GRヤリスMコンセプトは次期セリカのパッケージ? 新開発2.0L直4ターボをミッドシップ!? 

TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は1月10日、『東京オートサロン2025』でGRヤリスMコンセプトを発表した。新開発の2.0L直4ターボエンジンをミッドシップするこのコンセプト。GR開発陣は、モリゾウは、なにを考えているのだろうか?
TEXT & PHOTO:世良耕太(SERA Kota)PHOTO:Motor-Fan.jp

新開発G20E型直4ターボエンジンの素性は?

『東京オートサロン2025』で発表されたGRヤリスMコンセプト

TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は1月10日、『東京オートサロン2025』でGRヤリスMコンセプトを発表した。ベースとなったGRヤリスは1.6L直列3気筒ターボエンジンをフロントに横置き搭載し、プロペラシャフトと電子制御カップリングでリヤに動力を伝達するAWDである。Mコンセプトは開発中の2.0L直列4気筒ターボエンジンをミッドに搭載するAWDマシン。オートサロンでは、この車両でスーパー耐久に参戦することが発表された。

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TGRのブースには迷彩柄をまとうGRヤリスMコンセプトと、この車両が搭載するエンジンが展示されていた。このエンジン、2024年5月の「マルチパスウェイ・ワークショップ(MPW)」で発表されたユニットである。MPWでは1.5L直4自然吸気とターボ、それに2.0L直列4気筒ターボが発表されたが、GRヤリスMコンセプトが積むのは2.0L版だ。マスタードライバーのモリゾウこと豊田章男・トヨタ自動車会長は「とにかく戦闘力」とエンジンについて開発陣に伝えているという。

会場に展示されていたエンジンは、MPWで展示された仕様と基本的には同じ。ただし、実際には性能をしっかり出しながら信頼耐久性を確保し、厳しい排ガス規制に対応するためのアップデートが進んでいるという。高い性能を誇示するかのような赤いシリンダーヘッドカバーも含め、展示エンジンはあくまでイメージだ。

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MPWのときは「2.0L直列4気筒過給」という表現だったが、東京オートサロン2025では、「G20Eエンジン」のプレートが付けられていた。GRヤリスが積む1.6L直列3気筒ターボエンジンの型式がG16Eなので、「2.0L直列4気筒はその直系?」との想像が働くが、型式名は決定事項ではないという。G16Eはマスタードライバーのモリゾウやプロドライバーなどからのフィードバックを反映しつつ、「壊しては直す」を繰り返して鍛え上げていった。新しいエンジンはそのコンセプトを受け継いでいるため、同じ系譜であることをイメージさせる型式にとりあえずはしたのだそう。

次期セリカに採用するパッケージ?

本来G16E型1.6L直3ターボエンジンが搭載されていたフロントボンネットフードの下は、このように空っぽ。

さて、GRヤリスMコンセプトのパワートレーンレイアウトだが、GRヤリスがフロントに搭載している横置きパワートレーンのうち、3気筒のG16Eを4気筒のG20Eに置き換えてGRヤリスの6速MTを組み合わせ、車両ミッドに搭載している。開け放れたバックドアから内部を眺めてみると、本来、後席のシートバックがあるあたりに赤いシリンダーヘッドカバーが見える。ドライブシャフトはその後方。つまり、ミッドシップ。

GRヤリスのG16Eはエンジンを後傾させて搭載しているが、G20Eもその形を引き継ぐ格好となっている。前後重量配分適正化の観点からは好ましくないように見えるが、展示車両はコンセプト初期検討車の位置付け。とりあえず形にした状態なので、重箱の隅をつつくような指摘は現段階では的外れだ。

フロントに横置き搭載していたパワーパッケージをそのままリヤにスライドさせた格好なので、パワーテイクオフは後ろ向き。それでは都合が悪いのでカウンターギヤユニットを設けてパワーフローを反転させている。フロントデフの後方に前後の駆動力を配分する電子制御カップリング(ジェイテクトのITCC)がレイアウトされている。エンジンとトランスミッションがなくなったフロントのコンパートメントは、ほとんどもぬけの殻だ。

ボディの右サイド

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ボディ後半の左サイド

リヤは1気筒増えて長くなったパワーパッケージを収めるため、拡幅方向でボディに手を入れた模様。吸気はリヤのクオーターウインドウに設けた開口部から取り入れる仕組み。エンジンルームを覆うパネルには太いダクトがいくつも顔を出しており、冷却に気を使っている様子が見てとれる。苦しいのは排気系も同様で、排ガス規制と車外騒音規制への対応の観点から、スペース的に厳しいという。

最高出力400馬力、最大トルク500Nmのスペックは、すでにMPW開催の時点でテスト車両に積み込んで発揮できる状態にあった。GRヤリスMコンセプトの場合、東京オートサロンの時点では「決まった諸元はまだ何もない」「どれくらいパワーが出るかもわからない」状態だという。

トランスミッションは、GRヤリスと同様に6MT

決まっているのは、スーパー耐久シリーズに投入するということ(時期は明言していない)。そのために、急ピッチで開発を進めなければならないことだ。スーパー耐久を走るからといって、ミッドシップのAWDがサーキットを速く走るための技術と決めつけているわけでもない。それは、サーキットレースだけでなくラリーでも活躍するGRヤリスが証明している。GRヤリスMコンセプトは「いろんな場で試していく」と、現地の説明員は話してくれた。

となると、うわさされている次期セリカに採用するパッケージとして成立するかどうかを検証する役割が与えられているのかも、と想像したくなるが果たして……。

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著者プロフィール

世良耕太 近影

世良耕太

1967年東京生まれ。早稲田大学卒業後、出版社に勤務。編集者・ライターとして自動車、技術、F1をはじめと…