街乗りがメインの完全専用設計BEV「フィアット・チンクエチェントe」【最新コンパクトカー 車種別解説 F I A T500e】

フィアットのアイコンとも言えるブランド「チンクエチェント」。BEVモデルとして22年にデビューした「チンクエチェントe」はすべてがBEV専用設計となったが、ガソリン車の先代へのリスペクトが詰まったフォルムは変わらず親しみやすい。先進安全装備も施され、渋めのボディカラーで変わらないセンスと新たな技術を楽しむクルマと言える。
REPORT:佐野弘宗(本文)/塚田勝弘(写真解説) PHOTO:中野幸次 MODEL:日南まみ

共通部品実質ゼロの全身意匠 快活で剛性感ある走りは美点

フィアット500eは、日本でもお馴染みのロングセラー商品「500」の事実上の後継機種である。〝事実上〞という表現なのは、500eが純粋な電気自動車(BEV)であり、従来型の500もいまだに併売されているからだ。

エクステリア

LEDサイドインジケーターは2代目へのオマージュとなっていて、過去と現在をつなぐ意匠として採用された。フォルムはエンジン車に似ているが完全新設計で、黒基調にシルバーを配したアルミホイールも専用になる。最小回転半径は5.1m。

ガソリン車である500は今後フェードアウト予定なのだが、世界的にBEV移行が期待どおりに進まないこともあって、500の販売もなかなか終われない……というのが現状だろう。(※5月21日に正式に国内販売終了を発表)

インストルメントパネル

水平基調によりすっきりした視界が得られる。中央下側にシフト用スイッチを配し、その上にエアコンパネルを並べたシンプルなレイアウトも印象的だ。10.25インチセンターディスプレイ、フルオートエアコンを全車に標準装備する。

500eは一見すると従来型500とほとんど区別がつかないが、実際は骨格構造から完全BEV専用設計で、ボディサイズは500比で60㎜長くて幅広く、15㎜高く、ホイールベースも20㎜長い。内外装に500との共通部品も実質ゼロで、全身が専用の新デザインである。

居住性

118㎰/220のモーターをフロントに置くFWD車で、リチウムイオン電池の総電力量は42kWh。航続距離は335㎞と短めで、後席も用意されるが、床が高めなので緊急用と割り切った方がいい狭さだ。つまり、500eは街乗り主体の日常パーソナルコンパクトカー的な使い方が想定されている。

うれしい装備

発売後にオーナーに用意された急速充電用のアダプターは、コードレス掃除機並みの大きさでかなり重いが、チャデモ規格の急速充電に対応する。
バッテリー残量がわかる充電画面で、充電電流レベルを5段階から選択可能。ただし、充電レベルを高めると電池の消耗が早まる可能性がある。
月間販売台数            NO DATA
現行型発表             22年4月
一充電走行距離※WLTCモード     335㎞

ラゲッジルーム

選択肢は標準的ハッチバックの「アイコン」と、従来の500C同様の、頭上のみ電動キャンバストップの「オープン」の2種類。走りはすこぶる楽しく、乗り心地はサイズに似合わぬ剛性感たっぷりの高級感。BEVは総じて強力な加速性能を売りとするが、それに輪をかけて活発なしつけは、まさにラテン系(笑)。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.159「2024-2025 コンパクトカーのすべて」の再構成です。

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