右のリトラクタブルヘッドライトがボディ前端の目安となっていたが、ND型ではフェンダーアーチの盛り上がりがその役目を担う。

灼熱の都内を這い回って燃費9.8km/ℓ、暑くてトップも下ろせないままRFを返却するわけにはいかない、と思って。平日の午後に、新宿から三浦半島の先端、城ヶ島にでかけることにした。

首都高〜横浜横須賀道路で南へ。さすがに空いている。ロードスターRFは、100km巡航で6速2400rpmほど。6速トランスミッションのギヤ比はファイナルも含めて1.5ℓエンジンのロードスターと同じである。ボーズサウンドシステム+9スピーカーの音もクローズドなら楽しめる。

RSのシートはアルカンターラ/ナッパレザー。素晴らしい出来だ。
室内長×幅×高:940mm×1425mm×1040mm。オーディオはボーズサウンドシステム+9スピーカーを装備する。

シートも素晴らしい。アルカンターラ/ナッパレザーのシートは形状も座り心地も満点。アンチ本革シート派(車両価格800万円以下の場合)を標榜する筆者にとって、アルカンターラ/ナッパレザーのコンビは最強だ。

高速道路を流している時の燃費は17km/ℓ+α。ほぼWLTC高速道路モード(18.3km/ℓ)で走ってくれる。エアコンがフル稼働する酷暑でなければモード燃費以上も可能だろう。

横横道路を降りたところで、満を持してトップを下ろす(格納すると言った方がいいか)。コロナ禍で海の家もない三浦海岸沿いを軽く流す。気温も都内よりは3℃くらい低いし、青くきらめく海が左手に見えるだけで、気分はだいぶ違う。……とはいえ、やっぱり暑い! 

6MTのシフトフィールは良好。渋滞でもシフト操作がいやになることはなかった。

海岸線からキャベツ畑の間を縫うように走る気持ちの良い道を、6MTを操りながらドライブするのは、本当に素敵な時間だ。暑いけれど、空の青と海の色、畑の緑に囲まれると、頭上が抜けているのはやっぱり気持ちが晴れる。いいなぁ、ロードスター。
ビルシュタイン製ダンパーを装着するスポーツグレードのRSだが、乗り心地はしなやかだ。

1.5ℓロードスターRSが1020kgだから2.0ℓRFの車重1100kgは80kg重いことになる。

個人的な話で恐縮だが、NAロードスターを手放してからほぼ四半世紀。「いつかは再びロードスターを」とずっと思っている。現行NDロードスターは、乗るたびにその想いを強くさせてくれる。NDの登場は2015年春だから、丸5年が経過しているが、そのデザインはいささかも魅力を失っていない。ナビがどうの、コネクティビティがどうの、ACCがどうの、というのがクルマの魅力の本質じゃないことを再確認させてくれるのがロードスターだ。

フロントサスペンションはダブルウィッシュボーン式。ステアリングは、いわゆる「前引き」である。
リヤサスペンションはマルチリンク式。RSはビルシュタイン製ダンパーを使う。
タイヤは205/45R17のブリヂストン製ポテンザS001を装着。17×7JインチBBS社製鍛造アルミホイールとブレンボ製対向4ピストンキャリパーレッド塗装は33万円のオプション。タイヤの指定空気圧は前後とも200kPa

なんて思いながら、試乗車のスペックシートを見ると「車両価格390万600円、試乗車はオプション込みで428万5600円」と書いてある。なかなかのお値段だ。その価値は充分あるとは思うが、400万円は400万円だ。オプションのブレンボ製フロント4ピストン対向ブレーキ+17インチBBS鍛造ホイールは魅力的(かっこいいし)だが、つけなくても、筆者の場合不都合はなさそうだ。それでも390万円か。

城ヶ島から新宿へ戻るのは、今度はせっかくだからトップを開けたままにしてみた。ロードスターのいいところは、速度が高くなくても楽しいし、速さを体感できることだ。100km/h出せば、もう充分”速い”。城ヶ島往復205km走った燃費は、16.1km/ℓだった。これが実力通りというところだろう。

トランクは思ったより深くて容量もある。
夏の三浦の海をフロントガラス越しに見る。

都内に戻り、トップを上げて考えた。やっぱりロードスター、いいな、と。手に入れるなら、どのグレードにするか。何色にするか。そもそもロードスターにするか、RFを選ぶか?
想像するのは、楽しい。
個人的な話(この記事は「個人的な話」ばかりですいません)で恐縮だが、このテーマは、いつも妄想し、いつも同じ結論に至る。

買うなら、RFじゃなくてロードスター、トランスミッションは6MT、グレードはベーシックな「S」(あるいは、RS)だ。

リトラクタブルハードトップを選ぶか、ソフトトップを選ぶかは、好みにとライフスタイル(のようなもの)による。RFは完璧だ。完璧なクーペにもオープンにもなる。まったく文句はない。手動のソフトトップを選ぶのは、純粋に「好きだから」である。
ボディカラーだけは、魅力的な新色が登場しているので、今日のところは、今回の試乗車の「ポリメタルグレーメタリック」を選ぶ。

酷暑のなかでのマツダ・ロードスターRFのドライブは、オープンエア・モータリングの真髄からはほど遠かったけれど、ロードスターが依然として魅力的なスポーツカーであることを再確認できた。

いいなぁ、ロードスター。

上が東京〜城ヶ島往復205.6kmを走った燃費、16.1km/ℓ。下が総合433.7km走った燃費、12.0km/ℓ。
マツダ・ロードスターRF RS(6MT)
全長×全幅×全高:3915mm×1735mm×1245mm
ホイールベース:2310mm
車重:1100kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式 
駆動方式:FR
エンジン
形式:直列4気筒DOHC
型式:PE-VPR[RS](SKYACTIV-G2.0)
排気量:1997cc
ボア×ストローク:83.5mm×91.2mm
圧縮比:13.0
最高出力:184ps(135kW)/7000pm
最大トルク:205Nm/4500rpm
燃料供給:DI
燃料:無鉛プレミアム
燃料タンク:45ℓ
燃費:WLTCモード 15.8km/ℓ
 市街地モード11.8km/ℓ
 郊外モード:16.0km/ℓ
 高速道路:18.3km/ℓ
トランスミッション:6速MT
車両本体価格:390万600円
試乗車はオプション込み428万5600円

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著者プロフィール

鈴木慎一 近影

鈴木慎一

Motor-Fan.jp 統括編集長神奈川県横須賀市出身 早稲田大学法学部卒業後、出版社に入社。…