企業イメージ一新! 縁の下の力持ちから表立っての活動へ
「カヤバ」といえば自動車/二輪車分野ではサスペンションのショックアブソーバーのメーカーとして知られるが、正確にいうと油圧機器メーカーだ。
1935年3月の創立からこの3月できっかり90周年を迎える。
自動車では前述ショックアブソーバー以外に、CVT(無段変速機)のポンプ、油圧パワーステアリングのポンプがある。パワステもいまは主流が油圧式から電動式に移行したが、電動式時代に移ったら移ったで電動パワステ関連ユニットも手掛ける柔軟さを持ち合わせている。
自動車分野に限らない。
鉄道、建設機械、産業車両、農業機械、船舶・・・いずれの分野でも必ず何かしらの油圧関連装置で姿を見せ、他に例えば建設機械なら走行用モーターなど、油圧と無関係なデバイスでも顔出ししている。
意外なところでは舞台機構まで手掛けていたとは知らなかったが、とにかくカヤバは油圧機器を核に歩んできたメーカーなのである。
それは同社が未来のモビリティ社会への貢献に向けて発している「ゆめあるあしたを、つくろう。」に表れている。
こう書いたのではわからないか。
カヤバの表現どおりに書くと、
ゆめある
あしたを、
つくろう。
で、この並びには、こういった言葉あそびが込められている(「ゆ」「あ」「つ」ね)。
さて、ここは年明けて間もない2025年1月10~12日に開催された東京オートサロン2025のカヤバブース。10日午前に催されたプレスカンファレンスで、カヤバは新しいブランディング計画を発表した。
題して「OFF WE GO!」。
カヤバの売り上げは66%がオートモーティブコンポーネンツ事業が占め、その次が建設機械を中心とするハイドロリックコンポーネンツ事業の30%が続き、特殊車両事業などが3%と続く(2022年3月末現在)。
これまで「心地よい暮らし=日常生活を、より快適に、より良くすることに注力」してきたが、今後は「カヤバらしさ(こう思われたい)を構築し、正しく世の中へ伝えていこう!」とスタンスにシフトする。
自動車でショックアブソーバーというとビルシュタインばかりが取り沙汰されるなかにあって、エンジンよりもトランスミッション、サスペンションのほうに興味がある筆者の中では、造る部品が表に出ないものが主力であっても、カヤバはれっきとしたアブソーバーメーカーだったのだが、当のカヤバのほうこそが「縁の下の力持ち」「密かに社会を支えている」認識だったようだ。
そこで「OFF WE GO!」だ。
なんと、アブソーバーとはまるで無縁の、「『OFFROADのカヤバ』の新しいイメージを構築する!」というのだ。
といっても、ここでいう「OFFROAD」とは、あのオフロードではなく、「日常を離れた未知の世界であり、日常では得られない自由と開放感の象徴」だという。
今後、「OFF WE GO!」ブランド戦略として、第1段階として「ブランドのコアとなるファン層を確実に囲い込む」、第2段階として「アウトドアライフ層にブランド価値を浸透させる」、そして第3段階として「新しさに惹かれて興味を持つ層」を取り込んでいくという。
そしてその「OFF WE GO!」の皮切りとして、1月10日よりキャンピングカー「VILLATOR」の受注を開始した。
「従来のキャンピングカーには存在しなかった『冒険心をくすぐり、運転の楽しさが味わえるキャンピングカー』」というものだ。
ただ輸入代理して顧客に販売するというものではない。
1.運転の怖さを感じさせない安心感
2.街乗りでも快適な乗り心地
3.車両の重量バランス
を念頭に入れ、カヤバの足回り技術で思い通りに運転できる楽しさを提供するキャンピングカーだというのだ。





ベース車両は、FIAT DUCATO L3H2の右ハンドル車。全長×全幅×全高は5995×2050×2525mmという巨体の持ち主で、大型トラック運転手でもなければ初めて見たひとは戸惑うサイズだが、通常の架装業者が手がけるのとは別次元の、足回りパーツが本業であることを強みとした、仕上がりのいいキャンピングカーを提供してくれることだろう。
さて、その「VILLATOR」である。
ブースのスペース、レイアウトの都合上、車両全容がわかる写真を撮ることはできなかったが、まずは2m超の全高に巨体に驚愕する。



中を覗き込むと、サイドのスライドドア入口は、開口部とラップさせながら流し台が設置してある。

その反対側とキャビン後部はクッションを敷き詰めたベンチ型ソファ(?)になっていて、ルーフサイドはもの入れになっているし、天井にはちゃんと空調装置が内蔵されていて、その仕上りは既存のキャンピングカーに引けを取らない。
内部の造りつけはカヤバが専門業者に依頼して造ってもらったものだそうな。
ひとだかりで実車確認はできなかった、この「VILLATOR」専用に造られたというショックアブソーバーは別に展示されていた。



2mを超える全高なんて、見るからに横風やコーナーリングに弱そうな印象を抱く。こんな形の「VILLATOR」だから、もともとFIATのほうでもしかるべきサス設定はしてあるだろうが、ショックアブソーバー専門メーカーが長きに渡って蓄積してきたノウハウを持つカヤバならではの設計が、この「VILLATOR」の走りにどのような好影響を与えるのか、ぜひノーマル車と比較しながら走らせてみたいものだ。
価格はいまのところ1950万円で、価格応談&オプション有無で変わってくるという。
「OFF WE GO!」プロジェクト。これまでとはまったく異なる事業への参入は、創立90年を節目の挑戦にふさわしい。カヤバのイメージはぐんと変わることだろう。