三菱「デリカD:5」にミニバン初のクリーンディーゼル車を341.9万円で2013年に投入【今日は何の日?1月11日】

三菱「デリカD:5」2.2Lコモンレールディーゼルエンジン
三菱「デリカD:5」2.2Lコモンレールディーゼルエンジン
一年365日。毎日が何かの記念日である。本日は、三菱自動車のデリカD:5にミニバン初となるポスト新長期規制対応のクリーンディーゼルエンジン搭載車が設定された日だ。多くのデリカファンのディーゼル車復活の要望に応えて、約8年ぶりにデリカディーゼルが追加されたのだ。
TEXT:竹村 純(Jun TAKEMURA)/PHOTO:三栄・ミニバンのすべて

■人気のデリカD:5にディーゼル車が8年ぶりの復活

2013(平成25)年1月11日、三菱自動車は人気のミニバン「デリカD:5」に、ポスト新長期対応のクリーンディーセルエンジン搭載車を追加で発売した。デリカは2004年に新短期規制の対応が困難なことから、いったんディーゼル車の投入を中断、このたび8年ぶりにポスト新長期規制をクリアしたクリーンディーセル車を投入したのだ。

5代目三菱デリカ
5代目三菱デリカ

誕生から4代目デリカスペースギアまでのデリカの歴史

初代三菱デリカ
初代三菱デリカ

1968年に誕生した初代デリカは、ラダーフレームにキャブオーバーの3人乗りキャビンを組み合わせた小型トラックだった。クラス初の前席3名乗車がアピールポイントで、エンジンは乗用車「コルト1100」の1.1L直4 OHVを搭載。翌年の1969年には、リヤに上開きのドア、左側面にスライドドアを設けたワンボックス型の商用車と、9人乗りの乗用ワゴン「デリカ・コーチ」、「デリカ・ライトバン」が発売された。

2代目三菱デリカ
2代目三菱デリカ

乗用ワゴンのデリカ・コーチが、その後1979年に2代目デリカへと進化。3代目「デリカスターワゴン(1986年~)」と4代目「デリカスペースギア(1994年~)」は、パジェロとともにRVブームを牽引する人気モデルとなった。

3代目三菱デリカ
3代目三菱デリカ
4代目三菱デリカ
4代目三菱デリカ

スペースギアのエンジンは、当初2.4L直4 と3.0L V6 SOHCのガソリンエンジン2機種、2.5Lと2.8Lの直4 SOHCインタークーラー付ターボの2機種ディーゼルをラインアップしていた。特にディーゼル車は、太い低中速トルクと優れた燃費で人気を獲得しデリカ人気を支えていたが、2003年から始まったディーゼル車に対する新短期規制に適合できず、2004年にいったんディーゼル車の投入は中断した。

アウトランダーのプラットフォームを使った5代目デリカD:5登場

スペースギアも唯一無二のミニバンオフローダーとして人気を堅持していたが、2000年を過ぎてからはRVブームが去り、代わりにSUVが市場で人気を集め始めた。

5代目三菱デリカD:5
2007年に登場した5代目・三菱デリカD:5

市場の変化に対応するため、2007年のモデルチェンジで登場した5代目「デリカD:5」のプラットフォームは、従来のパジェロベースからSUVのアウトランダーベースに切り換えられた。

デリカD:5は、基本コンセプトこそスペースギアと同じだが、オフロードよりもミニバンとしての機能を重視。スペースギアよりも全長、全幅は大きく、全高と最低地上高が低くなり、フロントフェイスも都会的な雰囲気に様変わりした。

クリーンディーゼルの三菱「デリカD:5」
2012年に追加されたクリーンディーゼルの三菱「デリカD:5」

エンジンは、アウトランダーと同じ最高出力170ps/最大トルク32.0kgmを発揮する2.4L直4 DOHC MIVEC(三菱可変バルブ機構)を搭載。最大のアピールポイントの4WDシステムも、やはりアウトランダーで採用中の電子制御4WDが採用された。これは、前後輪のトルク配分を適正に制御するシステムで、2WD/4WD/4WDロックと3つのモードを選択できるシステムだ。

13年振りのモデルチェンジであり、スタイリングもスポーティに変貌したことから、デリカの人気回復に成功した。

デリカD:5にクリーンディーゼル車投入

人気を獲得したデリカD:5だったが、市場からは2004年から投入を中断しているディーゼル車の復活を望む声が根強くあった。その要望に応えるため、デビュー5年後の2013年1月のこの日、ポスト新長期対応のクリーンディーゼル搭載車が追加されたのだ。

三菱「デリカD:5」2.2Lコモンレールディーゼルエンジン
三菱「デリカD:5」2.2Lコモンレールディーゼルエンジン

ポスト新長期に適合するためには、新短期規制からPMは90%、NOxは約70%低減させる必要があり、ポスト新長期規制は世界一厳しい規制とされていた。デリカD:5は、この厳しい排ガス規制に対応するために、新しく開発した最高出力148ps/最大トルク36.7kgmの2.2L直4 コモンレール直噴ディーゼルエンジンに、PM(粒子状物質)を低減するDPF(ディーゼル・パテキュレート・フィルター)とNOxを低減するNOx吸蔵触媒を組み合わせた後処理システムを採用した。トランスミッションは6AT、駆動方式はもちろん4WDだが、FFも用意された。

排ガス規制推移
三菱「デリカD:5」が採用した後処理システムと日本のディーゼル車の排ガス規制推移

車両価格は、標準的なガソリン車のGパワーパッケージの316万円に対して、クリーンディーゼルのDパワーパッケージが351.7万円と、ディーゼル車は約35.7万円高額に設定された。ディーゼルエンジンそのものが高いことに加えて、排ガス低減のための後処理システムのコスト上昇が価格差の要因である。

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燃費に優れたディーゼル車だが、ガソリン車に比べて30万~40万円高いのは避けられない。一方でガソリン車の燃費は、電動化の助けもあり年々向上しているので、ディーゼルのストロングポイントは薄れている。アウトドアを楽しむオフローダーでは、ディーゼル特有の太いトルク特性が魅力的だが、それも電動化(モーター)で代替できるとすれば、今後ディーゼルの生き残りはますます厳しいのではないか。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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著者プロフィール

竹村 純 近影

竹村 純

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までを…